とても楽しかった。江戸時代と現代の各パートを楽しめる1本で二度おいしい映画だ。俳優は各人が江戸と現代の二役なので、役者合わせなど細かいところを含めると幾重にも楽しい。また、楽しい中にも善を目指す方向性があり、これぞ全き娯楽作と思う。
地元の脚本家加藤(橋爪功)が語る大河ドラマの脚本案の部分は、伊能忠敬の死後、遺志を汲んで日本地図を完成させようとする地図隊員の後世の人のためにも正確な地図をという志や、その労をねぎらうモノのわかった殿様が描かれ、歴史に大きな名を残さなかった言わば市井の人の働きが顕彰されている。
地元の偉人伊能忠敬を大河ドラマの主役に推すべく、まずは脚本を依頼した市役所の職員池本(中井貴一)の部分は、結局、加藤の脚本案では伊能忠敬が主役ではないので、自ら脚本を書こうと加藤に弟子入りし一から学ぼうとするところで終わる。五十の手習いと言ってもよく、伊能忠敬が隠居の年で地図づくりを始めたこととも相通じる。やろうと思ったときが始めどき。清々しい幕切れだった。
帰り道で思い出したのだが、この作品は時代劇を担えるスタッフや俳優が段々少なくなっていることに危機感を覚えた貴一くんの企画だった。えらいなぁ、貴一くん。もちろん現代劇も時代劇も演じ分けお見事。さらにお見事だったのは、松山ケンイチ。現代劇のツッコミと時代劇のボケ。こんなにコメディができる人だったとは嬉しい驚き。私の中で株が上がった。北川景子の美しさと時代劇の粋な台詞回しと身のこなしもまあまあよくて、ずっと見ていたかった。
(2022/06/22 TOHOシネマズ高知5)