『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は一応ロードムービーかなぁ?ロードムービーだとすると『激突』系かしらん。でも、ロードムービーと言ってまっさきに思い浮かぶのは『スケアクロウ』だなぁ、などともう一月以上も『スケアクロウ』のまわりをグルグルしていた。
初めて見たのは淀川長治さんのロードショー番組で(当地では土曜の午後に放送されていたと思う)、「最後のマッチを譲って煙草に火をつけるところから友情が始まった」というような解説をされていた。その頃『ゴッドファーザー』『セルピコ』をやっぱりテレビで見ていて男前アル・パチーノ♥ラブだったので、彼が演じるライオンが傷ついて精神錯乱に陥ってしまうのが可哀想でならなかった(ToT)。
80年代には名画座で上映されるたび見に行った。そうしているうちに、短気でけんかっ早く、疑り深くて着ぶくれのマックスが大好きになり、ラストのピッツバーグまでの往復切符を買うところでは胸がいっぱいになって、演じたジーン・ハックマンも大好きになっていた。
二人が出会ったのはカリフォルニアだったかな。マックスの目的地はピッツバーグ。そこで洗車の仕事を始めようとしていた。ライオンはデトロイトに身重の妻を残したまま蒸発していたので、数年ぶりに妻子に会いに。グーグル地図で見たら遠い~。
ライオンは子どもの性別がわからないので、ランプのおもちゃをお土産に買っている。お土産の白い箱を小脇に抱えての旅だ。白い箱と言えば、『幸福の旅路』という映画でも主人公が白い箱を抱えて旅をしていた。箱の中身はなんとミミズ!目的地でミミズを育てて農家に販売しようとしていたのだった。(ググったら主人公はベトナム帰還兵であり、生還したらミミズの養殖をしようと戦友と約束していたのだった。)こちらもテレビで見たが、よい映画だったという記憶がある。
ライオンがおそるおそる妻に電話したところ、子どもは洗礼も受けずに死んだと言われる。でも、妻の視線の先にはライオンそっくりな男の子が遊んでいる。このソックリ具合は明らかにライオンの子どもだ。作り手がパチーノ似の男の子を探してきたのだね。
こういう見た目は映画では大事だと思う。例えば『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』では、どの子が成長して誰になるか、子役と大人の俳優を結ぶことができる。「ジェニファー・コネリーがエリザベス・マクガヴァンかい!?」というツッコミは当時からあったけど。(エリザベス・マクガヴァンは「ダウントン・アビー」で見たけど、素敵になっていた!若い頃より、断然今がいいわ~。)そういうツッコミは『スタンド・バイ・ミー』でもあった。「ウィル・ウィトンが長じてリチャード・ドレイファスかい!?」・・・・でも、現在のウィル・ウィトンを検索すると、その肖像はリチャード・ドレイファスで当たらずとも遠からずといった感じだ。
『時を駆ける少女』をいっしょに見た友だちとは、「(あの子役は)見ただけで尾美くんの子どもの頃ってわかる!」と語りぐさになっているし、最近では『ダークナイト・ライジング』で「あああ!あの子はマリオン・コティヤールだったのか!(ものすごく納得)」というふうに、子役がその俳優にそっくりだとそれだけで説得力がある。
『スケアクロウ』からチト離れてしまった。話を戻すと、マックスの厚着もブーツを枕の下にして眠るのも伏線になっていて、誠にうまい。「SCARECROW」は、「カラス脅し」か「カラスおどけ」か。脅してきたマックスと、おどけてきたライオンのバディ・ムービーとして心に残るロードムービーだった。
Opening Scene – Scarecrow; by Jerry Schatzberg (1973)
youtube。最後のマッチで煙草に火をつけるまで。この緩いテンポがいい。音楽がピッタリだ。
(監督:ジェリー・シャッツバーグ/1973/パルムドール受賞)