マンチェスター・バイ・ザ・シー

酔って絡んで暴力を振るうなんて、ろくでなし。
モテモテなのにその気なし。
いったい何があったのかと思ったら、う~ん、それは辛い。海辺の美しい町。良い思い出だってあるはずなのに戻れない。
だけど皆、辛いことを乗り越えて幸せになっているよ。元妻も今、幸せだから「許す」「ごめんなさい」と言えるのだろう。
わかっちゃいるけど、情けなや。やっぱり、酔っては殴り合う。ろくでなしに変わりなし。乗り越られない自覚あり。
それでも生きていいのだ、生きて行くのだ。底なしにダメでも弱くても。

本当にもう、自分を許してあげてほしい。
兄ちゃんも息子より弟の方が心配なんじゃないかな。
甥にボストンの大学へは行かないとあっさり言われたのが可笑しかったが、甥が来るかもしれないからと思えたことが救いだった。子どものことは、いつかはポケットの中の小石になってくれると思いたい。

淀川さんが映画で娼婦が悪く描かれることはないと言っていたのを思い出す。貧しい人、傷ついている人、あるいはダメダメな人、懸命に生きている人の側に立つ作品こそが胸を打つ。久々に行間の美しさを感じた。ユーモアもあるし!

監督、脚本:ケネス・ロナーガン
2017/09/13 あたご劇場

ダンケルク

負けが込んで撤退するイギリス軍兵士を迎えに行くだけの話に面白さがあるのだろうかとあまり期待していなかったけれど、意外に面白かった。冒頭、つかの間の「ゆるり」感を破った銃撃音に縮みあがり、慌ててティッシュをまるめて耳の穴に突っ込んだ。その後の音は何とか絶えられるくらいにはなったけれど、振動がすさまじく「ノーラン、ここまでしなくても・・・・」と独り語ち、絶体絶命場面が散りばめられているので、兵士といっしょにアップアップしたり息を詰めたりの大忙し。浜辺での一週間、民間船での一日、戦闘機での一時間を上映時間106分に程よく収めた時間のジグソーパズルも映画的で面白く、滑空するスピットファイアの美しさったらなかった。

民間船での遣り取りがドラマとして最も見応えがあった。マーク・ライランスさんの腹芸とキリアン・マーフィーの二役並の変貌ぶり。

2017/09/10 TOHOシネマズ高知6

メッセージ

とうちゃこ~。おもしろかった!
ナイト・シャマラン復活!・・・・と一瞬思った(笑)。
宇宙人の墨字、イイね!(^o^)すごくイイ人たちで驚いた。お節介?お人好し?地球人に何か恩義でもあるのだろうか?欲はなく、足るを知り、悟りを開いた人たちなんだろうか?これってこの映画の最重要事項だと思うけれど。ともあれ、私にとってはあの風貌で本当によかった。蜘蛛とかに似ていたら正気ではいられない。
ひるがえって地球人のなさけなさ(ToT)。色々あるけど、娯楽映画ながら本当に嫌になったのは、ラジオだかテレビだかのマイクを前にした男性が危機感を煽っていたこと。それほどのことはないのに危機感を煽ると本当に危機的状況に陥りかねないから、『オデッセイ』の宇宙飛行士(マット・デイモン)くらいの平静さと賢さを保ってほしい。お願いします!>マスメディア人さま

「得体が知れない」「わからない」→不安にさせられる。→不確かな情報で不安が大きくなる。→煽られてさらに大きくなる。→恐怖を感じて防衛本能から攻撃的になってしまう。
不安を取り除くためにはわかることが必要だし、わかるためには言葉が必要。言葉は道具なので、使いようによっては毒にも薬にもなる。「武器」と言ってもいろんな意味があるし。よくわからないときは、善意に解釈することが大事。とまあ、そういうあたりまえの(楽天的な)話だった。その割に、ささやくように話して、しっとりぼわ~んぼわ~んなタイムパラドックスものというのがまた旨旨(笑)。クイズもあるし。中国の偉い人が、ルイーズの一言で攻撃宣言を撤回した。ヒントは、偉い人の妻の遺言と一致するとのこと。すっごいロマンチックに「早まらないで」ということにしておこうっと。

ルイーズ(エイミー・アダムス)とイアン(ジェレミー・レナー)は、使命感よりは不安が大きく、その不安よりも(学者ゆえ)好奇心やら探求心の方が勝る風に描かれていたのがよかった。
(2017/05/21 TOHOシネマズ高知3)

聖の青春

よかった。「聖だけの青春」だと思う。対戦場面は緊張感があるけれど、その他の場面は何やらほっこりとさせられた。
村山聖(松山ケンイチ)の人となりがイイのだと思う。野生というより自然な、子どもがそのまま大きくなった感じの人だ。他人を傷つけることなく自分の気持ちに正直に生きる。今この荒んだ世の中に暮らしていると、死を意識せざるを得ない差し迫った状況下でとことん将棋に打ち込んだ人が見せてくれる自然体は、イイもの見せてもらったなぁと思えた。
また、周りの大人が皆よかった。寛容。両親(北見敏之、竹下景子)も森師匠(リリー・フランキー)、橘先生(安田顕)、樋口(筒井道隆)たちも、荒崎(柄本時生)さんでさえ(笑)。
更に聖とライバル羽生善治(東出昌大)の化学反応もよし!『ラッシュ プライドと友情』もそうだったが、全く異なる二人が競技を介して結ばれている感じ。対戦シーン(猫と羽生の涙)、居酒屋のシーン(笑)、素晴らしかった。
個人的にツボだったのは、弟弟子(染谷将太)が対戦で鼻血を出すところ。その昔『王手』で加藤雅也演じる棋士が、やはり対戦で鼻血を出していたのだ。将棋って頭が沸騰するんだなぁ。
(2017/03/18 あたご劇場)