塩田千春展 ありがとうの手紙

塩田千春展 ありがとうの手紙
第一会場の一部屋がまるごと一つの作品と化していた。水族館で左右と上方の魚をながめながら歩くチューブ上の通路を思い浮かべてもらったらいいかな?水族館でのガラスの向こうに当たる部分は、この作品では黒い糸が張り巡らされている。通路は回廊になっていて、中央部分には色んな人が誰かに宛てた「ありがとうの手紙」がホチキスで留められている。近くの手紙は読めるので、いくつか読んでみる。書いた人の年齢層は幅広いみたいだ。張り巡らされた糸は、あやとりのよう。一定の法則があるのか、トンネル状のカーブなど美しく見える。こんなことをよく思いつくな~。制作と撤収過程をちょっと覗いてみたい。

第二会場も奥の方に黒糸を張り巡らした作品があった。一つは家のような骨組みに糸を張り巡らしたもの。もう一つは、婚礼衣装の紋付き袴と打ち掛けを対にしたもの。婚礼衣装の方は、家の方より糸が細く、密度が高い。横から見ると衣装の前面に空間を作ってあった。そのため、糸の向こうに衣装が綺麗に見える。
奥の間には、赤い絵の具をつけた手で描いたものも三作品あった。これはあまり新規な面白さはないと思ったが、ご本人の手によるものだろうから、太陽丘とか月丘の盛り上がりが芸術家っぽいな~などと手相を見ていた。
手前の間は、指揮者台に向かって譜面台が並べられており、譜面台には透明なチューブが張り巡らせられていて、その中を赤い液体が流れている。しばらく献血に行ってないな~と思った。
何を表現しているのか考える気も起こらなかったが、とにかく、よくこんなことを思いつくな~と感心した。そして、やっぱり、制作と撤収に思いを馳せた。

Chiharu Shiota(公式)
(2013/08/03 高知県立美術館)

モスクワ・フィルハーモニー交響楽団

マリインスキーやボリショイのバレエ公演で、ロシアの楽団は音が大きいとは思っていたけれど、これほどとは(笑)。
オードブル的「ルスランとリュドミラ」序曲は、まだほんの序の口だった。音の大きさより速いねーと(笑)。速く弾く曲なんだろうけど。実は思ったより音が小さくて席がよくなかったのかしらと思ったくらいだった。

清塚信也
ピアノ協奏曲は、『さよなら、ドビュッシー』で好演していた清塚信也が臙脂色のスーツで登場。「やぁやぁ、どうもどうも」という乗りでヤンキーとも吉本新喜劇とも取れるような感じだ。(←要するに横山やすし!)椅子が低かったらしく、長いこと調節している間にも客席に向かって「どもども、ちょっと(スンマセン)」みたいな気遣いをしていて、明らかにこれまで見てきたクラシックの人種と違う(笑)。クラシックと言ったって音楽でしょう、楽しくやりましょうというクラシックに囚われない姿勢を感じた。それは演奏にも現れていて、聴きながら「面白いとしか言いようがない」と思っていた。ジャズっぽいと感じたところがあったし、オーケストラと合ってないというか「オケの人やりにくいんじゃ・・・」と感じたところも2カ所くらいあったが、それで破綻しているわけではない。オケと一体となるところも掛け合うところもちゃんとあり聴き応えがあるのだ。終わったらブラボーの声がいくつもあがった。
アンコールが、これまたビックリで、ジャズが始まったかと思ったらさにあらず。何十曲ものクラシックの名曲のサビの部分を次から次へと違和感なくつないで行き(中にはミッキー・マウスのマーチもあった)、ところどころでお客さんから笑い声がもれ(何せ聞いたことあるばかりの曲)、今さっき聴いたばかりのピアノ協奏曲のフレーズに掛かったときには私も思わず声をあげて笑ってしまった。この日、もらったチラシに「清塚信也ピアノリサイタル【K’z Piano Show 2013】笑得るクラシック」があったが、確かにこの人のコンサートは笑えるに違いない。
休憩時間にSさんを見つけて話しかけたらユニークだと連発していた。アンコールの曲について、ああいう曲があるのかとたずねると彼が自分でアレンジしたのだろう、ジャズが好きなのではとのことだった。協奏曲の本編でもジャズっぽいところがあったというと、独奏の部分は演者の好きに弾いてよいとのことだった。Sさんは前から県民文化ホールのピアノは、新規の際に弾き込んでないから音が悪いと言っていたのだが、この日も「季節が(湿気の多い)今でしょう、あれだけ弾いても音が(鳴らない)。可哀想ですね。」とピアノが可哀想と繰り返していた。

