怪物

『怪物』の感想を毛筆で書いた画像
本編に十五分ほど遅刻するも感動。校長先生と五年生の切ない遠吠えに涙。

カンヌ国際映画祭でクィア・パルム賞を受賞したことで核心のネタは割れていたけれど、同映画祭のコンペ部門で脚本賞も受賞した作品でもあって、物語にぐいぐいと引き込まれた。
学校でのいじめと先生による体罰、あるいは一部の未熟な先生の問題や学校組織としての対応のまずさなどを織り込んだ「今」の映画だ。また、母親:麦野早織(安藤さくら)、担任教師:保利(永山瑛太)、子ども:湊(黒川想矢)の各視点で順番に描いていくことによって真相が明らかになるという手法は昔からあるもので、一方向からの限られた情報では判断を誤るとわかっていても(それを忘れて)「思い込み」で動くのが人だと改めて思わされた。

我が子を心配して来校した麦野早織に対する対応で、もう~、教師失格じゃないのと思われた校長先生(田中裕子)だったが、彼女が湊に教えたことは、つらい時を乗り越えるのにものすごく大事なことで、人生の先輩としてありがたい人物だった。それなら教師も上等だと思い直した。そして、この二人の遠吠えが、崖っぷちの保利元担任に届いて身投げを踏みとどまるのは、やはりこれがいかに大事かということだと思う。(オーケストラで一番好きな楽器はホルン♥なのだが、あのやさしく温もりのある音色が遠吠えになることにも驚きだった。演奏は滅茶苦茶むずかしいそうだ。)

あと、好きな場面は、一足のスニーカーを片足ずつ履いて二人がケンケンして行くところ。麦野母が片方だけのスニーカーを見つけていじめを想起したものを、鮮やかに「なかよし」に変換してくれた。素晴らしい。星川くん(柊木陽太)、ほんまいい子だった(^_^)。
(2023/06/05 TOHOシネマズ高知6)

銀河鉄道の父

『銀河鉄道の父』の感想を毛筆で書いた画像

親は大変だなぁ。
時代を感じるところもあったけれど、若者の自分さがしと、親の愛情はあまり変わらないのかも。

成島出監督作品にハズレなし。もらい泣きしてしまった。
銀河鉄道の母が銀河鉄道の父(役所広司)のことを「旦那様」と言うとき、始めの2、3回は女中さんか母かわからなかった(^_^;。
明治の人は今よりも世のため人のためを思って生きていたのかもしれない。
これも時代を感じるところだけど、何人かいる子どもの中でも総領は特別なんだな。もしかしたら賢治(菅田将暉)が、期待に反して不出来で一番心配をかけたからかもしれないけど。
ともあれ、親に気持ちをぶつけられるのはいいことだ。
「ほめたでねぇか、いっぱいほめたでねぇか」と父は嘆くが、自信がなくて誉められると思ってないところで誉められても通じない。それでも、気持ちをぶつけてくれたということは、父の愛情はちゃんと通じていたんだろう。
(2023/05/20 TOHOシネマズ高知2)

せかいのおきく

映画『せかいのおきく』の感想を毛筆で書いた画像 書いてあることは次のとおり 目くそが鼻くそを足蹴にする世の中で好きという気持ちが、色んな壁をものともせず結ばれるとても可愛らしい映画。 『半世界』につづく阪本順二監督の「せかい」もの。今作の世界は様々な世界が統一されたもので宇宙一に匹敵するなぁ。 どの世界にも通用する好きという気持ち。

「今作の世界は様々な世界が統一されたもの」というのは、読み返して自分でもわかりにくかった(^_^;。「世界で一番好きなおきく」というときの世界は「全世界」のことと言いたかった模様。
黒木華の口跡がめちゃくちゃ気持ちよくて、おきくが声を失ったことが残念至極だったけれど、おきく自身が損なわれることはなく、これまた気持ちよく可愛く、ナイスなキャラクターだった。
(2023/05/10 TOHOシネマズ高知3)