ジョジョ・ラビット

『ジョジョ・ラビット』のパンフレットの画像
メルヘンチックな快作。感動した。
色彩設計や、ビートルズからデヴィッド・ボウイまでの音楽もよかったし(ボウイもジョジョやエルサみたいに踊っていた)、リルケのシメ「総てを経験せよ、絶望が最後ではないのだから」もよかった。『サウンド・オブ・ミュージック』でのシメは、尼僧長が歌う「すべての山へ登れ」だった。ジョジョ(両親はいないしベルリンの壁が出来るわけだから)もトラップ大佐一家もまだまだ苦難はあるだろうけど、どちらも前向きになれるシメだ。(リルケと言えば、『天使にラブソングを2』でも引用されていた。「君が作家になれるかって?そんなこと聴くなよ。君が書かずにいられず書き続けたなら、既に作家だ。」)

ドイツ映画だと思って観始めたものだから、ドイツもヒトラーをこんな風に表現できるようになったのかと驚いた。『ヒトラー 最期の12日間』はともかく、『帰ってきたヒトラー』といいドイツはヒトラーのトラウマから解放されたと思った。でも、スカーレット・ヨハンソンやサム・ロックウェルを見かけたら、それはもうアメリカ映画(笑)。ようやくドイツ語じゃないわけだと納得した。鑑賞後わかったのは、制作(資本)はドイツとアメリカで、監督はニュージーランド出身とのこと。ジョジョ役のローマン・グリフィン・デイヴィスはロンドン生まれ、エルサ役のトーマシン・マッケンジーはニュージーランド出身、私の頭は化石。

社会的な影響は、子どもにとって絶大なはずの親の影響を凌駕する。(母はジョジョをヒトラー礼賛するような子に育てた覚えはないぞ。)
社会的な影響も個人が体得したものには勝てない。(まさか自分ジョジョが、ユダヤ人エルサに恋をするとは。)
個を磨き世界平和を実現するには本当に色んなものに触れることが大切なんだなぁ。(それでリルケか。)
音楽のことを知りたくてパンフを買って満足。(売り場に並んでいた人全員が、ジョジョのパンフ買いだった!)
ヨーキー(アーチー・イェーツ)、かっわいい(^o^)。
(2020/01/19 TOHOシネマズ高知1)

スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け

ジョン・ウイリアムズの音楽が本当に素晴らしい。オープニングの音楽で早わくわくする。単純な人間は幸せだ。
オリジナル三部作でも二作目(エピソード5)が一番面白かったが、最終三部作でも二作目が面白かった。でも、どちらの三部作も納得の最終作で満足満足。レイ(デイジー・リドリー)が何者かっていうのもわかるし、レイにしてもカイロ・レン(アダム・ドライバー)にしても血統なんて無問題(もーまんたい)というのも、しごく真っ当で健全だ。亡くなったキャリー・フィッシャーも違和感なく存在しているし、若き日のルークとレイアが登場したのにもときめいた。
ラストシーンは、みんな勢揃いで楽しく終わるのかと思ったら、意外にしっとりとしていた。正しく「スカイウォーカーの夜明け」で、ああこれで親子三代に渡る物語がおわり、また新たな世代の物語に移っていくのだという(他のシリーズでは感じることのできない)感慨が湧いた。
(2020/01/08 TOHOシネマズ4)

ブラック・クランズマン

スパイク・リー監督の代表作である『ドゥ・ザ・ライト・シング』をはじめ、見てない作品が多数あるので、よくわからないのだが、こんなこなれた作品を作る人でしたっけ?映像で綴るアメリカ黒人史、「ちょちょいのちょい」みたいな。
クランズマンってどういう意味と思いながら足を運んだら、タイトル「BlacKkKlansman」で「そういうことか」と思わせられ、コメディだったのので「マジで実話?」と眉につばをつけた。事実は映画よりも喜劇(?)。白人至上主義者が政治家になっていることも描かれていて、それは現在も事実かもと見ていてわかるようになっている。

『風と共に去りぬ』の時代は転換期。当然の主張であっても物言う者は懲らしめられる理不尽な時代へ。学者面した差別主義者(アレック・ボールドウィン)がドキュメント映像をバックにベラベラしゃべるし(うんざり)。公民権を得た後、黒人が大活躍の映画が量産(?)され、主人公(ジョン・デヴィッド・ワシントン)と恋人(ローラ・ハリアー)が映画を話題にしていた。考えてみれば、タランティーノ監督がパム・グリアを主演に『ジャッキー・ブラウン』を撮ってなかったら、70年代の黒人主役映画のことを全く知らなかったかもしれない。そして、主人公の代わりにKKKに潜入したフィリップ刑事(アダム・ドライヴァー)が、『國民の創生』を見るシーン。これも町山智浩さんが『國民の創生』(1915)でKKKが復活したと話してなかったら、作り手がこのシーンを入れた意味がわからなかったかもしれない。極めつけがヴァージニア州シャーロッツビルの白人至上主義集会に反対して集まった人たちを車ではねていった映像。ここはスパイク・リーのパンチが、ガツンとみぞおちに入った。トランプ大統領のみぞおちに決まればいいのに。
(2019/08/24 あたご劇場)