生誕100年 石元泰博写真展


面白かった。
東寺の曼荼羅の写真だけが大きくカラーで、他は皆小さめ。小さめだと写真集とイメージが違わないからいいかもしれない。それに美術館としては比較的管理がしやすいかも。
雑誌の表紙や食品を写した仕事や、面白がって撮ったり作ったりした動画、著名人のポートレート、ニュー・バウハウスのこと、カメラの機材や妻の滋さんのこと。あまり疲れなかったのでよい展覧会だと思う。

石元作品は、雑踏の中で撮っても音がない。だからなのか、元々音がなさそうな桂離宮などよりもシカゴや東京の人や街の方が私には面白く感じられる。動くものの一瞬を切り取った感じの作品が面白い。その前後の動きが想像できるからだろう。それと東京など昔の風物を見るのは単純に面白い。
寄贈を受けた頃だったと思うが、落ち葉や雪の中の足跡や波などの作品「刻」の展覧会があって、私はその前後の動きを想像したのだろう、素晴らしいと思ったのだが、写真をやっている人の言うことには、あのような写真は五万とあるとのことだった。そうか、五万とあるのか、でも、初めて見たから素晴らしく見えたんだよねぇ。
今回の展覧会で「街で見たもの」として撮られているものは、もちろん石元が面白いと思って撮ったものだろう。「もの」自体としては赤瀬川源平などが発見したトマソンなどの方が愉快で面白い。ただし、石元作品には「もの」+「静寂」があって、写真の中の空気が浄化されたように見える。建築物を撮ったものもそんな感じ。カラーになると空気が見えないので、中東のタイルなんか綺麗だけど、やっぱりモノクロ作品がいいかな。(雑誌に載った食品はカラーだけど奇妙で面白かった。)

東京タワーの作り始めみたいな写真があったけれど、あれは何だろう?本物の作り始めだとすると、大きなタワーの足の部分が一枚の写真に収まっているのが不思議だ。タワーから離れて撮れば収まるだろうけど、近くから撮ったように見えた。そういう撮影方法があるのだろうか。
(2021/03/09)

第11回高知国際版画トリエンナーレ展

いや~、素晴らしい!版画って美しく象徴性に富んで隅々まで面白いなあ!
このトリエンナーレ展へ行ったのは、これで3、4回目くらいか。毎回行けばよかった。
写真OKとのことだったので、好きなのと気になったのを撮ったけど、撮り忘れがあって残念。「Friend」(作者:Watanari Magate(タイ) シルクスクリーン 63×100)という作品なんだけど、石の質感が素晴らしい。木陰にある石のようで湿気も感じる。仏教寺院の柱の礎石とたむろする鳥たちを描いたものかと思ったら、涅槃のブッダを背後から描いていて、その台座とブッダの上に鳥が留まっているのだった。鳥の大きさからするとブッダは小さいはず・・・・。

デジタルプリントがいくつもあって、私の年賀状もデジタルプリント(版画)だったのかと思った。そうすると簡単に版画が作れるじゃん。一方で、「Ground-Flock」(優秀賞)は繊細でシャープで透明感があって、いったいどういうプリンター、インク、紙の組合せであんなに美しい作品が出来上がるのか、デジタルプリントも技術の高さは相当なものだ。
(簡単に版画が作れるといえば、プリントごっこ。年賀状は日本人の多くを版画家にしていたのかもしれない。ガリ切りで作る謄写版印刷もなつかしい。その頃の印刷用紙はわら半紙。本当に藁で作った紙だったとは、今回いの町紙の博物館の常設展示で知った。以前にも見ていたはずだけど(^_^;。)

版画展のたびに技法が気になる。作品一覧のパンフレットに版画の技法をまとめてくれているのがありがたかった。それでもイマイチわからないので検索したら、よいページがあった。
動画で見る 版画のつくりかた(町田市立国際版画美術館)


その他(撮影したもの以外で)、感想をメモったものの中から。
「PARENTAL CONTROL」作者:Kacper Bozek(ポーランド) エッチング、メゾチント、ドライポイント 61×100
怖い。監視の目が性器。恐竜のような大きなもの。ペット?仲間にも監視さる。
「Aesthetics of Culture No.2」作者:Teppong Hongsrimuang(タイ)木版 100×99
スケール感。タイ、歴史、プラウド。
「CHANG’AN-XI’AN」作者:Wei Hua Zhou(中国)木口木版 51×100
すごい!中国四千年。「ナニワ金融道」の青木雄二。マイケル・ジャクソン!
「SYMMETRY」作者:Wieslaw Haradaj(ポーランド)リノカット 68×98
アダムとイブ。怖い。
「遠雷 Lotus・地・水・SORA」作者:平木美鶴(日本)木版 92×56
既存、既知。ほっとする。
「ひとり 20.1」作者:鈴木知子(日本)紙版 81.5×55
色がきれい。毛(髪の毛、睫毛)で寂しさ。温かみ。
「ガラスのカーネーション」作者:霧生まどか(日本)リトグラフ 75×60
バラに見える。
「THE ROOT IS PRECEDED」作者:Francisco Robles(メキシコ)エッチング、アクアチント、ドライポイント 83×70
メキシコ~!
「A SINGLE SWALLOW CANNOT MAKE A SUMMER」作者:Alan Altamirano(メキシコ)エッチング、アクアチント 98.5×48.5
フリーダ・カーロ!メキシコ!
「Object-Life in Capitalism」作者:Rattana Sudjarit(タイ)アクアチント 60×80
夜明け前?夜、働いてるの?
「SNOW PRINT:NO.2018.2」作者:阪本幸円(日本)デジタルプリント 60×88 
雪の感じがよく出ている。・・・デジタルプリント?
「饒舌な女主人」作者:吉村順一(日本)エッチング、ビュラン 60×90
インパクト。
(2020/12/15 いの町紙の博物館)

隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの五原則

初めて建築家の頭の中を覗いたので、いろいろ刺激があって面白かった。(建築の依頼主のインタビュー映像では、人となりの一端も窺える。)
隈さんが設計するうえで大切にしている建築概念の「孔」「粒子」「ななめ」「やわらかい」「時間」ごとに代表作品の模型が展示されていた。解説も隈さん自身がされており、建物ごとの解説はまあ何となくわかったような気がするが、建築概念は難しかった。

実際に行ったことがあるのは県内の梼原町総合庁舎(役場)と同町の雲の上のホテル・レストラン。
ホテルは夏に泊まったかな。西日が入って暑かったような。冬にも泊まったかな。廊下とか寒かったような。遠い昔のことで記憶のねつ造かもしれない。デザイン的にはシンプルとは言い難い、余計なものがある感じ。(雲の上のプールは大好きなんだけど隈さんではないみたい。)
総合庁舎の方は木が迫ってくるような重苦しさだった。屋内は木の匂いもあって若干重い感じだったと思う。建ったばかりだからかもしれない。
どちらの建物も遠くから見たら風景とマッチしてよいかもしれないが、ごちゃごちゃした感じであまりよい印象を持ってなかった。
けれど、「小松マテーレファブリックラボラトリーfa-bo」の模型を見て少し考えが変わった。
fa-boは、実物を間近で見たら太いワイヤーが並んでいて結構ごつくて、ごちゃごちゃと余計なものに感じられるかもしれないと思った。でも、耐震補強という機能を果たしながら、遠目に見れば柔らかいベールで覆われた建物に見えるのなら、それはそれでいいかもと。要するに、梼原町役場と雲の上のホテル・レストランのごちゃごちゃも装飾だけではなく何か機能性があるのなら、面白いと思えるなぁということだ。

ネコの視点で建築物・工作物をどう作るか考えるのは、隈さんの建築概念よりわかりやすかった。
隈さんの考えとは異なるかもしれないけれど、私なりに受けとめたのは(覚えている範囲で)次のとおり。
(1)電信柱でも擁壁でもその「素材」によってネコが能力を発揮できる。ツルツルしたものよりガザガザしたモノの方が、ネコの爪のとっかかりになりやすい。
(2)ネコには「隠れ場所」が必要。身を潜めてあたりをうかがうところがあれば、脅威にさらされることがなく、情報を遮断されることもない。
(3)ネコは「狭いところ」が好き。狭いところはデススペースではない。ものは考えよう。空間は生かしよう。
(4)ネコは、飛び降り、飛び跳ねる。平面上の移動だけでなく、「縦移動」も考慮すべし。
(5)時間は長いスパンで考えると経年劣化だけど、短いスパンで考えると「動線」だ。ネコの行動範囲を把握すべし。
ネコを主人公にした動画は、一つの動きにつき視点を変えて作成されていた。建築家って普段から動きを立体的に捉えているのか~と感心した。

TOYAMAキラリのVRは、ドローンで撮影されたものだろうか、カメラ移動があって楽しかった。

行ってみたいところ
シドニーのThe Exchange。富山市のTOYAMAキラリ。中国杭州の中国美術学院民芸博物館。長岡市のアオーレ長岡。熊本市の浜田醤油。梼原町は行こうと思っている。
アオーレ長岡(2012年竣工)の「中土間」は、人が集う場所としてとてもよいと思った。市役所、体育館、シアター、福祉カフェの複合施設が中土間でつながっている感じ?中土間は通り道でもあるようだ。長岡市はお金持ちだな~とも思った。中土間に佇んでみたい気がした。
浜田醤油の床は醤油色で正解だと思う。蔵の中にカフェもあるようだ。お醤油の匂いはするのかな?

アオーレ長岡-視察のご案内
浜田醤油株式会社
梼原町×隈研吾建築物
隈研吾展
隈研吾建築都市設計事務所
(2020/11/16 高知県立美術館)

竹﨑和征-雨が降って晴れた日 Takezaki Kazuyuki”A Sunny Day After Rain”

「当地の現代アーティストを県民に紹介したい!」という県美の学芸員の叫びが結実した企画のようで、栄えある第1回にふさわしく多数の県民が好きになるんじゃないだろうか。風のように軽く、水のように透きとおった感じが心地よく、お茶屋美術館に収蔵したい作品(やっぱり基準は好きなもの、自宅に合うもの)がいくつもあった。ちょっと温かみも感じるので熊谷守一の猫を土コーナーに、竹﨑さんのどぜうを水コーナーにして・・・・。無造作に見えて細かいところがキチッとしている。竹﨑さん、細かいキチッとした人やろう!?
大方が観た風景を頭で混ぜて描いた作品とのことで、緑が多いことにホッとする。風景を描いているのに砂漠色ばかりだったら悲しい。
それから、水平線ぽいものやテトラポットっぽいもの防波堤ぽいものを感じたため、海を感じた作品がいくつかあったけれど、ぜんぜん違ったみたい(^_^;。
作品「十市」はどこかで観たと思って帰宅してから、県民文化ホールの緞帳だと気がついた。無関係なのにスンマソン。
解説も一生懸命(何回も)読んだけど、ぜんぜん頭に入らず。出ようとしたところ写真撮影可に気づいて、解説を撮影し帰宅してから読めてよかった。作品数は62点。ゆっくり観て1時間くらい。ちょうどのポッチリ。この調子で2回目も楽しみ。

あつめてのこす 高知県立美術館のコレクション←観てないのに書いた感想。県美の学芸員の叫びを引用している。
(2020/11/13 高知県立美術館)