もの凄いパワーのある作品だった。非正規労働、知的障害、性的少数者、借金地獄、圧政集中地域、母子家庭と様々な現代日本の問題が描かれており、ガツンと重いものが残る。あまり愉快でないシーンがいくつかあるうえ、犯人の歪んだ心と足りない考えに嫌~な感じがした。「怒り」はものごとを変える原動力になり得るのに、感情にまかせた結果があれだ。怒りの矛先を間違えないためには考えることが必要なのだ。犯人の八つ当たりっぷりには怒りを感じた。あそこまでの自暴自棄に陥るまでに何か歯止めが必要だと思う。
ただ犯人も含め皆、悩みや鬱屈を抱えて懸命に生きており、作品全体としては何かしら美しいものを見たという印象が残る。後味の重さを払拭するようなよいシーンがたくさんあったのだ。また、不信を乗り越えた人同士の結びつきは、一筋の光明でもあった。
私たちはもっと怒ってもいいのではないか?もっと叫んでもいいのではないか?踏みつけられたら踏みつけ返したり、また別の人を踏みつけるより、愛子(宮崎あおい)みたいに泣き、泉(広瀬すず)みたいに叫べ。
見たばかりのときは、問題丸投げ的な作品に思えて、もう少し解決策のようなものを示してくれたらよかったのにと思ったけれど、今思うのは、芸術は爆発だが生きるってことも爆発だってこと。(生きることが爆発だから、芸術は爆発なのかな。)
(2016/09/17 TOHOシネマズ高知8)