本気を出したラッパ系
プログラム最後の交響曲。なんか、まるごと聞いたことある~。いったいどこで聞いたのだろう。それはともかく、ラッパ系、笛系が凄かった。茹でダコのように真っ赤になっているのが二階席からでもわかる。クラシックって思い出したように主題を繰り返す。1回目では唯々凄いと思ったが、2回目は何だか可笑しくなって笑いかけた。でも、3回目以降は、これだからオーケストラは苦手なのだよ(室内楽が好き)と、ラッパ系の人の血管より自分の頭痛が心配になってきた。しかし、交響曲とはよくしたもので、第2楽章(ゆったり~)、第3楽章(ピチカート、ピチカート(^o^))と雷の後の慈雨(また雨か(笑))みたいな救いがあって助かった。
それにしても管楽器が、これほど前面に出るとオケとしてのバランスはどうなんだろう?そう思っていたら、アンコールはチェロやバイオリンの独奏があったりで弦楽器が気持ちよく、ここでバランスを取ったか(笑)という感じだった。
全体として、バレエにしてもオーケストラにしても私はロシアの垢抜けなさというか、土着的(三枚目的)なところが好きだと改めて思った。


指揮:ユーリ・シーモノフ
ピアノ:清塚信也

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23
 --ピアノ・アンコール--
名曲サビ・メドレー
 ----休   憩----
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調Op.36
 ----アンコール----
チャイコフスキー:弦楽カルテット曲 アンダンテ
チャイコフスキー:「白鳥の湖」より ロシア舞曲
チャイコフスキー:「眠れる森の美女」より ワルツ

(2013/06/25 県民文化ホール・オレンジ)

マラーホフの贈り物 ファイナル

フェスティバルホール
先週、大阪で命の洗濯をしてきた。すぐ汚れるので、できたら1日置きに洗濯したい。残念ながら、そうもいかないので反芻あるのみ。

まずはホールがよかった。2008年の「マラーホフの贈り物」もフェスティバルホールで観たが、その後、建て直された。前のホールは何だか圧迫感があって舞台も遠く感じたが、新しいホールは開放感があり、座席も前の人の間に後ろの人の席というふうに配置され、とても観やすい。舞台も近く感じた。それに大阪の女性観客はおしゃれで、夜の公演にふさわしくアクセサリーやお洋服がキラキラしていて私の気分を盛り上げてくれた。

公演はプログラムもダンサーもよくて、おしまいには思わず席を立って拍手していた。これまで前の人が立ちあがり見えなくなったので立ち上がるということは何度かあったが、自発的スタンディングオベイションは初めてだ。やっぱり、「最後のアクション超大作」とか「ファイナル」というのに弱いらしい(笑)。

Cプロ
「白鳥の湖」第二幕より
(振付:レフ・イワーノフ/音楽:チャイコフスキー/オリガ・スミルノワ、ウラジーミル・マラーホフ、東京バレエ団)
オデット役のスミルノワちゃん、若いのに堂に入った踊りだ。でも、それよりも王子が~、素晴らしい。王子はサポートに徹してあまり踊らないんだけど、オデットに向ける視線や身体の傾け方で、このうえなく大切に思っていることが伝わってくる。マラーホフの「白鳥の湖」全幕は見られないのかなぁ。

「トゥー・タイムス・トゥー」
(振付:ラッセル・マリファント/音楽:アンディ・カウトン/ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ)
数年前のバレエ・フェスティバルでシルヴィ・ギエムが一人で踊った「トゥー」の二人バージョンだ。閃光が力強いリズムと金属音に合わせて暗闇と空間を切り取っていく。素早く弧を描く腕が、ライトが当たるところに触れると閃光のように見えるのだ。マーロン・ディノのパワフルな踊りが、音楽にも演出にもピッタリだった。

「椿姫」より第一幕のパ・ド・ドゥ
(振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:ショパン/マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー)
マルグリットを追いかけるアルマン。マルグリットは年上の余裕でいなしていたが、ついに根負けか(笑)。二人の演技力と、踊りで物語れる振付をしたノイマイヤーに敬服。

「海賊」より奴隷のパ・ド・ドゥ
(振付:マリウス・プティパ/音楽:コンスタンティン・フリードリヒ・ペーター/ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル)
出た、タマズラカル君(笑)。←なぜ、笑う(^m^)。この人、「ニーベルングの指環」(2005)の仰天キャラクターと「チャイコフスキー」(2011)
のそつなき王子の両方を踊れてしまう器用な人。どちらかというとキャラクターが向いているような気がする。今回は元気いっぱいで本当に楽しそうに踊っていた。太陽のタマズラカル君と月のサレンコちゃん。二人の温度差が見物だった。

「瀕死の白鳥」
(振付:マウロ・デ・キャンディア/音楽:サン=サーンス/ウラジーミル・マラーホフ)
雄の白鳥や~。トロカデロ・モンテカルロバレエ団のダンサーに掛かると笑いが取れそうな振付だ。(フォーキン版「瀕死の白鳥」を初めて観たのはトロカデロ・モンテカルロバレエで、そのときは笑ってしまった。後年、コミックじゃない方を観て、トロカデロ・ダンサーの踊りとあまり違わないのに驚いたことがある。)笑いが取れそうやなと思いながら、切なさに涙がにじんでくるという不思議な体験をした。この公演でもっとも感動した。

-休憩-

「ロミオとジュリエット」より第一幕のパ・ド・ドゥ
(振付:ジョン・クランコ/音楽:プロコフィエフ/マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー)
やっとヌレエフ版の呪縛から解放されたような気がする。クランコ版もいいなぁと思えるようになった。第一部で「椿姫」を踊ったアイシュヴァルトとラドメーカーが、十代の恋を初々しく踊る。特にジュリエットが、可愛いーーー!

