アイルランドの美しい景色を背景に、絶交したとは言えそこには深い事情があり(アイルランドの内戦に関係したスパイか?)、結局男同士の友情もの(好物)だろうと期待して行った。
するってーと、風景は美しくセーターやカーディガンや、やっぱりいいなぁというのは期待どおりだったが、アイルランドの内戦はほとんど関係のなしのリアリティからは遠い、「人間というのはよぉ!」という寓話であり、しかもブラックな笑いどころがいくつかあり、けっこう面白くはあるが後味はよろしくないという作品だった。
いちばん可笑しかったのは、コルム(ブレンダン・グリーンソン)がまた指を切らないように飼い犬がハサミを咥えて出ていくところだ。
そして二番目は、「ロバが指食って死ぬわきゃねーだろ(^Q^)」と笑うところだろうが、私は完全にはギアチェンジ出来てなかったのでそうは思えず、「もしかしてコルムが指に毒を塗ったのか?」と見当違いの思いがうっすら浮かび、パードリック(コリン・ファレル)が自分のベッドカバーにくるんで埋めるとき、「ああ、やっぱり手仕事のあるベッドカバーいいなあ。パッチワーク?キルティング?もうちょい、アップで(願)」などと思うのであった。
それにしても、妹シボーン(ケリー・コンドン)が島を出て行った後、パードリックが家畜を家に入れて糞の始末は誰がするのだろう?キリスト教圏では人は人、動物は動物で分け隔てをするそうだが、パードリックはまるで聖フランチェスコのようではあるまいか。ドミニク(バリー・キオガン)もそのやさしさゆえ、彼に親しみを感じていたのだ。そのセイントのような人が、友人から突然絶交を言い渡されるという理不尽なあつかいにより堕ちていくのは悲しいことではある。そして、いったん痛む(腐る)と回復が難しい。
また、コルムの方もパードリックを下に見ていたから理不尽な絶交を言い渡したわけだが、家に火をつけられるまでの反撃に遭ってようやく対等な目線になるとは醜悪なことである。
さらにシボーンは、退屈で悪意のある人ばかりの島が嫌で本島へ出ていったが、そこまで嫌うかい?いいとこ、いっぱいあるじゃん。景色はいいし、2時から酒が飲めるし、本を読む時間はいっぱいあるし、おもろい神父さんもいるじゃん(^Q^)。
面白かったけれど、還暦過ぎると人間の醜さばかりの映画など「なんだかな~」なのだ。
ロバもドミニクも殺してはならなかったのだ。
(2023/01/31 TOHOシネマズ高知2)