面白かった!領民にのぼう様と呼ばれて親しまれている成田長親(野村萬斎)が魅力的だった。秀吉と北条の戦に巻き込まれず、これまでどおりの暮らしを続けられたらいいのに。麦踏み音頭にあわせて楽しく農作業できるなんてサイコーなのに。そういう思いに共感したし、石田三成(上地雄輔)の使者が人をバカにしきって言ったことには、のぼうと同じように腹が立った。それでも、戦となると家臣や領民の犠牲はさけられないので、酒巻靭負(成宮寛貴)、柴崎和泉守(山口智充)、正木丹波守利英(佐藤浩市)の各武将の同意を得て戦うことにしたときは、それでいいのか!?とツッコミを入れたのだが、領民を前に「みんなぁ、ごぉめぇんんん」と泣いたときには許していた(笑)。
水攻めで苦戦し、籠城する人々の士気も下がりに下り、のぼうが「悪人になりまする」と言って奸計をめぐらせたときは、人を騙すようなことはしない正直な人だからこそ、そう言うのだと思った。敵とはいえ謀をするのは、のぼうにとっては「悪人」なのだ。
そうすると、甲斐姫(榮倉奈々)が窮地に陥ったとき、のぼうがうまく事にしまいをつけられたのは、それこそ正直に双方に当たって誠意を尽くした結果なのではと思えてくる。野村萬斎の表情は、けっして純粋無垢なだけではないのだが(なんか目の裏側で考えてるでしょーというような表情)、それでも私は自分の気持ちに正直に生きてきた人だと思いたい。
戦が終わって、甲斐姫が政略結婚というか略奪結婚というか、本人の意志に反する結婚と承知のうえで承諾したのぼう。甲斐姫のことをどう思っていたかはわからないが、本人の意に染まぬという点では思うところがあったのではないか。
映画のラストは、水攻めのための堤や正木丹波守が僧侶に転身した寺などの史跡が写される。私はこれまで、史跡の説明の立て札や碑文など読む気も起こらなかったが、これからは読むぞと思いながら観ていた。
監督:犬童一心
(2012/11/11 TOHOシネマズ高知6)