運び屋

「じじいの言うことを聴け」
そういう映画だと思った。じじいがそう言っているのではない。こちらがそう感じるのだ。後悔先に立たずの人生。反省している先輩の失敗談には耳を傾けよう。元気溌剌の人の言うことより、ヨボヨボの人の言うことに耳を傾けたくなるものだ。
また、イーストウッドは幸せ者だとも思った。80歳を超えて監督も俳優もできる。もし、会えたら、近年、実話ベースものの監督作が続いているのはなぜか尋ねてみたい。
(2019/03/09 TOHOシネマズ高知9)

グリーンブック

バディもので旅もので音楽もの。悪かろうはずがにゃい!(^o^)

この映画のハイライトシーン、黒人の集うバーにトニー(ヴィゴ・モーテンセン)とシャーリー教授(マハーシャラ・アリ)が入って行き、シャーリーがクラシックを弾く!皆、感動する!シャーリーとバンドがセッションする!(ToT)この流れ。
音楽は、まずトニーの垣根を取っ払ったのだったが、シャーリーを異邦人のように見ていた黒人たち(畑で農作業している彼らがシャーリーを見つめるシーンが印象的)の垣根もシャーリー自身の垣根も吹っ飛ばしたのだった。
音楽って素晴らしい!

ハイライトシーンまではシャーリー教授の孤独が身に詰まされるようだった。ユーモラスな場面に助けられはしたけれど、トニーがイタリア系仲間に仕事を持ちかけられて、用心棒を辞めるんじゃないかと心配するところや、プライベート中のプライベートな逢瀬をあんな形で知られてしまうところなど、こちらの身が凍るような思いがした。いずれもトニーの応じ方で本当に救われた。(シャーリーが留学先のロシア語だけでなくイタリア語までわかるのは、音楽を勉強したからかな?楽譜の記号はイタリア語っぽいものね。)

シャーリーは彼なりに闘っていた。あくまでも非暴力で、バンド仲間と同等にレストランで食事ができるように。泊まるところやトイレや楽屋など理不尽なあつかいに耐えることもまた闘いだったのだ。勝負所も自分で決めていた。バンド仲間は仲間じゃなかったが、いっしょに闘ったトニーはもう仲間じゃーん。おかげでクリスマスにも間に合ったし(^o^)。キャンセルしてよかったよ。

トニーの妻(リンダ・カーデリーニ)は天晴れ、素敵な人だ。ラブレターの指南役をお見通しだったということは、手紙を読んで何を喜んでいたのか、もう一度そのシーンを見てニヤニヤしたくなった。

(2019/03/09 TOHOシネマズ高知8)

半世界

こんな日本映画を観たかった。阪本順治監督のオリジナル脚本が素晴らしい。普遍的な人間関係(親子、夫婦、友だち)と現代日本の問題(過疎化が進む地方、いじめ、自衛隊員の自殺など)がガッチリと組み合わさっている。省略が利いたセリフに現実味があるし、エピソードも真面目でユーモラスだ。伏線の張り方もうまい。
タイトルの趣旨をダイレクトにセリフにしたシーンも見事だ。元自衛隊員で世界を見てきた瑛介(長谷川博己)が、生まれ育った町で炭焼きをしている紘(稲垣吾郎)に「お前は世界を知らない」と言う。紘は「そんな難しいこと言うなよ」「こっちだって世界なんだよ」と返すのだが、紘の二つのセリフは随分と離れていて、いくつかのエピソードが挟まれている。世界とかあまり考えずに暮らしていた紘だから「難しいこと言うなよ」になるのだろうし、「世界って何だ」という引っかかりと、炭焼きで生計を立てながら思春期の息子に接する苦労を客観的に見ることができて初めて「こっちだって世界だ」になるのだろう。二つのセリフが離れているのは必然なのだ。
別の場面でも、瑛介が炭焼きの仕事を手伝いながら「こんなこと一人でやってたのか」と言っており、瑛介だって紘の世界を知らなかったことが描かれている。このような場面とセリフの積み重ねで、世界の片隅であろうと中心であろうと一人一人が精一杯生きている、それが大切なんだというタイトルに込められた意味が浮かび上がってくる。

ここまで紘と瑛介のことしか書いていない(^_^;。正三角形のもう一辺を成す光彦(渋川清彦)のことをどうしても書かねばならないのに。う~ん、正三角関係って最強!ってことだけ書いておこう。

好きなカットも書いておこう。紘の心象風景を表したカットが2回差し挟まれる。緑の木々の中で倒木か何かに腰掛けている紘。2回目は緑の木々が釜の中の炭のように赤く染まっていく。「孤独の時間(とき)」、何とも言葉にしがたい感慨があった。

役者は皆よかったが、吾郎ちゃんだけ書こう。吾郎ちゃんが出たての頃、SMAPのメンバーとも知らず(SMAP自体を知らなかったと思う。)主演映画を観に行ったことがある。「稲垣吾郎って、とてもいい名前、どんな人だろう(男前に違いない)」と思って。SMAPのメンバーを覚えてからは、吾郎ちゃんの地に足がついてない感が好きだった。デレク・ジャーマン作品がいいとか話していたなぁ。地に足がついた役が、なかなか嵌まっていてよかった、よかった。

見終わって、母が「よかったで。」と言うので、どこがよかったか尋ねると「ぜんぶ!」とのことだった。
(2019/02/17 TOHOシネマズ高知8)

女王陛下のお気に入り

ははははは(^_^;。
すごかった、とにかく、すごかった(^_^;。
女王陛下も貴族も没落して平民並みの者も身分を問わず、女性は皆、満身創痍のサバイバー。

広角レンズと行き届いた照明で、たっぷり調度類を魅せてくれた。藤の花がきれい~。
この時代の貴族は、いっつも醜悪に描かれるのぅ。日本では綺麗に綺麗に描かれるが、この違いは何だろう?
(2019/02/16 TOHOシネマズ高知8)