31年ぶりに観た。
出征前、「大事なものは全てここにある。」とニック(クリストファー・ウォーケン)は言い、負傷したスティーブン(ジョン・サヴェージ)は「帰りたい」とヴェトナムの川べりで泣く。そして、マイケル(ロバート・デ・ニーロ)は、スティーブンとニックを連れ戻す・・・・。ソ連との冷戦時代、ロシア系アメリカ人3人が出征し、ペンシルベニア、クレアトンに帰還する。ロシア系の名前でもアメリカ人。どんなに傷ついても、骸となっても、慰めてくれる人、弔ってくれる人がいるところへ帰る。それが故郷だというふうに描かれていたと思う。
そして、今回、堂々の恋愛映画だったことに気がついて焦っている。純情可憐な男たち~。そんなわけで、出征前のクレアトンでの一幕は、ちっとも長いと感じなかった。
アンジェラ(ルターニャ・アルダ)と結婚したスティーブンが、こっそりニックに打ち明ける。アンジェラとは寝てないって。それでは、彼女のお腹の子は????この時代、未婚で子どもを産むのは外聞がよろしくなかっただろうから(しかも閉鎖的な雰囲気の田舎町)、スティーブンは彼女のためを思って決意したのか。それほどまでに好きだったのね。第三幕、ニックの葬式ではアンジェラの子どもをスタンリー(ジョン・カザール)が抱いていたけど、これは深くは考えまい。
マイケルは、ニックの恋人リンダ(メリル・ストリープ)にずっと片思いで、スタンリーが紹介する女性とはその気になれず。ニックもそれはわかっていて出征前の思い出にという気でか、スティーブンの結婚披露宴で「踊れよ」とリンダを「貸す」のだ。だけど、マイケル、踊りが苦手で~~(^o^)。得意のバーで酒(の勢い)作戦。・・・が、これが裏目に出た(笑)。ニックが現れるとリンダは、彼に飛びついていく。マイケルから逃げるように。(この披露宴のシーンは、マイケルの視線の先にニックとリンダがいて、大好きな二人をいっぺんに見れてよかったねー(?)と(笑)。なんか複雑。)
そんなだから、第三幕のニックの不在中、マイケルの心中を想像すると更に複雑だ。ニックの葬式のあと、マイケルはリンダのことが心配で頻繁に視線を送っているが、なかなか視線が合わない。おしまいには視線が合って、目と目で語り合っていたので、二人は続くだろうと思う。
ヴェトナムでニックを退院させたお医者さん。その後の彼を知っているだけに「退院させるなー」と思った。明らかにおかしいでしょうに。両手を失った兵士もそばにいて、心の傷と対比させていたのも印象深い。心の傷と言えば、マイケルも無傷ではない。帰還後、スタンリーの銃を取り上げ、ロシアン・ルーレットよろしくスタンリーの額に当てて引き金を引く。引き金、引いちゃいかんでしょう。「入院させろー」とは思わなかったけど、「正気じゃない」とは思った。戦争について思ったことは、それくらいだろうか。
チミノ監督は、破綻含みの作品が多く『ディア・ハンター』も例外ではないけれど、これだけ情のある骨太作品を撮れる人はなかなかいない。俳優も素晴らしくウォーケン、デ・ニーロはもちろん、M・ストリープが神々しいばかりに美しく、ナサケナ風味な伊達男を演じたJ・カザールもよかった。
アクセル(チャック・アスペグレン)・・・立ちション中、置き去りにされる。
ジョン(ジョージ・ズンザ)・・・飲むと笑い上戸。聖歌隊。ピアノ弾き。スクランブル・エッグを作りながら泣いていた。
[追記]
やっぱり書いておこう。
帰郷後の鹿狩りでの字幕に物申す。マイケルが狙いをそらした後、鹿に向かって言う「OK」が字幕では「満足か」と訳されていた。ここは素直に「いいのか?」と訳してほしかった。去っていった鹿にもう一度「OKーーー!」と言うのは「いいだろーーー!」でいいだろーーーー!?
