ゴーン・ガール

はははは。結婚って、底なし沼なのか(笑)。
親の借金のため娘は自分の財産を差し出す。親の介護のため息子は故郷にUターン。両者とも相談なしに一人で決めて、パートナーには事後報告。そして、失業。金の切れ目が縁の切れ目的浮気。浮気発覚で懲罰的復讐と、これは「結婚」についての映画だと思う。ニック(ベン・アフレック)とエイミー(ロザムンド・パイク)の二人を見ていると、人生の荒波に手に手を取って立ち向かう理想の夫婦像からは遠い。
婚前契約って再々でてくるけど、二人はどんな契約をしていたの?

それにしてもニック・ダンは、ベン・アフレックのためにあるような役。バカな男に違和感なし(^o^)。アゴを隠すって当て書きでしょう(決めつけ)。
音楽がとてもよい。
ボニー刑事(キム・ディケンズ)、めっちゃカッコいい!
ニックの妹マーゴ(キャリー・クーン)は健気。双子の兄妹で何でも打ち明けられる関係だったのだけれど、父の家をニックが「茶色の家」と呼んでいたいきさつは知らなかった。ニックは妻だけに話していたのだ。その他、子どもをほしがっていたのはニックの方で・・・とか夫婦にしかわからないことがあるのよね~。あたりまえだけど、やっぱり妻と妹はまったく異なる関係性なのだ。
エイミーは、なぜ、デジー(ニール・パトリック・ハリス)と結婚しなかったのかなぁ。追いかけられると逃げたくなるってこと?
ニックの弁護士(タイラー・ペリー)の手法からすると、真実はどうであれ世間を味方につければ裁判にも勝てるということだろうか。

監督:デヴィッド・フィンチャー
(2014/12/13 TOHOシネマズ高知5)

ジゴロ・イン・ニューヨーク

フィオラヴァンテ(ジョン・タトゥーロ)は、ジゴロのお手本のような人だった。女性の欲求を察し、満たす優しさ。これがジゴロに不可欠なものなんだろう。顔は二の次、三の次。察しがよすぎたり、サービス過剰は疲れるけれども、フィオラヴァンテは万事、程よい加減で言うことなし。これはモテる。だけど、女性の本命にはなれない。『七年目の浮気』でも描かれていたように不器用くんの方が本命として見られているのだ。

何不自由なさそうな皮膚科医パーカー(シャロン・ストーン)と、夫に先立たれ何かと不自由そうなアヴィガル(バネッサ・パラディ)という女性の対比も面白かったけれど、ジゴロ斡旋家マレー(ウディ・アレン)の妻や厳格なユダヤ教徒たち、会話の中の○○系など、ニューヨークが人種のるつぼと言われていたことを思い出した。特に厳格なユダヤ教徒のあれこれが面白く、自警官(パトカーがそっくりで最初はニューヨーク市警かと思ったよ)やユダヤ教の罪に当たる行為かどうか審判する「審議会」は、一見の価値ありだ。

小粋な音楽が何曲もたっぷりと使われていて気軽に楽しめる反面、フィオラヴァンテとアヴィガルのシーンなど、ここぞというところは無音で観客の集中力を高める演出。アレン・アレルギーは、なぜだか発症しなかった。イジイジしてなかったからかな?

監督:ジョン・タトゥーロ
(2014/12/13 あたご劇場)

紙の月

いやいやいや~、いきなりネタバレだけど、これって好きなように生きることに軍配を上げた驚くべき作品だ。行くべきところへ行くって、そこかい!?(ツッコミ)てっきり自首か自殺だと思っていたので、映画のセオリーに革命が起こったと思った(笑)。作り笑いの生活を偽物の月(紙の月)だと言って、ひっちゃぶって好きなことをする開放感。可愛い愛人(池松壮亮)のためだったのが、いつのまにか何のためやら。終いには色仕掛けで契約を取ろうとするなんて、ぜんぜん楽しくないじゃんねぇ。タガが外れると樽でも桶でもバラバラ、元の姿に戻れないってことだろうか。だけど、それをも肯定的に描いていると思う。がちがちにタガが嵌った銀行の先輩、隅(小林聡美)が、梅澤梨花(宮沢りえ)が去ったガラス窓を見上げる。まぶしく輝く窓の向こうは梨花が高飛びした海外だ。

有能であっても支店長、次長には任命されず、長年勤めていると使いづらいってんで嫌がらせのような配置換え。融資係を希望して女を武器に次長と出来ちゃったうえに伝票操作をさせられ、バレルと弱い立場の方が辞職。子どもが欲しくても仕事好きの夫(田辺誠一)は後でってなもんで実のある会話もなし。ままならぬ人生を女性が皆、紙の月だと言うわけではないけれど、パパの財布から抜き取ったお金でした梨花の募金が生かされていたんじゃないの~~?というラストには、イエス様も「YES」と言っているんじゃないの~?しかし、梨花の表情は「やぶいてもやぶいても紙の月」なのであった。

監督:吉田大八
(2014/11/30 TOHOシネマズ高知2)

リスボンに誘われて

しみじみとした余韻のある(しかも前向きな)作品だった。
偶然手にした本に日頃自分が思っていることがそっくり書かれていたら、いったいどんな人が書いたのか知りたくなる。ライムント・グレゴリウス(ジェレミー・アイアンズ)は、著作者アマデウ・デ・プラド(ジャック・ヒューストン)に会いに行く。故人とわかってからは、いろんな人に聴いて回るんだけど、それが凄い豪華キャスト。妹(シャーロット・ランプリング)、親友(アウグスト・ディール/ブルーノ・ガンツ)、レジスタンス仲間(トム・コートネイ)、恋人(メラニー・ロラン/レナ・オリン)。

アマデウの半生が解き明かされるというミステリー映画なんだけど、その過程で三角関係の恋愛映画になったり、レジスタンスのサスペンス映画になったり(ふむふむ、歴史~みたいなところもあり)1本で3本分くらいの面白さがある。しかもリスボンの路面電車は高知を走っているあの電車だから、電車と絵になる町並みを見ているだけでも面白い。それに、しがない中年男ライムントのくすんだ人生が、アマデウの人生を辿ることで輝いてくるので青春映画の変化球でもあると思う。
残念なのは、右脳人間のお茶屋はアマデウの著した本を読まれても(日本語の字幕でも)ちんぷんかんぷんだったことだ。だから、本作の半分も理解できてないだろうな~。そんな私にアマデウの本の一節を

<若い時は皆、不死であるかのように生きる/死の自覚は紙のリボンのように我々の周りを付かず離れず踊るだけだ/それが変わるのは人生のどの時点でだろう?/そのリボンが我々の首を締め始めるのはいつだろう?>

と書いてくれてある次のページは、とても勉強になった!

リスボンに誘われて|観ているうちが花なのよやめたらそれまでよ

監督:ビレ・アウグスト
(2014/11/24 あたご劇場)