サイド・エフェクト

うひー、怖かった。
何が怖いって精神科医のジョナサン・バンクス(ジュード・ロウ)が処方した薬の副作用で、患者のエミリー(ルーニー・マーラ)が殺人を犯したことではなく、バンクスが事件がらみの医者となったことで「あなたは疵物なのよ」と大家さん(?)に診療所を追い払われ、友人と思っていた医者仲間にも見放され、彼が頼んでも薬の処方さえしてくれなかったことだ。世の中こんなものなのか?人間ってこんなに冷たいものなのか?と私などは(それほど親切でも温かくもないくせに)疑問に思うのだが、そういうことをいかにも普通のように淡々と冷静に描く監督だからソダーバーグって苦手なのだ。辞めるって言ってたのにいつ辞めるのだ(早く辞めろ)。と言いつつも、風景の中のとあるビルにカメラが寄って、一つの窓から入って行くと血痕が・・・・というオープニングと、エミリーが外を覗く窓からカメラが引いていって、その建物の全体をとらえ、更に引いていって、とある町の風景になるエンディングが映画のセオリーどおりで上手いなぁと感心させられた。

お話は、形勢逆転のどんでん返しが面白く、なかなかのサスペンスだった。収穫は、ヴィクトリア・シーバートを演じたキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。もともと好きな俳優なんだけど、なかなかイイ役で楽しませてもらった。キスシーンの横顔なんか可愛かったなぁ。さらに色んな役で観てみたい人だ。というか、色んな役ができそうなのに放っておくのはもったいないでしょう。

SIDE EFFECTS
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
(2013/09/11 TOHOシネマズ高知8)

終戦のエンペラー

う~ん、確かに初めて知ったこともたくさんあったけれど、歴史の新解釈があるわけでもなく、なぜ、天皇が東京裁判を免れたのかはおおよそ聞いていたし、何だか物足りなかった。この作品は日本人よりも、日本人に感心のある外国人の方が面白く観られるのではないだろうか。というのも日本独特の文化であろう「空気を読む」とか「慮る」などが上手く描かれていたと思うからだ。そういう国では、以心伝心など良いこともあるが、責任があいまいになるなど悪いこともある。「空気を読む」とか「忖度する」には物的証拠が残らないから、裁判などで責任者への追求が難しくなるのではないか。今の問題として響いてくるところはあった。

[追記]
空気を読んで色んなことを自粛、自主規制するのも良くないなぁ。空気を読むより先を読めと思う今日この頃。

フェラーズ准将(マシュー・フォックス)/マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)/アヤ(初音映莉子)/高橋(羽田昌義)

EMPEROR
監督:ピーター・ウェーバー
(2013/07/31 TOHOシネマズ高知3)

合衆国最後の日

1977年の作品だが1981年のアメリカ、モンタナ州のミサイル基地、軍司令部、ホワイトハウスの三ヶ所が主な舞台。画面を分割して同時進行していることを一気に見せたり、カットの間がゆったりしていて全体的に懐かしい昔の映画~っていう感じ。
刑務所から脱走した元軍人デル(バート・ランカスター)らがミサイル基地を乗っ取り、核爆弾の発射との交換条件に秘密文書の公開と現金及び人質として大統領(チャールズ・ダーニング)を要求。娯楽映画としては先は読めるので面白さ半減・・・・と思いきや、どうしてどうして、なかなかに骨があり、現在進行中の(アメリカ当局が世界中の一般市民の通信まで収集・分析していた内幕を元NSA職員のスノーデンさんが暴露した)事件を彷彿させられたばかりか、権力の構造という点で今にも通じる話で面白かった。

ソ連に対して徹底抗戦する構えで、大勢の兵士を犠牲にしてもよしとして戦争を始め長引かせた前政権の意志決定がデルによって断罪されている。デルはアメリカ国民のために、その議事録を公開せよと言っており、誠実な(庶民派?)大統領に期待を寄せている。前政権のしたことだから現大統領はその事実を公表したい。しかし、他の首脳陣は公開すると国民の信用をなくすから、公開できないと言う。要するに政権維持のため公開できないと言うことだろう。この映画が作られた当時は、アメリカは反共だったわけだが、今は反テロだ。反共も反テロもその黒幕は越後屋だろうと私は思っているので、越後屋の息の掛かった首脳陣という風にしていたら更に面白かった。それでも、最高権力者の大統領でさえ意のままにならない現実があることを悲劇的に描いたことによって、組織の中の個人(多勢に無勢)の弱さや、黒幕的な存在を感じさせられる作りになっていた。

マッケンジー将軍(リチャード・ウィドマーク)/脱獄囚仲間パウエル(ポール・ウィンフィールド)

TWILIGHT’S LAST GLEAMING
NUCLEAR COUNTDOWN
DAS ULTIMATUM[西ドイツ]
監督:ロバート・アルドリッチ
(2013/08/03 あたご劇場)

最終目的地

丸く収まって、めでたしめでたし。とても面白かった。
神が人間に与えると約束した土地ではなくても、自分に合った土地で暮らすのがいいよねということだと思った。同時に自分に合った土地でくらすのもいいけど、それよりも相性の良いパートナーといっしょにいるのが(周囲の者も含めて)幸せというものだと思った。

登場人物のキャラクターが立っていた。オマー・ラザギ(オマー・メトワリー)、可愛い~(^_^)。ディアドレ(アレクサンドラ・マリア・ララ)、傑作~(^Q^)。

オマーがウルグアイにやってくるまで、アダム(作家ユルス・グントの兄:アンソニー・ホプキンス)やキャロライン(作家の妻:ローラ・リニー)、アーデン(作家の愛人:シャルロット・ゲンズブール)、ピート(アダムのパートナー:真田広之)はいったいどんな生活を送っていたのか。平穏で均衡がとれた生活だったろうけど、退屈していたみたい。そこへユルスの伝記を書かせてほしいとアメリカからオマーがやってきて均衡がくずれた。パズルのピースが一つ増えて、うまく収まらないな~というところへ、オマーの恋人ディアドレもやってきて、ひっちゃかめっちゃか(笑)。

3年後、ニューヨーク(?)のオペラ劇場でディアドレとキャロラインが再会して、その会話からウルグアイ組もうまくいっていることがわかる。キャロラインもディアドレもパートナーに恵まれて幸せそうだ。パズルが完成した。いや~、めでたい。

それにしても、ウルグアイにオマーがやってきたとき、オマーとアーデンの仲をやっかんでいたかに見えたキャロラインが、実は欺されやすいアーデンを心配していたのだとわかって、ちょー面白かった。ユルスが書いた自伝的小説をキャロラインだけが読んでいる。その内容からすると、ユルスは妻と愛人の壮絶なバトルを期待していたみたいだ。だけど、現実には妻と愛人の力に差がありすぎて嫉妬心など生まれようがなかったようだ。あるいは妻が夫に不足を感じていたのか。妻には圧倒され、愛人では物足りない、ユルスの立場はーーー(笑)。妻への当てつけに自死したってこともありえはしないだろうか。
キャロラインが原稿を焼こうとしたのはなぜか。また、焼きかけた原稿を炎の中から取りだしたのはなぜか。そういうところも面白かった。

THE CITY OF YOUR FINAL DESTINATION
監督:ジェームズ・アイヴォリー
(シネマ・サンライズ 2013/07/26 高知県立美術館ホール)