ヒラリー(オリヴィア・コールマン)が、1回目に強制入院させられときはどんなだったのかわからないが、2回目の強制入院はあまりにも理不尽だと思った。『炎のランナー』のプレミアで突然舞台に上がって、従業員仲間をハラハラさせ観客をシラケと困惑に陥れただけでお迎えとは。ヒラリーは女性であるが故にどんどん自由を狭められ痛めつけられたという点で、山岸凉子さんの漫画「天人唐草」を彷彿させる人だ。極小の箱に押し込められたヒラリーのヒラリーらしさが弾けるときを、夜空に広がる花火や鳩が飛ぶ大きな窓ガラスからのながめなどで美しく描いたり、多数派とは少しずれている個性をドレスのファスナーが上げ切れてない悲しさで描いたり。プレミアは一番キメキメで行きたいところだったのに。
果たして、エンパイア・オブ・ライト(光の帝国=映画館)はヒラリーを救えるか。映画ファンとしては、サム・メンデス監督とともに「救える」と言いたいところ。従業員仲間は皆、いい人だし。従業員だと意外と観る暇はないかもしれないけれど(?)。
スティーブン(マイケル・ウォード)は、黒人であるが故に不自由な思いもあるが前途洋々。この頃、黒人だけでなく移民が排斥されていたことを『マイ・ビューティフル・ランドレット』などとともに思い出した。
残念ながらピーター・セラーズの『チャンス』は未見。
ベストワン候補。
(2023/02/28 TOHOシネマズ高知9)