シアターホリックの夕ごはん会「零れ落ちる女たち」

アルコールがあったらちょっとした「お客(宴会)」になりそうな雰囲気というか、アットホームな感じがまさに「夕ごはん会」だったので、とても気楽にすごせた。ごはんが終わってデザートまで出てコーヒーで一服して・・・という頃合いに前方から呼びかけられて、自己紹介を始めた人がいると思ったら、それが朗読劇の始まりだった。導入部、うまい。

働く気もなく自宅もなく女性の間をフラフラしているシンイチと、4人の女性の物語。ユキ先輩や姉のようなサチコが「やめときな」と言うのに、モエコちゃんはシンイチに夢中で、私も「もう~、やめちょき(呆)」と最初は思ったのであったが、モエコちゃんはそんなシンイチでも充分幸せそうで、「う~む、本人がいいなら傍でとやかく言うことないか」と思い至り、私の周りでモエコちゃんみたいな人が現れても「何も言うまい」と決意した。そういえば、瀬戸内寂聴さんも「放っておけ」と言ってたことだし。いや~、なんかタメになる劇だなぁ。

ところどころ笑えるところがあって(「カレー麻婆めん」、それはないろう(笑))、カジュアルな登場人物のカジュアルな恋愛模様をカジュアルに描いていると思った。役者さんがみんな上手なので、本人が心情をいちいちナレーションするのをもっと減しても思っていることは伝わる気がした。落語が好きなのでト書きは最小限にと思うのかもしれない。場面状況(どしゃ降り)を「ザー」「ザー」と役者さんに言わせたのは、うまいト書き表現で面白かった。

作・演出:松島寛和
(2013/09/20 サホエリカフェ・アルモンテ)

安部泰輔展 シャガール世界

シャガールの不思議な森 シャガール×安部泰輔

シャガールの良さがイマイチわからなかった。したがって、シャガール収集に反対だったし、常設も常にパス。ところが、今回、展示場の中央にこんもりとぬいぐるみの丘が見えるではないか。シャガールの絵に描かれたものをぬいぐるみにしているらしい。どれどれ~と入ってみて・・・・。
展示されているぬいぐるみは、どの絵のどれだ!?えーっとと探し回って・・・・、見つけたら嬉しい!!!特に気に入ったのは「オルジュヴァルの夜」という絵の右上の青い天使。ぬいぐるみも可愛いし、絵の中の天使の色もいいなぁ。鼓のような手風琴のような何かわからないものを持っているのもいい。山羊がバイオリンを弾いているのもぬいぐるみで気がついた(笑)。「村の祭り」で小さな棺を担いだ二人もぬいぐるみになっている。棺には花輪が載せられている。などなど~。とっても楽しかった。
聞けば、シャガールの展示場は滞在時間が短いそうで、よく絵を見てもらおうとして企画したのだそうな。好企画だ(拍手)!
「花嫁の花束」なんか単に赤い背景としてしか見えてなかったものが、人や変な動物や何か建物らしきものが描かれていることに気がついた。

安部泰輔 シャガール世界

これは、面白い!楽しくてウキウキ!
「皆さんが描いた不思議な生き物の絵をもとに安部さんが小さなぬいぐるみを作ります。」←毎日10名限定ワークショップ
ということで、描かれた絵と立体となったぬいぐるみを見比べて楽しんだ。
フェルトのうえでゴロゴロしてもいいよとチラシに書いてあるとおり、子どもがお昼寝中ー(笑)。お父さんが団扇で風をそよそよと送っていた。
会場では安部さんがミシンを踏んだり、誰かのお母さんにぬいぐるみの作り方をアドバイスしてたり。
会場の入り口には、シャガールの「料理でいっぱいの食卓」をモチーフにした立体作品があって、これを被って撮影OK。私も被って撮影してもらえばよかったよ(笑)。
通常、私たちが裁縫で小物を作るときは糸の始末とか、布端がほつれないようにとか、綺麗に綺麗に作ろうとするけれど、安部さんの作品はそういうのとは違って、その分やはりパワーがあると思う。

TAISUKE ABE official site

グロリア物語

高知県立美術館通信2013年7・8・9月号に登場したコレクション「グロリア」。うえの写真をご覧のとおり、美術館ホールのホワイエを飾る巨大画だ。行った人はわかると思うけど、まるであつらえたように雰囲気も大きさもホールにピッタリの絵なんだけど、実は・・・というのが今号の美術館通信で明かされている(私は別ルートで聞いてたけど)。
実は、あんまり大きいので収蔵庫に入らなかったんだって。記事を書いた奥野さんの文章も面白い。

「グロリア」を最初に見たのは、パリ郊外のとある倉庫であった。それはとてつもなく巨大な平面作品で、サイズ的に当館が収蔵することはありえなかったのだが、その10ヶ月後、あろうことか「グロリア」は、収蔵品だけで構成した開館記念展に出品されていたのである。
(高知県立美術館通信NO.81より 太字はお茶屋)

苦肉の策でホールに掲げることになったらしいが、正に怪我の功名だ。こういう楽しい逸話つきのコレクションは、県民としても愛着がわくものである。

(2013/08/03 高知県立美術館)

塩田千春展 ありがとうの手紙

塩田千春展 ありがとうの手紙
第一会場の一部屋がまるごと一つの作品と化していた。水族館で左右と上方の魚をながめながら歩くチューブ上の通路を思い浮かべてもらったらいいかな?水族館でのガラスの向こうに当たる部分は、この作品では黒い糸が張り巡らされている。通路は回廊になっていて、中央部分には色んな人が誰かに宛てた「ありがとうの手紙」がホチキスで留められている。近くの手紙は読めるので、いくつか読んでみる。書いた人の年齢層は幅広いみたいだ。張り巡らされた糸は、あやとりのよう。一定の法則があるのか、トンネル状のカーブなど美しく見える。こんなことをよく思いつくな~。制作と撤収過程をちょっと覗いてみたい。

