君を想って海をゆく

ビラル(フィラ・エヴェルディ)が、めっちゃイイ子で(涙)。マンUでサッカー選手になるんやとー。ミナ(デリヤ・エヴェルディ)に会いに行くんやとー。『汚れなき悪戯』「ステイ・ゴールド」石川遼。

シンプルな作品なんだけど実に繊細。たとえば、なぜ、シモン(ヴァンサン・ランドン)は、ビラルを助けたのかにしても答えは一つだけじゃない。難民側に立たなかったことで別居中の妻オドレイ(マリオン・ダナ)に「あなたに失望した」と言われたこと、独りアパートの寂しさ、ビラルたちの若さ、助けてみるとよい子だし、事情を聴くとミナに会わせてやりたい気にもなる(自分は未練たっぷりの離婚をしたし)。難民への支援は犯罪みたいに言われると反発もある(関わりたくなかったはずなのに)。
オドレイの気持ちも昨日今日のものではないと察しがつく。程よい距離を持って付き合うには大好きなシモンなんだけれど、いっしょに暮らすとダメなんだ。何度も思い知らされていたんだね。
ミナの家族の描き方も「家父長」バーン。わかりやすいし、きめ細かい。身動きとれなさ具合が、ひしひしと伝わってくる。
カレーの浜辺ののどかさとはまったく異なる暗い波間に見え隠れする大きな船と小さなビラル。ワイドスクリーンが生きる。

私の頭には「なぜ?」という言葉が点滅し続ける。難民を扮装中の本国へ送還はしないというのは肯けるのだけれど、そのまま放置、支援は犯罪って???(カレーの難民
そして、おしまいに玄関マットの比ではないタイトルが。私には強烈なパンチだったが、フランスの市民はどう受けとめただろうか。

WELCOME
監督:フィリップ・リオレ
(シネマ・サンライズ 2012/01/20 高知県立美術館ホール)

「君を想って海をゆく」への4件のフィードバック

  1. いい映画を観たと思いました。観られてほんとによかった。(シネマ・サンライズさんに感謝です。)
    私はシモンの「普通っぽさ」が、とても印象に残りました。

    >難民を紛争中の本国へ送還はしないというのは肯けるのだけれど、そのまま放置、支援は犯罪って???

    私は実は、「送還しない」っていうのにそもそも驚いたくらいなんです。
    「そのまま放置」っていうのは、お金をかけたくないからだろうし、「支援は犯罪」っていうのもこれ以上難民が集まることを避けたいんだろうと。(送還しないのも、もしかしたら予算がないからなのかな・・・とか。)
    自分の薄情さがハズカシイです。
    でも、フランス側の事情も垣間見えて(流れ込む人数が半端じゃない?)、一筋縄ではいかない難民問題の難しさを肌で感じるところがありました。
    でも・・・必死で水面下に潜ろうとするビラルが見てられなかった。あんなことしたら・・・って(涙涙)

  2. シモンさん、いい人でしたね。関わり合いたくないっていうのは本音で、でも、関わってしまうとほっとけないというのも人情で。このへん、ほんと普通。「自分の薄情さがハズカシイです。」とおっしゃるけど、ムーマさんが薄情なんじゃなくて、難民とは距離があると言うだけのことではないでしょうかね?
    ヤマちゃんとも話したことだったんですが、最後には指輪を元妻に返そうとするじゃないですか。あそこが凄くいいですよね。物とか道具を有効に使えるって大人だと思うんですよ。

    >あんなことしたら・・・って(涙涙)

    わたし、どこに浮いてくるだろーってずーっと観てたもんで、結果が本当にショックでした(涙)。

  3. お茶屋さん、こんにちは、指輪のヤマです(笑)。
    一昨日付の拙サイトの更新で、こちらの頁を
    いつもの直リンクに拝借したので、報告とお礼に参上しました。

    高知なんぞに住んでいると、難民問題なんてどうもピンとこないんですが、
    世に多くある理不尽のなかでもとりわけ難題だと思いますよね。
    単純な差別問題なら、解決は難しくても、是非自体は自明ですもん。

    そういうものに向ける眼差しとして最も必要なものが
    お茶屋さんのおっしゃる「シンプルだけど実に繊細な」視線なんだろうなと、
    本作を思い返しながら、気づかせてもらえる感想でした。

    どうもありがとうございました。

  4. 指輪のヤマちゃん、どうも。(一瞬『ロード・オブ・ザ・リング』かと思った(笑)。)

    コメントが表示されてなくてスミマセン。勝手にスパムに分類されていました。これまでは、そんなことなかったのに(う~みゅ)。

    指輪といえば、先日『タイタニック3D』を観て、101歳のローズが、お宝の指輪を海へ捧げる(葬る)場面で、大倉さんがお怒りになるのももっともだと思いましたよ。
    やっぱり、シモンの指輪活用術を観た後ではねぇ(笑)。

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