天使の分け前

面白かった。さすが、ケン・ローチ。立ち位置がブレない。
樽の中のウィスキーは、毎年2%ずつ蒸発するのだとか。幻のウィスキーを競り落とした金額が115万ポンドというとおよそ1億8千万円。ロビー(ポール・ブラニガン)たちが知恵を絞って汗かいて、樽から抜き取った一瓶を10万ポンドで売って4人で分けると400万円くらい。落札金額の2%くらいか。よくできてるな~(笑)。1億8千万円は汗水たらして稼げるお金じゃないからね。労働者の稼ぎから蒸発していったものをお金持ちが蒸留しとるんじゃろ(笑)。お金持ちと貧乏人がいたら、貧乏人の側に立つのがケン・ローチなのだ。落札したお金持ちが鼻の利かない人で本当によかった。食品偽装でお腹立ちの人は、お金持ちに同情するかな?
最近、どっかの国会議員がマスコミを批判して、「マスコミは中立でなければならない、二項対立があるとしたら両論併記するべき」みたいなことを言っていたけれど、権力者と市民が対立しているとき中立でいては権力者の味方をしていると同じだと思う。マスコミも色々、立ち位置も色々。ケン・ローチくらい立ち位置をハッキリしてくれるとありがたいなぁ(笑)。
それにしても、この映画を観ていると、日常ってこんなにもサスペンスフルなんだと驚かずにいられない。ロビーたちの一挙手一投足にハラハラした。保護司(?)のハリー(ジョン・ヘンショウ)にロビーからの贈り物が届いてめでたし、めでたし。こんな甘い話はそうそうないけど、結婚とベイビー誕生のご祝儀として私もありがたく分け前をちょうだいした。

THE ANGELS’ SHARE
監督:ケン・ローチ
(シネマ・サンライズ 2013/11/15 高知県立美術館ホール)

高知県立美術館ホール前はこんな感じ。草間彌生の「永遠の永遠の永遠」展を開催中だった。

イサム・ノグチ庭園美術館


我が家の昭和一桁生まれは、2010年に二度入院したのを機に行商を引退し、主夫業に専念している。そのかたわら年に何度か日帰り旅行をして、冥土の土産の収集をしているが、イサム・ノグチ庭園美術館はツアーもないし、予約が必要で場所もわかりにくいのでいっしょに行ってきた。
観覧できるところは、小道を挟んで北と南の区画に分かれている。石垣で囲まれた北の区画にはアトリエと屋外展示作品群、同じ区画の少し奥まったところに展示蔵(と作品)があった。南の区画にはイサムが暮らした家屋と庭、数メートル離れたところから彫刻庭園への登り口があった。
庭園美術館というだけあって、北の大きな樹木(私の大好きな柳も)や庭先の竹林などとてもいい感じだ。作品だけでなく、蔵や日本家屋や内装などの全体にセンスがあり、そこにいるだけで楽しくなってくる。一番よかったのは彫刻庭園だ。急な石段を登っていくと芝に覆われた開けた場所に出る。そこには石舞台があり石舞台から向こうを見るとユーカリの巨木がそびえている。木の反対側にはこんもりと丸い丘が築かれていて、ぐるりと周りながら更に登ると視界が一気に開け町が見下ろせ五剣山も望める。日本人ならお弁当を広げ、おにぎりを頬ばりたくなる場所だ。黄緑色の丘には吾亦紅がたくさん咲いていた。頂上にはイサムの作品が鎮座していたが、他の石は自然石なんだそうな。自然に出来たと思えない穴が開いていたりしたが。表面に出ているのは三分の一で他は地面の中という長さ6、7メートルはありそうな石もここまで運んだという。石の配置と丘のこんもりぐあいとロケーション。水の通り道に敷かれた小石。広すぎず狭すぎず、居心地のいい秘密基地のような場所だった。

(2013/11/16 香川県牟礼町)

清須会議

NHKの大河ドラマを見たことがないせいか日本史音痴だから、知らないことばかりで面白かった。また、羽柴秀吉役の大泉洋のよさが初めてわかり面白さ倍増だった。今後、秀吉役は全て大泉洋にやってもらいたい。←ちょっと嘘。
丹羽長秀(小日向文世)、柴田勝家(役所広司)、池田恒興(佐藤浩市)のキャラクターも立っており言うことなし。お市(鈴木京香)、松姫(剛力彩芽)の戦国時代に生きる女性の怨念・執念もよかった。キャラクターで魅せる作品だと思う。
『のぼうの城』とこの映画で、戦国時代は主君に対する家臣の忠義なんてものはほとんどなく、封建制度も整っておらず、だからこそ話し合い(実力)で跡目や開戦が決まるとわかった。
残念なのは映像。予告編のときから思っていたが変な緑色だ。

監督:三谷幸喜
(2013/11/10 TOHOシネマズ高知7)