2011年マイ・ベストテン

昨年は、かるかん率100%!観た映画すべての感想を書いた。「好き」を基準に選んだベストテンは観た順に下のとおりで、日本映画が1本もない!主に日本映画を掛けてくれる、とさりゅう・ピクチャーズの上映会が日曜になって見逃しが増えたのも痛かったけれど、全体的になんか弱い。弱いぞ、日本映画。園子温監督作品は面白いけど好きじゃないし。『八日目の蝉』『連合艦隊司令長官 山本五十六』の成島出監督は、『孤高のメス』『油断大敵』のときから手堅い演出で、とても真面目に作っているので好感が持てるけれど、何か物足りない。そんなわけで二重丸の(面白いし好きな)日本映画は『毎日かあさん』と『海炭市叙景』だけだった。『海炭市叙景』は、好きとは言えないかもしれないけれど、日本の冬の時代にフォーカスして、これほど寒さ厳しい作品はないと思うと、どうしても捨てておけない気がした。

その他、主要人物が亡くなったにもかかわらずハッピーエンディングと思える作品が印象に残った。『メアリー&マックス』、『100歳の少年と12通の手紙』、『ヤコブへの手紙』、『木漏れ日の家で』、『海洋天堂』。これらはすべてオフシアター上映だ。

『ヤコブへの手紙』は、それほど好きだったかしらという気がしないでもないが、フィンランドのやさしい緑や小さな草花が光の中でとても美しく、そういうのを思い出すとやっぱり好きだと思った。

ベストテンなんだけど、割とざっとした感想・・・・へリンク;;;;。
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メアリー&マックス
100歳の少年と12通の手紙
イップ・マン 葉問
ミッション:8ミニッツ
ヤコブへの手紙

ジェリーフィッシュ

90年代のCDを引っ張り出して帰宅途上のマイカーで聞いている。ジェリーフィッシュはkanagon師匠に連れられて大阪のライブにも行った。ピンクレディの曲を演奏したりして大受けだった。(解散後、メンバーの一人エリック・ドーヴァーが、ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュその他とバンドを組んでやってきた。このときもkanagon師匠とスラッシュ命の友だちと大阪に駆けつけた。)ジェリーフィッシュの心臓部、アンディ・スターマーとロジャー・マニングは、いまごろどこでどうしているのやら。2枚のアルバムは名曲ぞろい。ビートルズかクィーンか(笑)。こぶしの利いたヴォーカルもいいし、「言葉って、過ぎてしまったり足りなかったり」なんていう歌詞を若くして書けるなんてと当時感心した覚えがある。今、聞いているのはアルバムじゃなくてデモ版。これでデモ?というくらい出来上がっちゃっている。デモ版数曲のうち(どれもポップでいい曲なんだけど)、名曲と思うのが「ニューミステイク」と「ザ・マン・アイ・ユース・トゥ・ビー」だ。特に後者は好きなので検索してみた。お茶屋の妄想訳とともにお楽しみください。

Jellyfish – The Man I Used To Be.wmv(youtube)

覚えているかい、お前のパパだよ
水兵帽に汚れた爪
暖炉のうえの写真でしか知らないかもしれないが
果敢に戦うことを選んだ男さ
やがて間違いとわかるのだけれど

戦いに明け暮れ
おまえを見守る影となった
パパは今でも愛しているよ
そうとも

お前が瞬く間に大きくなって
パパそっくりになってしまうとは
それがこれほどつらいとは
思ってもみなかった
だけど、お前だったら気づくはず
家族が海で遭難したとき、
いくつ勲章があったって、何の役に立つだろう

お前に手を伸ばし
触れそうになったどの瞬間も
ほんとうに大事にしているよ
それなのに少しずつ消えてゆき
なくなるのは確実だ

戦いに明け暮れ
君を見守る影となった
パパは今も君を愛している
そうだ、そうだとも

I hope you remember me, I was your daddy once,
Wearing a sailor cap and dirty nails
To you I’m just a picture on your mother’s mantlepiece
who chose to fight the good fight in time to fail

into battle
and in your shadow
your daddy loves you still
yes i do

I never thought it’d be so hard to see you grow so fast
and turn into the man I used to be
but I hope you have more sense than I in matters such as these
medals don’t mean shit when a family is lost at sea

I save every moment I’ve reached out and almost touched you
but they all fade away must be a bad memory

ラビット・ホール

悲しみ方は人それぞれ、何によって慰められるかも人それぞれ。
けれど、愛する人を失ったつらさと、それでも前を向かなくちゃならないのは皆同じ。そこには時間が平等に働いて、悲しみをポケットの小石に変えてくれるという。

夫婦仲にしても、加害少年に対する夫婦の気持ちとしても、こうあってほしいと願ったとおりになって、美しさが沁みてくる。
キャストがいいし(理想の夫!少年の驚くべき深い瞳!)、脚本も構成といいセリフといい完璧だ。脚本については、犬だけを取りだしてみても凄い。ファーストシーンで空っぽの犬小屋がチラリと映される。その後、ベッカ(ニコール・キッドマン)が実家に帰ったとき犬に吠えられる。餌を与えに来たオーギーが「預かっているんだけど、バカ犬でスミマセン」と言うと、ベッカが「うちが預けた犬で、スミマセン」(笑)。こうして笑いを取ったかと思えば、夫婦げんかの場面で、ハウイー(アーロン・エッカート)は、子どもが亡くなった遠因が犬にあると思ったから預けたのだと訴える。ケンカの末、犬を取り戻してきたハウイーは散歩に出て、犬を叱り飛ばしたことをきっかけに(自分でもそれほど怒るつもりはなかったのだろう。また、ベッカとの間が思いどおりにいかないことや、亡くした息子のことなどが頭を離れないのだろう)、犬を抱きしめて泣き崩れる(涙)。

原作は舞台劇だというが、それがまったく想像すらできないくらい映画的美しさに満ちた作品で、どの場面も印象に残る。プロローグのためらいなく引かれる一本の線から始まり、クライマックスの無音スローモーション(ジェイソンとベッカ)を経て、夫婦二人だけの哀しくも穏やかな黄昏時まで。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督。今度は名前を覚えておきたい。

ナット(ダイアン・ウィースト)/イジー(タミー・ブランチャード)/ジェイソン(マイルズ・テラー)

RABBIT HOLE
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
(シネマ・サンライズ 2012/04/20 高知県立美術館ホール)