ツレがうつになりまして。

両親と一緒に観た。母は眼鏡をはずして涙をぬぐっていたし(近くに座っていた人のすすり泣きも聞こえた)、父は後で感動的なところが何カ所かあったと話していた(困難があったとき一緒に乗り越えていくのがよかったそうだ)。ひじょーに珍しいことである。私はなんだか妙な感じだ。ツレアイがいないから感慨もないのだろうか。美術や小道具、イグアナを含む脇役などいい雰囲気なのに、鬱病についてなど説明的だったし、心情をセリフにしすぎていると感じた。それでもハルさん(宮崎あおい)とツレ(堺雅人)は、持ちつ持たれつの関係がよいと思った。また、ハルさんが持つ側になって人として作家として成長したのもよかった。イグアナの皮膚が乾燥しているのが、よくわかったのもよかった。
監督:佐々部清
(2011/10/09 TOHOシネマズ5)

東京公園

例えば「宇宙人にどう東京を紹介するか」など、いかにも作られた感のするセリフがところどころあるものの、つもった落ち葉のようにふかふかで、斜めの日差しもやわらかい、憩いの映画になっていた。秋の空気のような爽やかさもあった。意外だったのは、青山作品にユーモアがあることと、「青山くん、君は映画小僧だったのかーーー!?」というくらい既存の映画がでてくること。原作があるとのことだから、もしかしたら原作者が映画小僧なのかもしれない。鑑賞後、監督のトークがあったので、そこで質問をすればよかったが引っ込み思案でいけない。
全体的にゆったりとしており、光司(三浦春馬)と親友のヒロ(染谷将太)、あるいは光司とヒロの元彼女である富永美優(榮倉奈々)のやりとりなど、そのテンポが保たれたうえで可笑しくてたまらなかった。ところが、光司が「けじめ」をつけるため、姉美咲(小西真奈美)のマンションを訪れるシーンは、とんでもなく緊迫しており、最大の山場となっていた。気の弱い私など恐怖を感じたほどで、「あー、お姉さんを裸にしてしまった(オロオロ/ドキドキ)」と心臓に悪かった。それでも二人がそれぞれの気持ちを確かめた後は、憑きものが落ちたと言ってよろしく、これで美咲姉ちゃんも次に進めるというものだ。(ちなみに、キスで決着がつくシーンのある作品『P.S.アイラヴユー』、好き~(^_^)。)
歯科医師の初島(高橋洋)も妻(井川遥)と向き合い、浮気の疑いにけりを付けて次に進んだ。相手が亡くなったことによって向き合うすべがない美優とマスター(宇梶剛士)は、自分の気持ちに折り合っていくしかないのかな(?)。
セリフがほとんどなくて楽ちんなはずの井川遥。存在感があった。特に志田杏子としてのセルフポートレイト、いいわ~。
潮風公園の海の色、大島を離れるときの夜景、紅葉、志田家の部屋、カメラを構えた光司の脇のしまり具合などもよかった。
監督:青山真治
(えいネ~:高知県映画上映団体ネットワーク 2011/10/04 高知県立美術館ホール)
『東京物語』『東京兄妹』『東京家族』東京特許許可局

風と共に去りぬ

子どもの頃テレビで見たきりだと言うと、ヤマちゃんとうめちんに「スクリーンで観るべき」と言われた。
観てビックリ。スタンダードサイズだ。テレビで見てもスケールが大きいと感じていたので、てっきりワイドスクリーンか何かだと思っていた。
南北戦争を始め次から次へと何事かしらが起こり、スカーレットとレットの丁々発止も楽しく、情熱で突っ走り、くずおれ、再び立ち上がる力強いラストシーンまで、4時間近くがあっという間。息つく間のない展開と強烈なキャラクターで魅せる最高のメロドラマだ。
古き良き南部への思い入れたっぷりなところもよかった。敗戦後、アシュレイが「誇りを除いて全て失った」と言う。北部の支配下にあって南部女性が襲われた仕返しに焼き討ちをするなんて感心はしないが、戦前、戦中、戦後と最初から最後まで南部魂が貫かれている。淑女ではないスカーレットが幻紳士アシュレイを慕い続けるのは、アシュレイが無責任に愛しているなんて言ったせいだと思うけど、「愛すべきは紳士」という刷り込みも相当なものだったと思う。
その貴族趣味の紳士淑女の中で異質なスカーレットとレットは、南部に収まりきらない人物だ。貴族趣味はローカルだけど、実利主義というのは昔からグローバルで今にも通用する。そんなグローバルなハミ出し者同士のラブシーンに「うっとり~」だった。
キャラクターについての感想。
スカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)、意地張って見栄張って強がって、めっちゃ可愛い!!!永遠の子ども。
レット・バトラー(クラーク・ゲイブル)、いいヤツだ。男の中の男!嫉妬、苦悩の姿は魅力増し(同情票)。子どもの頃は彼の魅力がわからなかった。
アシュレイ・ウィルクス(レスリー・ハワード)、ダメダメじゃん。どう考えてもダメ(はぁ)。私はスカーレットの味方だからね。少しはスカーレットのことも考えて、しっかり振ってやってほしかった。
メラニー・ハミルトン(オリヴィア・デ・ハヴィランド)、友だちになれそうにないな~。なんか窮屈。弱みはないのか、弱みは~~!
このほか家政婦マミー、娼婦ベルなど脇役もいい味を出していた。
GONE WITH THE WIND 監督:ヴィクター・フレミング
(2011/10/01 TOHOシネマズ高知8)

イリュージョニスト

湿気を帯びたイギリスの風景に詩情があふれ、汽車や船や自動車の乗り物もたくさんで旅の映画になっていたし、セリフがほとんどないので無声映画のようでもあり、風にめくれるページを影絵にしたり、弧を描いて舞い上がりながら風景を俯瞰していく動きも見事で、画力、活動写真力ともに充分魅せてくれた。
しかし、志村けんが酔っぱらいの真似をすると必ず笑えるのに、このアニメの手品師のおじさんの酔っぱらった動きも、その他の軽業師などのコミカルな動きも私にとっては笑えるどころかまどろっこしいくらいで、手品が大好きにもかかわらずアニメでやられてはちっともありがたみがなく、残念至極であった。
それでも最後は少し、しんみりとした気持ちになったので、決して悪い映画ではないと思う。
L’ILLUSIONNISTE/THE ILLUSIONIST 監督: シルヴァン・ショメ
(こうちコミュニティシネマ 2011/09/28 高知県立美術館ホール)