地獄でなぜ悪い

面白かった!ありえない話にぐいぐい引っ張られる(笑)。しずえ(友近)~~(^Q^)。

武藤(國村隼)に敵対する組のボス、池上(堤真一)のセリフに「リアルには勝てない。ファンタジーで行くしかない。」とあったとおり、ファンタジーに徹してくれたおかげで血糊も殺戮も正視できた。「リアルには勝てない。」というのは園監督自身の思いなんだろう。だから、これまでの作品も過剰に演出が施され(ファンタジー化されて)いたのだろう。生涯の1本が撮れたら死んでもイイ平田(長谷川博己)と、平田にその気にさせられアクション俳優を夢見ていた佐々木(坂口拓)のケンカのシーンなど、演劇のようなセリフの掛け合いが見事にはまっている。

また、誰もが言うことかもしれないけれど、エロ可愛いS女ミツコ(二階堂ふみえ)にメロメロの橋本(星野源)と、映画制作の狂気に取り憑かれた平田は、二人とも園監督の分身だろう。橋本が死んでも平田が生きているのは、死んでもいい女性には巡り会えたが、映画作家としてはまだまだ死ねないということだろうか。武藤と平田が面と向かってお互い譲らないシーンなど、プロデューサーと監督のせめぎあいが偲ばれて(?)面白かった。

作家には狂気が必要だと思うけれど、映画監督は興行収入を気にしなければならない運命にあるので狂いきれない面がある。平田のような映画監督がうじゃうじゃいたら、日本映画もなんぼか面白くなるだろうに。
それより、金は出しても口は出さないプロデューサーの出現を映画の神様に祈った方がよいだろうか。う~ん、それ以上に後で『仁義なき戦い』とかに巡りあって、「あー、『地獄でなぜ悪い』は、この映画から来てたのかー(^o^)!」と気づく映画ファンが育つことを祈った方がいいかもしれない。(シネコンやTUTAYAにお客さんが集中するようでは映画ファンが育っているとは言えないと思う。)フィルムでの制作・上映に対するレクイエムとも言える『地獄でなぜ悪い』を観て、思いはそんなところへも飛んでいった。

監督:園子温
(2013/10/26 TOHOシネマズ高知2)

グランド・イリュージョン

豪華キャストなのに生かし切れてないような気がする。よいと思ったのは、ダニエル役のジェシー・アイゼンバーグだけだった。
なんたらホースメンの四人組、ダニエル、マッキーニ(ウディ・ハレルソン)、ヘンリー(アイラ・フィッシャー)、ジャック(デイヴ・フランコ)のイリュージョンの種明かしをサディアス・ブラッドリー(モーガン・フリーマン)がするのだが、「やっぱりね」若しくは「ありえな~い」という感じだったし。
今の映画だと現実のマジックではできないこともできてしまうので、それをマジックだと言われると面白さ半減だぞと思いながら臨んだら、案の定、CGだかSFXだかを使っている風なマジックショーになっていたし。

う~ん、『レッド・ライト』は傑作だったなぁ(^_^;。『幻影師アイゼンハイム』もよかった。そして、マジック映画というと思い出すのが『マジック・ボーイ』。水槽からの脱出シーンの美しさ。ラストに靴からこぼれる花。映画史に残らない作品は一期一会だなぁ。

FBIディラン(マーク・ラファロ)/国際警察(メラニー・ロラン)

NOW YOU SEE ME
監督:ルイ・ルテリエ
(2013/10/26 TOHOシネマズ高知1)

潔く柔く

映像がイイ!コントラストを抑え気味のフラットな色調で、映像がまさに潔く柔い。23歳の瀬戸カンナ(長澤まさみ)が、15歳をすごした団地の階段に腰を下ろし物思う場面では、秋めいた光景が背後にうっすらと見え、彼女のシルエットが金色に縁取られて季節感が出ていた。夜のガソリンスタンドの遠景とか、雨あがりの谷川から見上げる雲の切れ間とか、その他いろいろ気を遣って丁寧に作られた作品だと思う。
亡くなった人への(謝罪しようのない)罪悪感を抱えて生きる辛さと、それを乗り越えたときの清々しさと、恋愛ものの滑稽味とがうまくブレンドされて、とても好きな作品だ。お目当ての高良健吾は、出番は限られているけど、やっぱり良かったし(^_^)、演技派として一目置いている岡田将生も良かった。岡田将生は美少年系の薄い皮膚と赤い唇で損しているよね~。

赤沢禄(岡田将生)/春田(高良健吾)/柿之内の姉ちゃん(池脇千鶴)

監督:新城毅彦
(2013/10/26 TOHOシネマズ高知9)

人類資金

金はこう使え!マネーを生きたお金にする話。しかも、それが先の戦争で亡くなった人たちの思いとつながっている。

音楽、カッコイイ。
荒くて詰めの甘い筋書きに説明的なセリフという脚本上の欠点を補ってあまりあるスケール感と志の高さと押し切りパワーに拍手。
真舟が謎の人物に招待されて昭和の匂いのするビルを訪れると、何ものかに襲われる。導かれるままにビルの地下に逃げ、地下道をたどると地下鉄につながっていて・・・・という冒頭の大冒険にワクワクした。ビルの床、地下道、地下鉄とうまくつなげたな~。
ロシア、なんとか共和国(架空?)、国連と世界を股にかけたロケーション。あの錆の出た大きな船、いいねぇ。

真舟(佐藤浩市)・・・M資金にこだわる動機が甘い。オーバーアクト。
M(香取慎吾)・・・こんだけイイ人になった理由が甘い。滑舌がーーー(^_^;。
セキ・ユーキッド(森山未來)・・・国連の本会議場で、すごーい。
高遠(観月ありさ)・・・あの回し蹴りは、ありさちゃん本人?カッコイイ。西島秀俊(『丘を越えて』)と森山未來(『フィッシュ・ストーリー』)と三人で『マワシゲリ兄弟』という映画はいかがでしょう。ありさちゃんは訳あって男装しているのです。
笹倉(仲代達矢)・・・Mの祖父かと思っていたら父ちゃんだった(^_^;。
遠藤(ユ・ジテ)・・・どこかで見た人。
マーカス(ヴィンセント・ギャロ)・・・マーカスがギャロとわかった瞬間(笑)。
金・・・労働の対価。所得税から公共の福祉に?
マネー・・・投機で得る差益。内部留保で死に金に?

監督:坂本順治
(2013/10/23 TOHOシネマズ高知5)