天使の分け前

面白かった。さすが、ケン・ローチ。立ち位置がブレない。
樽の中のウィスキーは、毎年2%ずつ蒸発するのだとか。幻のウィスキーを競り落とした金額が115万ポンドというとおよそ1億8千万円。ロビー(ポール・ブラニガン)たちが知恵を絞って汗かいて、樽から抜き取った一瓶を10万ポンドで売って4人で分けると400万円くらい。落札金額の2%くらいか。よくできてるな~(笑)。1億8千万円は汗水たらして稼げるお金じゃないからね。労働者の稼ぎから蒸発していったものをお金持ちが蒸留しとるんじゃろ(笑)。お金持ちと貧乏人がいたら、貧乏人の側に立つのがケン・ローチなのだ。落札したお金持ちが鼻の利かない人で本当によかった。食品偽装でお腹立ちの人は、お金持ちに同情するかな?
最近、どっかの国会議員がマスコミを批判して、「マスコミは中立でなければならない、二項対立があるとしたら両論併記するべき」みたいなことを言っていたけれど、権力者と市民が対立しているとき中立でいては権力者の味方をしていると同じだと思う。マスコミも色々、立ち位置も色々。ケン・ローチくらい立ち位置をハッキリしてくれるとありがたいなぁ(笑)。
それにしても、この映画を観ていると、日常ってこんなにもサスペンスフルなんだと驚かずにいられない。ロビーたちの一挙手一投足にハラハラした。保護司(?)のハリー(ジョン・ヘンショウ)にロビーからの贈り物が届いてめでたし、めでたし。こんな甘い話はそうそうないけど、結婚とベイビー誕生のご祝儀として私もありがたく分け前をちょうだいした。

THE ANGELS’ SHARE
監督:ケン・ローチ
(シネマ・サンライズ 2013/11/15 高知県立美術館ホール)

高知県立美術館ホール前はこんな感じ。草間彌生の「永遠の永遠の永遠」展を開催中だった。

清須会議

NHKの大河ドラマを見たことがないせいか日本史音痴だから、知らないことばかりで面白かった。また、羽柴秀吉役の大泉洋のよさが初めてわかり面白さ倍増だった。今後、秀吉役は全て大泉洋にやってもらいたい。←ちょっと嘘。
丹羽長秀(小日向文世)、柴田勝家(役所広司)、池田恒興(佐藤浩市)のキャラクターも立っており言うことなし。お市(鈴木京香)、松姫(剛力彩芽)の戦国時代に生きる女性の怨念・執念もよかった。キャラクターで魅せる作品だと思う。
『のぼうの城』とこの映画で、戦国時代は主君に対する家臣の忠義なんてものはほとんどなく、封建制度も整っておらず、だからこそ話し合い(実力)で跡目や開戦が決まるとわかった。
残念なのは映像。予告編のときから思っていたが変な緑色だ。

監督:三谷幸喜
(2013/11/10 TOHOシネマズ高知7)

アシュラ

公開当時(2000年。制作は1993年)と違ってDVDでは『地獄曼荼羅 アシュラ』というタイトルになっていた。収録されている予告編がとても面白い。曰く、

「かつて彼女は妻であり母であり女であった。」「女の耐える力は最強。2000年、女はもう我慢しない。」「インド各地で上映禁止!失神者続出!暴動寸前!最強の女のリベンジ・ムービー、登場。」

そして、最後に沢田亜矢子が登場して、

「映画史上最も過激な映画です。闘う女の皆さんに。ぜひ、ご覧ください。」

というようなことを言っていた。
いや~、本編より予告編に興奮した(笑)。予告編なら、これくらいはやってくれないと。それにあながち嘘ではない。むしろ内容を正しく宣伝しているとさえ言える。

シヴァーニー(マードゥリー・ディークシト)は虐げられた女性代表みたいな感じで復讐の鬼となる。女囚を政治家にあてがう収容所長(女性)を手始めに、姉を虐待していた義兄を殺し、ヴィジャイ(シャー・ルク・カーン)のアリバイを偽証し、シヴァーニーを手込めにしようとした刑事を殺し、ついに彼女の不幸の最大の原因であるストーカー野郎ヴィジャイを殺そうとするが・・・・、そうは簡単にはいかないのがインド映画だ。この経過には唸った。
ミュージカル・シーンとか登場人物が類型化されすぎている点などいささか古い感じはいなめないけれど(シャールクもヘタな演技をしていた)、シヴァーニーの美しさと話の濃ゆさでグイグイ見られる。
ヴィジャイは登場したとき、本当に嫌なヤツでシャールクをもってしても好きになれないと思ったけれど、いやいやいや~、スチュワーデスであるシヴァーニーを追いかけて乗客となり、彼女との遣り取りを見ているうちに恋するヴィジャイって可愛いと思えてきて、恋の歌を歌う頃には可愛くて堪らん状態になってしまった。本当に危ないサイコパスなのに魅力的で困った。
それにしても、恋の歌のシーンでは走っている車の屋根に立って踊って、ボンネット、窓と移動して車の中にすべり込むなんて、世界広しと言えどもこれができるのはジャッキー・チェンとシャールクだけではないだろうか。

ANJAAM
監督:ラーフル・ラワイル
(2013/11/05 DVD)

ラ・ワン

バトル・ゲームの悪役キャラクターのラ・ワン(アルジュン・ラムパール)がリアル世界へと抜け出して、対戦していた少年プラティク(アルマーン・ヴェルマー)を探し出し、決死の勝負をつけようとする。
う~ん、ゲームからラ・ワンが抜け出すより、テレビから貞子が抜け出した方が怖い(^_^;。要するに、この映画は子ども向けで、大人にはちょっと物足りない。でも、お子様ランチのおまけにガメラ、若しくは、興福寺の阿修羅のフィギアが付いていたら・・・・、それはもう、大人でも(一部の大人に限られるとは思うが)楽しめてしまうのだ。
そんなわけで、ゲームの開発技術者でプラティクの父でもあるシェカルと、善玉キャラクターのG・ワンの二役を演じたシャー・ルク・カーンに大いに楽しませてもらった。特に二つのミュージカル・シーンは、シェカルでの「クリミナル」も、G・ワンでの「チャマック・チェロ」もキャッチーな音楽と愉快な振付の踊りに笑いを誘われた。
また、シェカル亡き後登場したG・ワンは、プラティクとその母ソニア(カリーナ・カプール)と暮らすようになるのだが、ソニアが、シェカルそっくりなG・ワンを見ていて亡き夫を思い出すシーンがとても面白い。「スタンド・バイ・ミー」をアレンジした「ディルダラ」という歌をBGMに、在りし日のシェカルのエピソードが笑える形で綴られている。ソニアとG・ワンの遣り取りなんかもかなり笑えた。歌もいいのでyoutubeで繰り返し見てしまった。
なお、「ディルダラ」のカリーナ・カプールを見たら、「インドの小林幸子やー」と言いたくなる。

RA.ONE
監督:アヌバウ・シンハー
(2013/10/19 DVD)