アルゼンチンからポーランドへ、頑固じいさん(ミゲル・アンヘル・ソラ)の深い傷を癒やす旅。
抜け目のない孫に始まり、闇(?)航空券手配師、飛行機の隣席という縁の兄ちゃん、スペインの宿屋の女将、刺青の末娘、ヘブライ語ができるドイツ人女性とエピソードの数々が現実のようであり夢のようであり、寓話的な印象の作品だった。
最も印象深いエピソードは、もちろんドイツ人女性とのものだ。乗換駅のホームでアブラハムじいさんが「聞いた話じゃない。この目で見た。」と言うたびに私は気圧された。あのドイツ人女性、よく耐えたなあ。戦後生まれの彼女が戦前戦中のことに責任を負えるはずもないのに、歴史に学び過ちを繰り返さないという意識だけでは到底できないことを成し遂げた。傷を負った人に対する言動と傾聴(あれ以外できなかったろうとは思うが)はパーフェクトだと思った。ホロコーストを生き延びたアブラハムじいさんが、決して踏むまいと思っていた恨み積年のドイツの地を踏みしめるのを見ながら、被爆者や慰安婦などを思い浮かべていた。
末娘の刺青がわからなかったので、この映画を薦めてくださった方にお聞きすると下記のURLを教えてくださった。
世界の映画祭で観客賞8冠の心温まるポーランドのロードムービー映画『家へ帰ろう』監督インタビュー
(2019/03/21 あたご劇場)