県庁おもてなし課

当地では大ヒット(の兆し)。見た人の感想は、おおむね良いらしい。私もそこそこ楽しんだ。
原作は新聞連載で読んだけれど、芯になる話があるわけではなく、ラブコメとしてもイマイチだった。映画の方は、話はほとんど中身がなく(スカスカ)、ラブコメとして役者の魅力で持っているという感じだ。
誰かにお薦めしたくなるほどの作品ではないが、どの役者さんも土佐弁が上手い!それから、独自に作ったと思われる観光ポスターやくろしおくんの張り紙などが随所に映っており、スタッフのそういう仕事ぶりを大いに楽しませていただいた。

この映画を観て高知に行ってみたいと思う人がたくさんいればいいな、とは思わない。それぞれの人が自分の郷土を見つめ直す、そんな映画になっていればいいのに(そういう普遍的な軸を持つ映画だったら)と思ったことだった。

掛水史貴(錦戸亮)/明神多紀(堀北真希)/佐和(関めぐみ)/吉門(高良健吾)/清遠(船越英一郎)

監督:三宅喜重
(2013/05/19 TOHOシネマズ高知7)

図書館戦争

原作は第2巻までしか読んでないけど、これがめっぽう面白く、読みながら声を出して笑うこともしばしばだった。キャラクターが立っているし、話の展開が痛快だからだと思う。映画の方もそういうポイントを押さえていて、笠原郁(榮倉奈々)と堂上教官(岡田准一)は原作どおりの遣り取りで笑わせてくれる。郁のルームメイト柴崎(栗山千明)と同僚手塚(福士蒼汰)もイメージどおりでイイ感じ。堂上の親友、かつ、同僚で、郁と堂上のラブコメを一番楽しんでいる小牧(田中圭)の存在感が薄いのが残念だが、仁科司令(石坂浩二)が警察の捜査(個人情報の閲覧)を拒否したり、玄田隊長(橋本じゅん)がメディア良化委員会の検閲を拒否するのはもちろん、図書館の敷地外で銃器の使用は認められていないが、その敷地を買い取って図書館にしちゃえば無問題だと銃器使用を許可するところは、無理が通れば道理が引っ込むとわかっていても痛快なんである。困ったもんだ(笑)。

図書館の自由と憲法で保障された表現の自由がリンクしていることが描かれている。その自由に対するお上の圧力と戦うのが図書隊だということで、大義も一応構えられている。また、図書隊は専守攻防に徹すべしを守っている。ジャーナリストは戦争の内実を報道し、無関心で忘れっぽい大衆に警鐘を発することが本分だということも描かれている。フィクションとはいえ戦争をするのだから、作り手もいろいろ考えているみたいだ。
ラブコメとして大いに楽しんだけれど、相手が殺す気で来るときに応戦すれば、殺し合いにならざるを得ないと思ったし、今、感想を書いていると、考えが映画からは随分と離れて、お上との最終決戦は憲法を盾に裁判所で行うしかないが、司法はかなり政府に取り込まれているからなぁと暗澹たる気分になってきた。

監督:佐藤信介
(2013/04/28 TOHOシネマズ高知9)

ふがいない僕は空を見た

生まれて生きるということの大変さを、序章のセックスから描いた作品のようだ。生まれる前から大変なんだから、生まれた以上どんなに大変でも生きてよねと、けっこう理屈っぽく(セリフで)訴えかけてこられたように感じた。

姑から早く孫をとせっつかれるあんず(田畑智子)を見ていると、生まれる前段からえらいこっちゃと思う以上に、経済的に自立できてないと離婚もままならない哀しさを感じた。でも、結局は離婚したみたいで、あんずのその後の人生が好転することを期待したい。
産院を営んでいる母(原田美枝子)を手伝うこともある卓巳(永山絢斗)は、イイ子だ~。関係ないけど、自然分娩の産院に妊婦さんが引きも切らずで驚いた。自然分娩って、そんなに人気があるの?
良太(窪田正孝)とあくつ(小篠恵奈)もイイ子だ~。コンビニの先輩(三浦貴大)に勉強を教えてもらえることになって喜んでいる良太なんかめっちゃ可愛い。あくつも水浸しになった良太の住み家を、いっしょに掃除してくれたりするのだ。この二人が悪意をむき出しにしてビラをまくシーン、弱い者イジメの原理を見た気がした。良太とあくつは、理不尽に貧しく差別されている。誰に怒りをぶつけたらいいのかわかってないし、怒りをぶつけたい相手(例:コンビニの店長)には怒れないし、そういう鬱積した気持ちのはけ口として自分よりイイ思いをしていそうな者をねたんで、その者の弱みにつけ込んでいじめるのだ。自分より強い立場の者に立ち向かっては行かない。

監督:タナダユキ
(シネマ・サンライズ 2013/04/25 高知県立美術館ホール)

希望の国

悪くはないんだけど中途半端で力のない映画ができてしまった。いつものようにもっと叫んでしゃべり倒しても良かったのに。ただし、福島のあとの長島の原発事故という設定は、何遍でも欺され学習しない日本人、再稼働を許してしまった日本人という真実を突いていると思う。

よかったところ。
半径20キロメートルで線引きして圏内なら避難させるが圏外ならさせないことのバカバカしさは、笑えるくらいによく描けていたと思う。

長島県の人々に寄り添う気持ちは伝わってきた。
ミツル(清水優)は、両親が行方不明のヨーコ(梶原ひかり)を思い遣り、津波で流されて瓦礫の原となった街をあてもなくさまよう。ヨーコの気持ちの整理ができるまでミツルはとことん付き合う。
妊娠中のいずみ(神楽坂恵)が内部被爆予防のため自家製防護服を着て歩く。夫の洋一(村上淳)は職場で笑われてもいずみの側に立つ。
そして洋一の父、小野泰彦(夏八木勲)は、避難指示が出ても認知症の妻智恵子(大谷直子)と自宅に残る。泰彦を見ていると、死に場所くらい自分で選択してもいいではないかという気にさせられた。

監督:園子温
(小夏の映画会 2013/04/20 あたご劇場)