アーティスト

『ヒューゴの不思議な発明』はワクワクして大変面白く大好きなのに、『アーティスト』はつまらないわけではないが大した感慨もなかった。どちらも過去の映画に対して敬意と愛情があるのだろうに、『アーティスト』については私はそれが感じ取れなかったということか。
『アーティスト』は、思ったとおりの展開で話に面白みがあるわけではない。だから、モノクロ無声のシーンの情感が大切なのだが、ペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)とジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)のやりとりの良いシーンは(初共演のときと階段ですれ違うシーン以外)全部予告編で見ている。(予告編では本当に感動した。)

この映画は無声映画の様相を呈しながら、二カ所で音を付けている。初めはジョージの夢。トーキーへの変換期の俳優の不安と精神的圧迫が上手く描かれているとは思うが、私には心臓に悪い音響だった(最初のコップの音だけでなく、覚悟していたはずの羽の着地音もダメだった)。
そして、ラストシーン。ペピーとジョージの二人いっしょの出発を、映画が音を得た新たな幕開けと重ね合わせたかのようなシーンだった。だけど、映画はその後、次々と技術的な革新を経ているのだ。「今」にどうつなげるのだろう。そんなことを思いながら観ていたので、「今」につながったように思えなかった『アーティスト』は懐古趣味だと片づけてしまった。

アル・ジマー(ジョン・グッドマン)/クリフト(ジェームズ・クロムウェルン)
※午前十時の映画祭のときからの疑問が解けた。TOHOシネマズ高知はスタンダードに対応したスクリーンがない。

THE ARTIST
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
(2012/04/10 TOHOシネマズ高知5)

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