イサム・ノグチ庭園美術館


我が家の昭和一桁生まれは、2010年に二度入院したのを機に行商を引退し、主夫業に専念している。そのかたわら年に何度か日帰り旅行をして、冥土の土産の収集をしているが、イサム・ノグチ庭園美術館はツアーもないし、予約が必要で場所もわかりにくいのでいっしょに行ってきた。
観覧できるところは、小道を挟んで北と南の区画に分かれている。石垣で囲まれた北の区画にはアトリエと屋外展示作品群、同じ区画の少し奥まったところに展示蔵(と作品)があった。南の区画にはイサムが暮らした家屋と庭、数メートル離れたところから彫刻庭園への登り口があった。
庭園美術館というだけあって、北の大きな樹木(私の大好きな柳も)や庭先の竹林などとてもいい感じだ。作品だけでなく、蔵や日本家屋や内装などの全体にセンスがあり、そこにいるだけで楽しくなってくる。一番よかったのは彫刻庭園だ。急な石段を登っていくと芝に覆われた開けた場所に出る。そこには石舞台があり石舞台から向こうを見るとユーカリの巨木がそびえている。木の反対側にはこんもりと丸い丘が築かれていて、ぐるりと周りながら更に登ると視界が一気に開け町が見下ろせ五剣山も望める。日本人ならお弁当を広げ、おにぎりを頬ばりたくなる場所だ。黄緑色の丘には吾亦紅がたくさん咲いていた。頂上にはイサムの作品が鎮座していたが、他の石は自然石なんだそうな。自然に出来たと思えない穴が開いていたりしたが。表面に出ているのは三分の一で他は地面の中という長さ6、7メートルはありそうな石もここまで運んだという。石の配置と丘のこんもりぐあいとロケーション。水の通り道に敷かれた小石。広すぎず狭すぎず、居心地のいい秘密基地のような場所だった。

(2013/11/16 香川県牟礼町)

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