ケイト(シャーロット・ランプリング)が可哀想でならなかった。45年目の結婚記念日にジェフ(トム・コートネイ)がスピーチしたことは本心だと思う。本当にケイトと結婚してよかったと思っているだろうし、これから改めて(というのは互いに高齢の域に達しているので若い時のようにはいかないため)二人仲良く暮らして行きたいと思っているだろう。だけど、その思いはケイトには伝わらなかった。
劣等感は物事の見方感じ方を悪い方へねじ曲げてしまうので、優越感よりタチがわるいと思う。例えば、相手は本心から「睫毛が長くて素敵」と誉めたとしても、誉められた人が常々「私は天然パーマで、睫毛までカールして、本当にイヤ。ストレートヘアの人がうらやましい。」と思っていたとしたら、睫毛への賛辞は素直には受けとめられない。
ケイトがジェフのスピーチを「嘘」としか思えないのは、子どもを授からなかったことが負い目として深く心に刻まれているからだと思う。もし、二人の間に子どもがいたとしたら、「カチャと結婚するつもりだったのかぁ。そりゃそうだよね、出来ちゃったんだから。」ともっと鷹揚に構えられたのではないだろうか。
ジェフはカチャが身ごもったまま遭難したことをケイトには伝えなかった。それはジェフのケイトに対する思い遣りだと思う。「それ、愛情だから!」とケイトに言ってやりたかった。でも、ケイトの負い目は「カチャが運命の人で、夫は今もその人を想っているのだ」とバイヤスを掛けてしまう。
夫の感じ方、妻の感じ方という男女の感じ方の差異が描かれていたけれど、それよりもあの曲だ。1週間前ケイトがるんるん気分でハミングしていた曲は、45年前の結婚式のダンス曲だった。結婚記念日の祝宴で踊る二人。夫の腕を振り払った硬い表情のケイト。彼女独りの心の問題にただ涙するのみだった。
やわらかい緑色の綺麗な作品。
(2016/08/06 あたご劇場)
お茶屋さん、こんにちは。
先の拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの直リンクに拝借したので、報告とお礼に参上しました。
巷ではジェフが批判されているそうなんですが、お茶屋さんはジェフ批判よりも只管ケイト可哀想で、僕には非常に納得感がありました。「劣等感は物事の見方感じ方を悪い方へねじ曲げてしまうので、優越感よりタチがわるい」にも大いに共感を覚えまする。どうもありがとうございました。
ヤマちゃん、リンクとコメント、ありがとうございます。
ジェフ、批判されているんですか。普通に鈍感なだけかと思っていましたが・・・。検索してみます。
劣等感のタチの悪さは経験則です。自分を客観的に見ていたからエライよね(笑)。今では何に劣等感を抱いていたのかも忘れてしまいました。
忘れるっていいですよね。これが老人力か~。
緑色の綺麗な映画を見るとヤマちゃんを思い出しますよ~。