プライベート・ユートピア ここだけの場所

ブリティッシュ・カウンシル・コレクションによる英国美術の現在

いやいやいや~(^_^;、面白すぎる;;;。
1時間もあれば、ひょいひょいと見て回れるだろうと思っていたら、映像作品が思ったより多くて椅子を構えてくれているほど。映画を観に行きたかったので1時間半で切り上げたんだけど、あと30分くらいほしかった。
うえの写真で同じ物体が2枚あるのは、「なんじゃこりゃ~」度が最も高かったためだ。肌色のストッキングに詰め物をしているコヤツが生々しくて強烈だった。この一角はサラ・ルーカスの作品。攻撃的であまり好きじゃないけれども。
ピーター・ドイグという人のエッチングは欲しいな~。一つ一つ全部好きだった。なんじゃこりゃ度が低いためか、絵はがきがなかったのは残念。
緑と青のライトに照らされたシアン系、綺麗だった。
椅子になる紐、面白かった!
ほとんどの作品が印象に残る。
(剥製の小犬が「I’m dead」というプラカードを持って立っているのは、ブラックで可笑しくて英国らしいと思って写真に撮ったけれど、なんだかここに載せる勇気がなかった。)

artは技術という意味もあることを知って、職人さんが作る工芸品など正しく「技=芸術」だもんね~と言葉の意味に納得がいったものだったけれど、現代美術を見ていると技術というより「閃き」「アイディア」の印象が強い。一発のお笑いで終わってもいいし、研きをかけていくのもイイかな。

プライベート・ユートピア ここだけの場所 ─ ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国美術の現在
British Council Visual Arts

おしまいの写真は、展覧会とは無関係の植物。

Kバレエ「カルメン」

いや~、熊ちゃん、カッコいいわー!本当にキレッキレの踊りだった。ドン・ホセは、真面目で実直。それがカルメンに骨抜きにされて情けないことになる人物なので、カッコいいのは困ったもんだ(笑)。エスカミーリョをやればよかったのにぃ。と言っても、ちゃんと物語として成立する人物にはなっていて、二幕のカルメンへの束縛ぶり、独占ぶり、ちょっと他の男性と話しただけで拳銃を持ち出す悋気ぶりが、情けないと言うより偉そうでねー(むかむか(笑))。そりゃ、カルメンでなくても愛想が尽きるわって感じになっていた(わはは)。

カルメンは、登場したとき、やっぱエロかった(笑)。それなのに可愛さもある。踊り上手い!西洋人ぽい~と思ってオペラグラスを覗いたら、メイクめちゃうま、もう日本人に見えないよ。と思って休憩時間に配役表を見たら、ロベルタ・マルケスだった!ああ、そうだったそうだった、忘れてたけどそうだった。

いやいやそれが、他のソリストもソリスト以外のダンサーも皆、踊りが上手くて綺麗で~~。日本人が西洋人を演じているときの違和感が感じられず、驚きながら感心して見ていた。前からレベル高いと思っていたけど、更に高くなったんじゃないだろうか。
それに熊川哲也は振付の才能もあったのね(知らなかった。)スライディング振付、おもしろ~い!足を後ろに蹴るのも可愛い。両手を左右に振るのも。浮遊感のあるリフトも、ちゃんと入れてるし、本当に盛りだくさん。色んなことをやってくれて全編見せ場な感じだ。
ただし、全編見せ場だと目玉の場面の印象が薄くなってしまうから注意が必要だと思う。

目玉は、第一幕第一場(タバコ工場前広場)では、カルメンのハバネラと、カルメンが捕縛されてホセが連行する縄のパ・ド・ドゥ、第二場(居酒屋)ではエスカミーリョのソロ、第二幕第一場(野営地)はミカエラのソロ、第二場(闘牛場前)はカルメンとドン・ホセの追いかけっこだと思う。他にも工場前での兵隊さんたちの群舞、工場の女同士のバトル、居酒屋に場面転換するとき、幕前での酔っぱらい踊り、野営地に現れたエスカミーリョとドン・ホセのにらみ合い、闘牛場前のお祭り踊り(カルメンの友だちのソロ、道化師の踊り、闘牛士の踊り)と本当に見所がいっぱいだった。
もちろん、ドン・ホセが踊るところはいっぱいあったと思うけれど、印象に残るソロがないのが辛い。闘牛場前に至るまでに、ドン・ホセの苦しみたっぷりのソロが是非ほしい。そうすれば、踊りの楽しさだけではなく物語としての感動が強くなると思う。

それから、いつもながら舞台美術と衣装がイイ!!!
装置はシンプル、寸法のバランスを不思議な感じに崩している、マチエールが堅牢、乾燥、温暖。装置と衣装と照明でひとつの舞台として統一感があった。
おしまいの闘牛場前の場は、いきなりカッと照りつける照明、向こうの壁と手前の闘牛場という大胆な装置、上手から下手へ続く壁のラインがデ・キリコの絵のような遠近を崩したような感じ、手前の闘牛場の汚し具合、衣装の色の洪水(あれだけ色を使っても統一感があって美しいと感じられるのは装置がシンプルだからだろうなぁ)と、幕切れの殺しの異化効果を狙っている感ありありなんだけど、カルメンもドン・ホセも舞台から消えるというすごい演出もあって、なかなかの衝撃度だった。

