アニエス・バルダにまるで関心がなくて期待してなかったけれど、観てよかった。
バルダ自身の半生が、透明水彩絵の具でもって軽快にスケッチされていた。
誕生から80年、出会いと別れがあり、仕事と仲間と家族があった。仕事が仕事だけに、フランスのスタアを始めデ・ニーロなんかも登場したりするのが楽しかった(ハリソン・フォードには驚いた!)。また、ヒッピー、ラブ&ピース、ウーマンリブ時代の一時期、アメリカに住んでいたこともあって、その頃の時代色がこの作品の中でも特異な雰囲気で(といっても違和感なく溶け込んでいるのが不思議で)面白かった。そして、ジャック・ドゥミと子供たちへの思いは、うるるんと来た。愛を描く、描いたら愛になった、どちらにしても普遍性を持つ作品となっていると思った。
思い出の品であるいくつもの鏡に映る波と、それを含む風景。繊細なオーバーラップ。町中に砂場を作り浜辺の再現をしたかと思えば、同じ砂場が裸足で仕事ができるオフィスになったり、うん十年前の自作の登場人物やその家族に再会して話を聴くにしても只のインタビューではなく、いっしょに創造する楽しさにあふれていたり、たくさんのアイデアがさらさらと表現されていたことも記憶しておきたい。
Les Plages D’agnes 監督:アニエス・バルダ
(高知県立美術館 2011/05/15 高知県立美術館ホール)
カラヴァッジョ 天才画家の光と影
主人公が光にこだわった画家だけあって、映像もめちゃめちゃ光にこだわっていた。デル・モンテ枢機卿から与えられたアトリエや、豪華天井の宮殿の明るさやあばら屋や石牢などの暗い建築物の天から差す光、そして、カラヴァッジョの絵画そのものを照らす光。コントラストが効いていて赤色もカラヴァッジョのイメージを損なうものではない。暗いところで、よくこんなに撮影できるなぁと思った。でも、残念なことに私には猫に小判であった。ひょえ~、美しい~とは思えなかったんだもの(涙)。
それよりカラヴァッジョの絵を次々と連想ゲームのようにつなげていったタイトルバックに興奮した。美しくスピーディなつなぎが小気味よく、もう4、5回は続けて観たい。
この映画を観ていると、皆、才能があるからというだけでカラヴァッジョを救おうとしたのではないと思う。彼にはそれなりに可愛いところがあるのだ。たとえば、子どもの頃、もらった剣を後生大切に持っているなんて、あげた者からしたら嬉しいぞ。だから、主役の俳優(アレッシオ・ボーニ)がもっと魅力的だとよかったのに。
こう書いてくるとつまらなそうに思われるかもしれない。そういうわけではなく、面白かったんだけどなぁ。
Caravaggio 監督:アンジェロ・ロンゴーニ
(高知県立美術館 2011/05/15 高知県立美術館ホール)
岳-ガク-
三歩を旬くんが???と思っていたけど、予告編で行けるかもと確信のようなものを得て、観てみたら行けた。
お話のご都合主義もディテールの嘘臭さも演出のいまいち加減も、ハートがあれば帳消し。それどころか差し引きプラス。「生きている限り生き抜く」というハートが伝わってきて感動した。それもこれも旬くんのおかげだ。
島崎三歩(小栗旬)
椎名久美(長澤まさみ)
監督:片山修
(2011/05/08 TOHOシネマズ高知7)
トゥルー・グリット
わはははは!笑った~!
美しいシーン。涙が出た~。
思いもよらぬ筋書きがいい。
魅力的で可笑しい登場人物がいい。
音楽、泣かせる。
映画している。
『ミラーズ・クロッシング』のコーエン兄弟が帰ってきたという感じだ。
[追記]
『ミラーズ・クロッシング』で森の中を帽子が風に舞っていくシーン。あのワンシーンがあるだけで「よかった~」と思い出すことしばしばだった(特に『ファーゴ』以降)。今後、コーエン兄弟と言えば、コグバーン(ジェフ・ブリッジス)がマティ(ヘイリー・スタインフェルド)を抱えて馬を駆るシーンを思い出すだろうなぁ。
背景に輝く星。コグバーンの真面目な顔。熱で紅潮したマティ。汗だらけの馬。長い距離。これだけでも美しく泣かせるのに、音楽(うるる~)。映画という夢の中で、またもう一つの夢を見ているようだった。
時を経て、マティがウエスタンショーへ赴いたが一足遅く、コグバーンは亡くなったと聞いて、そばにいたショーのおじさんに「ぼけなす!」と八つ当たりしたのには目が点になった(笑)。おいそれとは泣かん子や!そう思いながらも、身寄りのないコグバーンが会いたいと言っていたのに(マティも会いたかったのに)会えずじまいだったことや、老いては保安官をリタイアし身すぎ世過ぎのためにショーに出てたんだろうなとか、時の流れと人の思いが心にしみてきて何とも味わい深かった。
ラビーフ(マット・デイモン)
チェイニー(ジョシュ・ブローリン)
ラッキー・ネッド・ペッパー(バリー・ペッパー)
TRUE GRIT 監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
(2011/05/07 TOHOシネマズ高知1)