第二会場も奥の方に黒糸を張り巡らした作品があった。一つは家のような骨組みに糸を張り巡らしたもの。もう一つは、婚礼衣装の紋付き袴と打ち掛けを対にしたもの。婚礼衣装の方は、家の方より糸が細く、密度が高い。横から見ると衣装の前面に空間を作ってあった。そのため、糸の向こうに衣装が綺麗に見える。
奥の間には、赤い絵の具をつけた手で描いたものも三作品あった。これはあまり新規な面白さはないと思ったが、ご本人の手によるものだろうから、太陽丘とか月丘の盛り上がりが芸術家っぽいな~などと手相を見ていた。
手前の間は、指揮者台に向かって譜面台が並べられており、譜面台には透明なチューブが張り巡らせられていて、その中を赤い液体が流れている。しばらく献血に行ってないな~と思った。
何を表現しているのか考える気も起こらなかったが、とにかく、よくこんなことを思いつくな~と感心した。そして、やっぱり、制作と撤収に思いを馳せた。

Chiharu Shiota(公式)
(2013/08/03 高知県立美術館)

モスクワ・フィルハーモニー交響楽団

マリインスキーやボリショイのバレエ公演で、ロシアの楽団は音が大きいとは思っていたけれど、これほどとは(笑)。
オードブル的「ルスランとリュドミラ」序曲は、まだほんの序の口だった。音の大きさより速いねーと(笑)。速く弾く曲なんだろうけど。実は思ったより音が小さくて席がよくなかったのかしらと思ったくらいだった。

清塚信也
ピアノ協奏曲は、『さよなら、ドビュッシー』で好演していた清塚信也が臙脂色のスーツで登場。「やぁやぁ、どうもどうも」という乗りでヤンキーとも吉本新喜劇とも取れるような感じだ。(←要するに横山やすし!)椅子が低かったらしく、長いこと調節している間にも客席に向かって「どもども、ちょっと(スンマセン)」みたいな気遣いをしていて、明らかにこれまで見てきたクラシックの人種と違う(笑)。クラシックと言ったって音楽でしょう、楽しくやりましょうというクラシックに囚われない姿勢を感じた。それは演奏にも現れていて、聴きながら「面白いとしか言いようがない」と思っていた。ジャズっぽいと感じたところがあったし、オーケストラと合ってないというか「オケの人やりにくいんじゃ・・・」と感じたところも2カ所くらいあったが、それで破綻しているわけではない。オケと一体となるところも掛け合うところもちゃんとあり聴き応えがあるのだ。終わったらブラボーの声がいくつもあがった。
アンコールが、これまたビックリで、ジャズが始まったかと思ったらさにあらず。何十曲ものクラシックの名曲のサビの部分を次から次へと違和感なくつないで行き(中にはミッキー・マウスのマーチもあった)、ところどころでお客さんから笑い声がもれ(何せ聞いたことあるばかりの曲)、今さっき聴いたばかりのピアノ協奏曲のフレーズに掛かったときには私も思わず声をあげて笑ってしまった。この日、もらったチラシに「清塚信也ピアノリサイタル【K’z Piano Show 2013】笑得るクラシック」があったが、確かにこの人のコンサートは笑えるに違いない。
休憩時間にSさんを見つけて話しかけたらユニークだと連発していた。アンコールの曲について、ああいう曲があるのかとたずねると彼が自分でアレンジしたのだろう、ジャズが好きなのではとのことだった。協奏曲の本編でもジャズっぽいところがあったというと、独奏の部分は演者の好きに弾いてよいとのことだった。Sさんは前から県民文化ホールのピアノは、新規の際に弾き込んでないから音が悪いと言っていたのだが、この日も「季節が(湿気の多い)今でしょう、あれだけ弾いても音が(鳴らない)。可哀想ですね。」とピアノが可哀想と繰り返していた。

本気を出したラッパ系
プログラム最後の交響曲。なんか、まるごと聞いたことある~。いったいどこで聞いたのだろう。それはともかく、ラッパ系、笛系が凄かった。茹でダコのように真っ赤になっているのが二階席からでもわかる。クラシックって思い出したように主題を繰り返す。1回目では唯々凄いと思ったが、2回目は何だか可笑しくなって笑いかけた。でも、3回目以降は、これだからオーケストラは苦手なのだよ(室内楽が好き)と、ラッパ系の人の血管より自分の頭痛が心配になってきた。しかし、交響曲とはよくしたもので、第2楽章(ゆったり~)、第3楽章(ピチカート、ピチカート(^o^))と雷の後の慈雨(また雨か(笑))みたいな救いがあって助かった。
それにしても管楽器が、これほど前面に出るとオケとしてのバランスはどうなんだろう?そう思っていたら、アンコールはチェロやバイオリンの独奏があったりで弦楽器が気持ちよく、ここでバランスを取ったか(笑)という感じだった。
全体として、バレエにしてもオーケストラにしても私はロシアの垢抜けなさというか、土着的(三枚目的)なところが好きだと改めて思った。


指揮:ユーリ・シーモノフ
ピアノ:清塚信也

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23
 --ピアノ・アンコール--
名曲サビ・メドレー
 ----休   憩----
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調Op.36
 ----アンコール----
チャイコフスキー:弦楽カルテット曲 アンダンテ
チャイコフスキー:「白鳥の湖」より ロシア舞曲
チャイコフスキー:「眠れる森の美女」より ワルツ

(2013/06/25 県民文化ホール・オレンジ)