カルメン(ロベルタ・マルケス)
ドン・ホセ(熊川哲也)
ミカエラ(佐々部佳代)・・・ドン・ホセを思う踊り、本当にいじらしい気持ちにさせられた。素晴らしい。
エスカミーリョ(遅沢佑介)・・・・カッコいい!
モラレス(伊坂文月)
スニガ(スチュアート・キャシディ)
フラスキータ(浅野真由香)
メルセデス(井上とも美)
ダンカイロ(ニコライ・ヴィユウジャーニン)・・・・切れよく可愛い♥。
レメンダード(兼城将)

(2014/11/01 高松市 アルファあなぶきホール)

スリンカチュ

こびとの住む街2
ツイッターでお気に入りのアート作品があったので検索したら、スリンカチュ(slinkachu)の作品だとわかった。スリンカチュは1979年生まれUK在住の男性で、左の画像のように写真集が翻訳されており、カタカナで検索してもヒットする。やっぴさんのブログ、カクレマショウの「スリンカチュ!」のページにどんなアーティストか簡潔に書かれていてとても参考になった。やっぴさんは写真家と書かれているけれど、本人は写真家でもミニチュア・アーティストでもないと言っており(?)、もっとストリート・アートをやっていきたいみたいだ。

その他の情報としては、こびとさんたちの制作は2006年から始めたそうな。電車のプラモデルを塗ったり削ったりしていたことが始まりで、こびとさんたちはストリートに置いて写真に収めて、そのまま残していくとのこと。公式サイトのバイオを読むと、色々と制作意図があるみたい。
小さい人プロジェクトの他にかたつむりプロジェクト(生きたかたつむりに無毒の絵の具でペイントし、ストリートにおいて写真を撮る)もやっていて、そのブログもある。
スリンカチュという不思議な名前の由来は。髪の毛がくねくね(スリンキー)なところからスリンキーと呼ばれていたので、友だちにわかるようにブログ名をスリンカチュにしたら自分までスリンカチュになったとのこと。

ネット上の画像を見ていると、繊細でユーモアがあって(ブラックなのもある)いじらしさのようなものも感じて、やっぴさんのおっしゃるように引きの絵を見たときの面白さも含めてすっかり気に入ってしまい、e-honのボタンをクリック。洋書だといくらか安いんだけど、キャプションのような短い英語でも「めんどくさ~」なので、お高い翻訳本の方を衝動買いだ。

The Little People Project←公式タンブラー
slinkachu←公式サイト
THE Q&A: SLINKACHU, ARTIST, MINIATURIST←インタビュー
Slinkachu: 20 Years of War Child exhibition←youtube、制作風景
‘This Photo Is Great’←「この写真がすごい2 70 photographs」(朝日出版社)に載ったときの本人のツイート。「初期のエッチな1枚!」

さかつうギャラリーのプライザー頁←ミニチュアって楽しい。
マン盆栽パラダイス←マン盆栽って面白そう~。

もう一人のお気に入り、スカイ・アートのトマ・ラマディエ(Thomas Lamadieu)。フランス人。検索してもフランス語の情報がよくわからなかった(残念)。
LAMADIEU THOMAS / ROOTS ART

シャーロック・ホームズ全集 河出文庫

注文してあった冒険、思い出、バスカヴィルの三冊が届いた。今のところ第1巻から第5巻まで刊行されていて、このあと月1巻のペースで第6巻から第9巻まで刊行される予定。
連載時の全挿絵付きが売りなだけあって、初めて見る絵があって嬉しい。もうひとつの売り、巻末に付いているオックスフォード大学出版部の注釈もイイ感じだ。
ワトソンが知人(患者でもある)を阿片窟まで迎えに行って、思いがけずホームズに遭遇する場面のある「唇のねじれた男」のさわりを見てみると「アヘンチンキ」という言葉があって、次のように注釈されている。

アヘンチンキは阿片をアルコールに漬けたもの。〔アヘンは空想力を高める薬だと信じられ、英国全土に常用が広まった。1920年に毒性薬物法が制定されるまで、取り締まりはなかった〕(第3巻P655、R・L・グリーン著、高田寛訳)

勉強になるなー(^_^)。
ベアリング=グールドのようなマニアックな注釈(事件の順番とか)はあまりなさそうだけど、それでも「大きめの青いガウン」の注釈では、「青いガーネット」では紫色、「空き家の冒険」では鼠色であるとされていてガウンの色に矛盾があるが、「唇のねじれた男」ではセントクレアのものを借りたと考えることもできるだろうと書かれていて、病膏肓に入るホームズファンもニンマリだ。

少し残念なのは、ホームズとワトソンの灰汁が抜けていることだ。BBCシャーロックほどではなくても、BBCの二人(特にホームズ)がそれほど違和感がないくらいには、あるいはグラナダTVのエキセントリックなホームズ(ジェレミー・ブレッド)がピッタリと思えるくらいには灰汁のあるキャラクターなのだ。阿片窟にいるホームズに驚いたワトソンのセリフも、その声の大きさをたしなめるホームズのセリフも優しすぎると思う。

「ホームズ!」わたしはささやいた。「こんな穴倉で、いったい何をやっているのかい?」
「できるだけ小さい声で話してほしいね」と、彼は答えた。「ぼくの耳はすばらしくいいのさ。(略)」
(第3巻P270、小林司、東山あかね訳)

ワトソンは「ささやいた」と書いているのに、それでも大きすぎるっちゅうの(笑)。ワトソンは「むっ」としたに違いないの(笑)。この遣り取りは笑えるはずのところだと思うけどなぁ。
ともあれ、この全集の売りは買いだ。全巻揃えようと思う。