ほっぺのホクロでベン・アフレックと気づくまで随分かかった。めっちゃヒゲが似合う。ケネス・ブラナーとともにヒゲがあった方が良い男優に分類した。もともと好きな俳優だったが、女好きアホアホ領主を演じて私の中のアフレック株が上がった。もともと利口そうなマット・デイモンも、実直ではあるが自分しか見えてない器の小さい騎士を演じて役者やのう。二人とも脚本にも加わっているそうで、自分たちの身を削って(あるいは楽しく?)フェミニストぶりを発揮していてイイ感じ。
リドリー・スコット監督らしい映像の見せ場を感じなかったのはナゼだろう?決闘場面は見事だと思うけれど、私は中世に偏見があるのだろう、野蛮でむさ苦しく見えてしまう。全体的にシルバーグレイが印象に残るヒンヤリめの映像だが、ラストシーン(ジョディ・カマー演じる母と幼子)は温かい。初期の作品で面白かった『デュエリスト』は時代がもっと下っていたせいか美しかった印象がある。今作のディレクターズカット版は、更に1時間長いという話を聞いたのでキレイめの映像はそちらでということかな。
お話は第一章(ド・カルージュ(マット・デイモン)主観)、第二章(ル・グリ(アダム・ドライバー)主観)の解が第三章(ド・カルージュの妻(ジョディ・カマー)主観)だと思う。解がわかっていたから、第一章で妻からレイプされたと打ち明けられたときのド・カルージュの怒り様はそんなもんじゃないだろうと思っていたし、第二章でド・カルージュの妻がル・グリ誘うように靴を脱ぎ捨てて行ったのも「あんたの勘違い」とツッコミを入れていた。
ル・グリは勤勉で恩人にも義を尽くしていた。アホな領主様のご機嫌もよく伺っていた。しかし、女性に対してはご機嫌を伺う必要性を感じてないので、よく見ないし聴きもしない。誠に残念なことだ。現代もこのような男性は多い。男性のみならず、人はご機嫌を伺う必要性を感じていない相手に対しては自分の意のままに振る舞い、相手が被害を訴えてもなお見もせず聴きもしないため加害を自覚しようがない。当人がご機嫌を伺う必要性を感じている相手(尊重している相手)に言われるまではダメみたいだ。犯罪でも交通事故でもイジメでもネットの誹謗中傷でも同じだ。
それで、中世では神がその尊重している相手に当たる!!!!というところが、一番面白かった。しかも、決闘裁判ともなると生死に直結するわけで、いや~、神が死んでくれてよかった。もし、ル・グリが勝っていたら彼にとっては「神はいた」かもしれないが、ド・カルージュの妻にとっては「神は何処に???」ではないか。
もっとも受けたのは、フランス国王と王妃。とてもお似合いで微笑ましい(^_^)。しかし、決闘を見るに堪えない王妃と、王妃を気遣うこともなく嬉々として稚気が逸る王は今もいそうなカップルだ。
(2021/10/16 TOHOシネマズ高知8)