[追記2]
う~ん、引きずるなぁ。
最後のロシアン・ルーレットのシーンで、ニックが思い出しそうになって、マイケルは「木、木が好きだったろう」と必死で促す。ニックは思い出して「One shot?」と言って、マイケルは「(そうそう!)One shot」と喜ぶんだけど、ニックの頭の中では、そのワンショットがロシアン・ルーレットのワンショットに変換されてしまうのだ。こんなところでワンショットつながり。あああ(涙)。
幸いなことに先週『ゴッドファーザー PART2』、今週『ディア・ハンター』とデ・ニーロ続きで、うん年ぶりにデ・ニーロ・フィーバーしているものだから、『ディア・ハンター』の重さが緩和されている。いいよね~、デ・ニーロ。
THE DEER HUNTER 監督:マイケル・チミノ
(TOHOシネマズ高知3 2011/09/27)
とっておきの青春(番外)『ディア・ハンター』で書いた「マイケルが座るときすかさずパンツを敷いてやるという、古女房ニックを目撃することが出来ます。」というのは間違いだった。パンツに腰を下ろしたのはニック本人。マイケルの持ち物には上着を掛けてあげていた。
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100歳の少年と12通の手紙
スノードームが出てくる映画に駄作なし。余命幾ばくもない少年が哲学するというお話をファンタジーにして、可愛く優しくユーモアにあふれ、ふわふわと風船のように軽い。
ピザ屋のおばさんローズ(ミシェル・ラロック)の提案で、オスカー(アミール)は1日10歳年を取るという設定で神様に手紙を書く。そして、ついに神様に遭遇。「神様はあきらめずに朝を作り、夜を作り続ける。」ということを悟り、「自分たちが毎日新しい一日を過ごすということをパパとママに教えてあげて。」と書き残していく。これは生きるということの根本だと思う。人は(50年先かそれとも明日か)もれなく死ぬという事実を自覚していると、オスカーの悟りはどこの国の人でも宗教をとわず共感できるのではないだろうか。どんなに辛いことがあっても死ぬまでは一日一日を生きるしかない。自然があきらめずに朝を作り、夜を作り続けるのだもの。
病院嫌い、葬式嫌いの強がりローズは、これまで自分のことで精一杯だった。デュッセルドルフ医師(マックス・フォン・シドー)の頼みというか交渉により、行きがかり上の人助けを始めたけれど、実はギブ・アンド・テイクでオスカーにいいものをもらったような気がする。「病院はどこですか?」と尋ねられて「知らないわ。(観光案内所じゃないのよ、ったく。)」(病院目の前)と言っていたローズも、この次にはちゃんと教えてあげるでしょう!個人主義のフランスは助け合いをとても大事にするのだ。
ローズがオスカーに話して聴かせる法螺話の視覚化サイコー(^o^)。夜中に現れる幽霊や、くるみ割り人形の調べに乗ってのオスカーとその妻(^m^)の踊りなど、本当に嬉しくなる映画だった。
OSCAR ET LA DAME ROSE 監督:エリック・=エマニュエル・シュミット
(シネマ・サンライズ 2011/09/14 高知県立美術館ホール)
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スノードーム美術館
ゴッドファーザーPART2
あああ、やはり家族の映画はイイ(ToT)。もう一回観たい。
家族のために裏の仕事をしてファミリーを築いていったビトー(ロバート・デ・ニーロ)。ファミリーを維持するため家族を犠牲にしていったマイケル(アル・パチーノ)。
マイケルは時代が違うと言うけれど、父ビトーとは器も違った。マイケル、怖いよ~、冷たいよ~。でも、彼は父のようになろうと懸命だった。父の誕生日(真珠湾攻撃の日だった)のことを思い出すマイケル。帰宅した父を家族が一斉に迎えに出るが、マイケルはひとりテーブルに残っている。父のようには、なれなかった自分を思うとき、この日を思い出すのか・・・・。苦く虚しい。PART1もよかったが、PART2が更に素晴らしいと思うのは、主人公がより可哀想だからだ(涙)。そして、最も美しいデ・ニーロを拝観できる(はぁと)。(ちなみに最も美しいパチーノは『セルピコ』ですからぁ~!)
ビトー9歳(1901年)からキューバ革命後のマイケル公聴会勝利(1959年)まで、アメリカの今昔も目に美味しい。郷愁を誘うニーノ・ロータの音楽が今も聞こえる。
トム・ヘイゲン(ロバート・デュバル)
フレド(ジョン・カザール)
コニー(タリア・シャイア)
ケイ(ダイアン・キートン)
MARIO PUZO’S THE GODFATHER: PART II 監督:フランシス・フォード・コッポラ
(2011/09/19,23 TOHOシネマズ高知3)
大鹿村騒動記
愉快。こういう笑わせてくれる映画って好き~。個人的には舞台の真ん中(スクリーンの端)で女形になりきっている一平(佐藤浩市)がツボだった(^Q^)。リニア新幹線誘致や中国人研修生の登場など過疎化になやむ現代の農村がさりげなく描かれ、三百年以上の伝統がある歌舞伎のセリフ「仇も恨みもコレまで」もうまく応用されていた。役者を楽しむ映画になっていたと思うので、エンド・クレジットに魅力的な人物が再び登場するのもよかった。
善(原田芳雄)
治(岸部一徳)
貴子(大楠道代)
監督:阪本順治
(2011/09/18 TOHOシネマズ高知3)