君を想って海をゆく

ビラル(フィラ・エヴェルディ)が、めっちゃイイ子で(涙)。マンUでサッカー選手になるんやとー。ミナ(デリヤ・エヴェルディ)に会いに行くんやとー。『汚れなき悪戯』「ステイ・ゴールド」石川遼。

シンプルな作品なんだけど実に繊細。たとえば、なぜ、シモン(ヴァンサン・ランドン)は、ビラルを助けたのかにしても答えは一つだけじゃない。難民側に立たなかったことで別居中の妻オドレイ(マリオン・ダナ)に「あなたに失望した」と言われたこと、独りアパートの寂しさ、ビラルたちの若さ、助けてみるとよい子だし、事情を聴くとミナに会わせてやりたい気にもなる(自分は未練たっぷりの離婚をしたし)。難民への支援は犯罪みたいに言われると反発もある(関わりたくなかったはずなのに)。
オドレイの気持ちも昨日今日のものではないと察しがつく。程よい距離を持って付き合うには大好きなシモンなんだけれど、いっしょに暮らすとダメなんだ。何度も思い知らされていたんだね。
ミナの家族の描き方も「家父長」バーン。わかりやすいし、きめ細かい。身動きとれなさ具合が、ひしひしと伝わってくる。
カレーの浜辺ののどかさとはまったく異なる暗い波間に見え隠れする大きな船と小さなビラル。ワイドスクリーンが生きる。

私の頭には「なぜ?」という言葉が点滅し続ける。難民を扮装中の本国へ送還はしないというのは肯けるのだけれど、そのまま放置、支援は犯罪って???(カレーの難民
そして、おしまいに玄関マットの比ではないタイトルが。私には強烈なパンチだったが、フランスの市民はどう受けとめただろうか。

WELCOME
監督:フィリップ・リオレ
(シネマ・サンライズ 2012/01/20 高知県立美術館ホール)

ロボジー

面白かった~。クスクス笑いどおしだったような気がする。
和久井映見ちゃん、母親役が多くなったね。

鈴木重光(五十嵐信次郎)
佐々木葉子(吉高由里子)
小林弘樹(濱田岳)
太田浩二(川合正吾)
長井信也(川島潤哉)

監督:矢口史靖
(2012/01/15 TOHOシネマズ高知7)

ヒミズ

感動した。
園子温は、やさしいなぁ。
住田祐一(染谷将太)を茶沢景子(二階堂ふみ)が救う。『20世紀ノスタルジア』で生死の瀬戸際に立っていたチュンセ(圓島努)をポウセ(広末涼子)が救った、あの変形版だ。チュンセと終末感漂う東京が重なり合っていたように、住田くんと東日本大震災後の日本が重なる。「がんばれ」という言葉だけなら虚しいが、傍にいて何があってもいっしょに居続けてくれる人が、大好きな人にどうしても言わずにはいられない言葉ならどうだろう。同じ言葉が異なる意味を持つ。魂の発露としての言葉についての映画にもなっていた。

青々しい物語に瑞々しい俳優。ツボだ。(このごろよく感じることは、子どもは社会の生命力ってことだ。夜野(渡辺哲)らの登場人物が、住田を見守り気遣い試しているのは、作り手にもそういう視点があるからだろう。)
それに、性と暴力とお笑い。映画の王道だねぇ。でも、暴力は苦手なんだよな~。父ちゃん、殺すのはいいけど(?)。(園作品はリアルなようでリアルでない。非現実のようで現実的。何か変な絶妙なバランスで成り立っているような気がする。)

ただでさえ葛藤の多いお年頃に、毒親のおまけ付きで、父親殺しというハンディキャップを背負っての再スタート。伴走する茶沢さんに私は「母親になりすぎないでね」と今は思ってしまうのだが、東日本大震災後の日本を変え得るのは母親パワーかもしれない。

監督:園子温
(2012/01/14 TOHOシネマズ高知5)

マイウェイ 12,000キロの真実

オペラ~。あれよあれよという間に話は転がり、登場人物の感情爆発、おー!そうつながるかぁと閉めもよく、ほどよい満腹感で劇場を後にした。
三つの軍服を着た日本人てフィクションかと思っていたら、事実に着想を得た話だそうで、観てみるとなるほどあり得ると思った。
また、始めは日本の軍国主義をナチスドイツみたいに悪者に仕立てた娯楽映画が出てきたかと思いながら観ていたけれど、最後まで観るとそんなスケールに収まらず、ソ連軍もドイツ軍も兵隊の退路を断って戦わせるのは同じだと描かれているうえ、主役の二人、長谷川辰雄(オダギリジョー)とキム・ジュンシク(チャン・ドンゴン)のヒューマンドラマになっていて、めでたしめでたし。サブキャラもいいし、とにかくオペラ。

長谷川辰雄をオダギリジョーが演じると、本来辰雄は軍国主義的な言動・思考には向いていないのに、周囲の環境によって軍国主義化していたように見える。12,000キロの長旅で軍国主義を脱し、ぼんやりしている姿を見ると、君の本当の姿はこれでしょー!と思わずにいられなかった。

MY WAY
監督:カン・ジェギュ
(2012/01/14 TOHOシネマズ高知8)