推理作家ポー 最期の5日間

うへ~。音が~。猟奇的な描写が~~。そういう部分は、ほとんど目を伏せていた(^_^;。
ポーの有名どころの小説は、小中学生の時分に読んでいたはずなのに、きれいさっぱり忘れているのか、読んだという記憶が怪しいのか・・・。そんなわけで、小説と映画の中の現実がシンクロする面白さは、あまり感じなかった。ただ、ポーが現実に不可解な死に方をしたのも知らなかったし、貧乏だったことも、ほぼアルコール依存だったことも、愛する人に次々と先立たれていたことも知らなかった。要するに何も知らなかったので、ポーってそんな人だったのか~(ググってみよう)と面白かった。現実の不可解な死を、こんなにロマンチックな物語にしたのは、なかなかよいアイディアだと思う。ジュール・ベルヌで続編ができるなと思っていたら、犯人逮捕まで描ききり娯楽映画としてスッキリとした。

E・A・ポー(ジョン・キューザック)・・・・愛に殉じて、けっこう良い人生だったのでは。
エミリー・ハミルトン(アリス・イヴ)・・・・自立した女性って感じがいい。
フィールズ刑事(ルーク・エヴァンス)・・・・頑張り屋さん。
ハミルトン大尉(ブレンダン・グリーソン)・・・・マドックス編集長と見分けが付かない。
マドックス編集長(ケヴィン・マクナリー)・・・・ハミルトン大尉と見分けが付かない。ポーを容疑者の一人と考えていたフィールズに向かって、編集長はポーの不幸な人生を語り、人殺しができる人物ではないと断言する。ここが、この映画の中で一番好き。

THE RAVEN
監督:ジェームズ・マクティーグ
(2012/10/14 TOHOシネマズ高知2)

最強のふたり

面白かった!
ドリス(オマール・シー)、見目麗しい~。しかも生きがいいね~(笑)。貧乏で刑務所まで経験しちゃったけど、母思い弟思い(涙)。だけど、フィリップ(フランソワ・クリュゼ)に対してそこまで言う、そこまでするってくらい容赦なく、ふざけすぎのところがあってヒヤヒヤした(^_^;。耐えたフィリップ、えらい!

ドリスが対等に接してくれるからよいと言うフィリップ。う~ん、これはなかなか難しい問題だ。フィリップの方でも文通相手に対等に接することができなかったでしょう。心の壁をなくすのには、時間が必要なこともあるし、タイミングが大事なこともあると思う。障害のあるなしにかかわらず壁は大なり小なりあるもんね。まあ、介護人の面接で、あれだけうんざりさせられたら、ドリスのようなバリアフリーで刺激的な人物に惹かれるのはよくわかる。基本、いいヤツだし。

確かに下手に気を遣うのはよろしくない。誕生日にドリスにつられて皆踊りだす。その楽しそうな様子を見ているフィリップに胸が痛んだ。彼はこれまで自分に気を遣って皆踊らなかったんだと気がついたんだと思う。皆フィリップのためを思って彼が喜びそうな催しをするんだけど、フィリップの方でも楽しそうに装っていたと言うのだから、気を遣いあったあげく、すれ違ってるの。

えらく貧富の差がある二人だったけれど、好きな音楽を押しつけ合うでなく、知り合ったおかげでお互い音楽の幅が広がったのがよかった。パラグライダーの旋回シーン。景色が斜めに回る!いい動画体験をさせてもらった(^_^)。

INTOUCHABLES
UNTOUCHABLE
監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
(2012/10/12 TOHOシネマズ高知8)

人生、いろどり

雪の山また山から始まる。その雪が美しいのだけれど、冷たくて寂してくて、それだけで過疎の町がどんな状況に置かれているか感じさせてくれる。都会で就職して帰ってきた路子(中尾ミエ)が、母親に真実を打ち明ける場面なども、すこし逆光気味で印象深い感動シーンになっていて、映画を撮る心意気のようなものを感じた。

また、薫(吉行和子)たちに乞われて、料亭の女将が言う「頭を下げられるのは嫌い。でも、教えてと言う人に教えないのはもっと嫌い。」というセリフや、まだまだ男性職場の市場において仲買で身を立てている裕香(村川絵梨)の、へなちょこ農協職員江田(平岡祐太)に対するダメ出しなど、頑張っている女性の心意気がストレートに伝わってきて胸の空く思いがした。

薫と路子の幼なじみ花恵(富司純子)は、老人ホームに入れられるのが嫌で何とか自立できるだけの収入がほしい。彼女は、この作品の鍵になる人物だ。老人、女性、妻、葉っぱ、過疎地だからといって(基本的に何ごとにつけ)バカにされるのは嫌なのだ。彼女なりのやわらかな戦い方でもって、いろんな人に絡んで物語を推進していく。

花恵を天敵と思っている(笑)輝雄(藤竜也)は、薫がおとなしいのをいいことに夫唱婦随を実践してきたが、ついに薫が本領発揮。裕香と江田の出来たてカップルをして「夫婦ってわからん」と言わしめた(笑)。

途中、薫のハウスが焼けたり、山を売る売らないで輝雄ともめたり、もたつくところはあったけれど、老いも若きも夢中になれる仕事があれば、そこをベースに輝けるという話だったと思う。

監督:御法川修
(2012/10/07 TOHOシネマズ高知5)

鍵泥棒のメソッド

一番のワル(?)だと思ったのが、愛はどうでも金が大事のパート主婦(森口瑤子)だったのだから、いい人ぞろいの気持ちイイ作品だった。
水嶋香苗(広末涼子)が、職場のアルバイトも、結婚相手にも望むのは「健康で努力家の人」であって、財産も容姿も問わないのが良い。彼女の父親も本人が言うことに運良くお金に困らず、何につけ一流のものに囲まれて生活できたが、それよりも愛する妻と娘が一番の宝物とのことで実に微笑ましく感動的だ。
記憶喪失の殺し屋こんどう(香川照之)の几帳面さなども好感が持てて、香苗との恋の成り行きを応援したい気持ちになった。
ダメ男の桜井武史(堺雅人)でさえ、根は悪いヤツではないからして、エピローグの恋の予感もよかったねと思える。
こういうしゃれた映画は内田監督の専売特許かな。1年に1本は観たいものだ。
それと、ああ、いい曲と思ったら、作品中で曲名も披露してくれて嬉しい。ベートーヴェンの弦楽四重奏第13番。やっぱりベートーヴェンってスゴイや(^_^)。

監督:内田けんじ
(2012/10/03 TOHOシネマズ高知5)