面白かった!
メイキング部分は要らないのにと思いながら観に行った。しかし、熊ちゃんは老けても「圧」も「熱」も若いときのマンマだということと、その人でさえ新型コロナ禍における混迷は不可避であったこと(他の表現者も推して知るべし)がわかってよかった。また、オーケストラのリハーサルにも立ち会い、指揮者に修正を要請し、それが直ちに修正されていた。ダンサーも同様。プロって凄い。(それとも編集?)こうして良いものを作ろうとする人たちを見るのは良いものだ。
そして、本編は映像作品として完成度高し。ドローンの使用が一般的になって、カメラアイが舞台上を無闇に動く映像を見るのはあまり好きではなかったが、ここでは大変効果的に使われていて文句なし。引きで撮ったり寄りで撮ったり、いったい何台のカメラを使っているのか。速い動きはちゃんと引いてくれているので目が回ることもなし。
振付は、このうえなくわかりやすい。多分、振付家の意図が明確に伝わっていると思う。アドルフ(関野海斗)が誕生して「ハイル・ヒトラー」のポーズを取ったのには少し驚いた。今やナチスもヒトラーもファシズム(国家主義、全体主義)から離れて悪の象徴(絶対悪)となっており、この作品もファシズムとは関係ない。
アドルフは無邪気に触れるものを死なせたり操ったり。あるときは天使と戯れたかったのに意図せず死なせてしまい、孤独に沈んだりもする。悪いことばっかりしても可愛いので皆許してくれたけれど、オイタが過ぎたので神様(熊川哲也)が「もう、お前の時代は終わりじゃ~」と仕舞をつける話と受けとめた。
本当は初演の話を少し変えて、新型コロナに打ち勝つ人類の話にしたのだそうな。それを知ったうえで観ても「どうだっ」と言わんばかりの熊ちゃんの登場は神様にしか見えない。ローザンヌで踊ったときの動画がyoutubeにあるが、キレッキレの踊りの締めに「どうだっ」という大見得がホンマにスカッとする。インタビューなどで「どうだっ」感が出るのはあまり好きではなかったが、話を聴くと日本のバレエ界のことをよく考えたうえで動いていることがわかって感心し、公演を観るとKバレエは裏切らないなーと思い応援したくなった。
そして、やっぱりKバレエは裏切らない。ソリストはもちろん群舞の皆さんも上手。白鳥(成田紗弥)、よかったなぁ。
カルミナ・ブラーナは、切迫感のある有名なフレーズが重くて腰が引けていたが、当然ながら1時間もあの音楽が鳴っているわけではない。合唱、独唱、素晴らしい!天使の場面での子どもの合唱もよかった。
また観たいなぁ。よい作品は元気が出る。
(2021/05/29 TOHOシネマズ高知5)
【演出・振付・台本】
熊川哲也【音楽】
カール・オルフ【舞台美術・衣裳デザイン】
ジャン=マルク・ピュイッソン【出演】
アドルフ:関野海斗
太陽:髙橋裕哉
ヴィーナス:小林美奈
ダビデ:堀内將平
サタン:遅沢佑介
白鳥:成田紗弥
神父:石橋奨也 ほかK-BALLET COMPANY特別参加:熊川哲也
【指揮】
井田勝大【ソリスト歌手】
今井実希(ソプラノ)
藤木大地(カウンターテナー)
与那城敬(バリトン)【合唱】
新国立劇場合唱団【児童合唱】
NHK東京児童合唱団【管弦楽】
シアター オーケストラ トーキョー
(Kバレエ・カンパニーのwebサイトよりコピペ)