「タランテラ」
(振付:ジョージ・バランシン/音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク/ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル)
出た、タマズラカル君(笑)。タンバリン、タンバリン(^o^)。ぴょんぴょん、くるくる~。
熱帯タマズラカル君と寒帯サレンコちゃん。二人の温度差が見物だった。

「ラ・ペリ」
(振付:ウラジーミル・マラーホフ/音楽:ヨハン・ブルグミュラー/吉岡美佳、ウラジーミル・マラーホフ)
マラーホフの衣装がスカート(?)だったので、はじめ女性かと思ってしまった。エジプトの王子と妖精のお話だそうだが、衣装になれる間もなく終わってしまう。全幕じゃないからね~。
この二人の踊りを観ていると、バレエってテクニックだけじゃないんだと改めて思う。吉岡さんがマラーホフのサポートを受けて、片足でゆっくりと回転する。この簡単な動きが本当に美しい。このとき、吉岡さんだけでなくマラーホフ込みで美しい。これが一体となると言うことなんだろう。

「椿姫」より第三幕のパ・ド・ドゥ
(振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:ショパン/ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ)
ノイマイヤー、すごいわ~。「椿姫」第三幕のパ・ド・ドゥといえば、18禁バレエ。世界バレエ・フェスティバルでジョエル・ブーローニュとアレクサンドル・リアブコの踊りを観たときも凄いと思ったけど、今回も圧巻だった。振付どおりに踊ったら物語になるものね~などと思いながら観ていたのが、いつの間にか引き込まれていた。拍手の嵐~。

「白鳥の湖」より”黒鳥のパ・ド・ドゥ”
(振付:レフ・イワーノフ/音楽:チャイコフスキー/オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン)
黒鳥のパ・ド・ドゥは盛りあがる。32回転があるものね。チュージンさんは滞空時間が長かった。

「ヴォヤージュ」
(振付:レナート・ツァネラ/音楽:モーツァルト/ウラジーミル・マラーホフ)
マラーホフといえば「ヴォヤージュ」、「ヴォヤージュ」といえばマラーホフなんだそうである。今回は、全5公演、全てで「ヴォヤージュ」を踊るということだった。初めて観てなるほどと思った。マラーホフはクラシックもコンテンポラリーもOK、王子も踊ればキャラクターで笑わせたり泣かせたりできるし、ポワントを穿かせば女性ダンサーも顔負けなのだ(と噂に聞くばかりなのが残念なのだが)。そういう多才な彼が「ヴォヤージュ」を演じれば、その時々によって変幻自在に楽しませてくれるだろう。「ヴォヤージュ」は、パントマイムが加味された踊りなのだ。
旅から旅への旅ガラスだから、手を振る場面が何度かある。これまでどんなにして手を振っていたのだろう。今回は何だか、とても切なかった。

(2013/05/27 大阪フェスティバルホール)

レーピン展

観に行った当時は、リヒテンシュタイン展のクララ・ルーベンスちゃんや、その他のお宝お宝したキラキラ感が頭に残っていて、レーピン展の見始めの数点は暗くて寂しくて姫路まで来たのに~と思った。でも、すぐに慣れて、結局ほとんどの絵が気に入った。レーピンは、対象をよく観察し、冷静に描いている感じ。絵の中の人物は、その人の個性を発揮しているが、描き手は常にクールで動きのある絵もドラマチックな絵も静か。映画監督で言うとクリント・イーストウッドみたいな感じだ。

気に入った絵をスキャンしようと思ったら全部ってことにもなりかねないので、特に好きな3点と言いたいことがある3点をアップしてみる。1枚で物語ができてしまうくらいドラマチックな絵も数点あったので、それもスキャンしたらよかったかな。「ゴーゴリの『自殺』」なんか図録はゴーゴリのまわりの調度品が鮮明に印刷されているけれど、実物は暗がりに暖炉の火の赤と画面の奥の蝋燭の他は黒ーって感じで随分印象が異なる。実物の方は、じーっと目をこらさないと部屋の様子はわからない。映画の一場面を見ているようで、原稿を抱え天を仰いだゴーゴリの表情が本当にドラマチックだった。

(2013/02/28 姫路市立美術館)