パレスチナ人ダリア(マルト・ケラー)とヴェトナム帰還兵マイケル(ブルース・ダーン)が、スーパーボウル観戦に集まった8万人の頭上からダーツ爆弾を発射するのを、イスラエル諜報部カバコフ(ロバート・ショウ)が阻止できるかどうかというお話。三者それぞれの思いが暗く、誰をも悪役とはしておらず、音楽でアクションシーンを盛り上げようともしないし、えらく渋い。それだけに「妙に尾を引く娯楽作」となっている。
同じ回の上映を観たヤマちゃん、ガビーさんと遭遇し、お昼ご飯を食べながら「ダリアが裸じゃなかったら撃っちょったかもしれん。あまりに無防備で手が出せんかったんやろう。」とか、日本では1977年の公開予定が中止された件について「どっかの大使館からクレームがついたらしい。イスラエルかパレスチナか?退役軍人からもクレームがつきそうやねぇ。」などと話が聞けたのが楽しかった。
BLACK SUNDAY 監督:ジョン・フランケンハイマー
(2011/07/09 TOHOシネマズ高知2)
ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実
優れたドキュメンタリーだと思った。
構成がとても良い。基本的に両論併記としており、例えば、脱走兵を非難する中尉の発言のすぐ後に、ある脱走兵の収監覚悟のうえの公聴会場面があったり、戦闘機乗りが爆弾を落とすときの心境を語ったすぐ後に、落とされる側の人々の様子が映し出される。決して、二元論に終わらず、アメリカとヴェトナム双方の庶民から権力者まで様々な立場の人に取材し、ヴェトナム戦争を多角的にとらえている。また、随所に内容に関連した既存の(映画か国威発揚フィルムかの)映像を差し挟むことによって、しゃれっ気を出しながら幾分のメディア批判も行っているように感じた。
そして、映画の始めと終わりに共産主義に対する考え方を配置している。始めは、アメリカがヴェトナムに介入したのは、(他にも理由はあるけれど)ヴェトナムを共産圏にしないためというもの。おしまいは、ヴェトナムで思想犯として弾圧されている共産主義者の主張。これを観ると共産主義者への偏見が薄れたりする人もあるんじゃないだろうか。
偏見をなくするという意味では、私もこの映画の恩恵に浴した。戦死した息子を持つ両親が「息子の死は無駄ではない」と言ってヴェトナム戦争を正当化していたことを無理もないと思えるようになった。映画は今まで見えてなかった人、見ようとしていなかった人を見せてくれる。
考えさせられたことがたくさんあったが、「ウィキリークスは必要だ」というのも、その一つだ。
国防省で働いていたエルズバーグ(ロバート・ケネディ暗殺の話のとき、涙で言葉に詰まった人)が、歴代の大統領が皆嘘をついていたと言うのを聞いてそう思った。後でパンフレットを読んだら(映画の中でも注釈されていたと思うけど)、この人自身がヴェトナム戦争早期終結のため、「ペンタゴン・ペーパーズ」をリークしたとのことだ。
市民が政府にスパイ(潜入捜査官)を送る映画『インファナル・アフェア~リークス~』が出来たら面白いと思う。
HEARTS AND MINDS 監督:ピーター・デイビス
(2011年ピースウェイブ実行委員会、第28回高知平和映画祭実行委員会、四国文映社 2011/07/08 自由民権記念館)
ウィンター・ソルジャー ベトナム帰還兵の告白
帰還兵が10人くらいずつ数組に分かれて公聴会を行っていた。公聴前の楽屋(?)では、みんな、あまり詳しいことは語らない。何度も話したいような内容ではないから、本番で詳しく話そうということだろう。かといって、本番で意気込んで語るわけではなく、皆、わりあい淡々と語っている。体験をある程度対象化しないことには、話せないのだろう。そのへんは、元日本人兵が体験を語ったドキュメンタリー『日本鬼子(リーベンクイズ)』との共通点だ。
帰還兵たちの話(モノクローム)の合間に、話の内容をフォローするような形でヴェトナムでの実写(カラー)が差し挟まれている。また、公聴会後の帰還兵へのインタビューと聴衆の一人との人種差別についてのやりとり、特定の帰還兵に絞ったインタビューもあり、ワシントンDCでの反戦集会をしめくくりとしていた。帰還兵の話を中心とした単純な構成のドキュメンタリーで、それだけ話の内容にインパクトがあったということだろう。食材が新鮮だと茹でただけで美味しいみたいな(?)。
胸が悪くなるような話にもあまり驚きはしなかった(ちと居眠りしたところもあったし)。これまで観てきた映画やニュース(報道)のおかげかな。
WINTER SOLDIER
(2011年ピースウェイブ実行委員会、第28回高知平和映画祭実行委員会、四国文映社 2011/07/08 自由民権記念館)
SUPER8/スーパーエイト
列車事故スペクタクル、仲間、初恋、父子、成長物語、蜘蛛形異星人出没ホラー、未知との遭遇、映画作り、マイ・シャローナと、1979年を背景に盛りだくさんで面白かった。
「手を合わせて見つめるだけで、愛し合える話も出来る」じゃないけれど、ジョー(ジョエル・コートニー)と異星人との交流には思わず落涙。ジョーと親友チャールズ(ライリー・グリフィス)、好きな子アリス(エル・ファニング)、父ジャック(カイル・チャンドラー)とのそれぞれの関係性が定番ではあるけれど、うまく描かれていたので感動できたんだと思う。
8ミリカメラで映画作りを楽しんでいた少年たち(この映画の作り手?)も、今は40歳前後かな?色んな映画を彷彿させられる作品だから、作り手はきっと映画小僧なんだろうなぁ。
そうそう、エル・ファニングが輝いていた。楽しみな俳優が増えた。
SUPER8 監督:J・J・エイブラムス
(2011/07/09 TOHOシネマズ高知6)