RAIL WAYS 愛を伝えられない大人たちへ

ゆったり、しみじみ大人の映画だった。人生において、やりがいのある仕事がいかに大切か、一番身近なはずの夫婦の意思疎通がいかに難しいかが、40年の長きにわたる時間の重みとともに伝わってきた。そして、夫の定年退職を機に、夫にとっても妻にとっても第二の人生のスタートラインに着いたわけだが、スタートと言っても落ち着きのある雰囲気で、このような落ち着きのある清々しさもあるのだなぁと思った。

滝島徹(三浦友和)が働き始めて41年、無事故35年という時間の差は、ちょうど慣れた頃に事故を起こしたのではないかと想像するが、後輩の指導にもその失敗の経験が生かされているような気がした。徹の高校生時分の彼女(仁科亜希子)が登場し、バツイチの彼女によって熟年離婚の内実を垣間見させる脚本もうまいと思う。

妻佐和子(余貴美子)が担当する患者が徹が運転する電車に乗り合わせていて・・・・というくだりは、妻がなぜ働きたいのか理解する大切な場面だが、雷鳴と稲妻がものすごく、映画として山場となり得ていたと思う。また、最後の電車の運転で、まさに退職の花道、沿線で手を振る人たちを配した場面もよかった。春めいた光の中を走る電車に無言の運転士。感慨深いものが込み上げる面持ちに共感した。

監督:蔵方政俊
(2011/12/04 TOHOシネマズ高知1)

けいおん!

音楽映画かと思えばさにあらず。なかよし軽音楽部のゆるい人間関係が、猫なで声と内股で表現された日には、かゆくてかゆくて・・・・スンマソン。中途半端にあまいにゃー(猫ひろし)。
だけど、私の一遍しか経験がない海外旅行の行き先が彼女たちと同じだったので、ほほぉ~という感じで観ていた。

監督:山田尚子
(2011/12/03 TOHOシネマズ高知6)

フレンチ・コネクション

うおー!やっぱり、おもしろい!遠い昔にビデオで観たきりで、車で電車を追いかけるシーンしか記憶になかったんだけれど、ポパイの憎みきれない人物像、アイタタタのラストの苦さが胸に残り、やはりただの娯楽作ではないとの思いを強くした。
アクションにおいても重要なシーンは音楽、セリフなし!しゃべっているのはフランス人だけ(←ケロさん指摘)。これが、ホンマの活動大写真やーーーー!

ジーン・ハックマンは、ポパイにしか見えないし、ロイ・シャイダーは、めちゃカッコイイ。『フレンチ・コネクション2』もオリジナルをしのぐ面白さだったけれど、パリの広場をとことん走って追いかけるシーンしか記憶にない。午前十時の映画祭は、赤のシリーズ、青のシリーズと来て、次は白か黄色か紫か、なんでもいいから、『フレンチ・コネクション2』も是非、上映してほしい。

ジミー・ドイル:ポパイ(ジーン・ハックマン)
クラウディ(ロイ・シャイダー)
THE FRENCH CONNECTION 監督:ウィリアム・フリードキン
(2011/12/03 TOHOシネマズ高知4)

孫文の義士団

力作。音楽や何やら感傷的に過ぎるとか、人物の表情や衣装がカットで繋がってない感じとか、レレレなところはあるし、飛び道具いっぱいで満身創痍の痛さが伝わってきて私にはキツイところもあったんだけど、こてこてのパワーと俳優の好演のおかげで、まったき娯楽映画の中に革命の真実を見た・・・というと大げさだが、革命に臨む人の気持ちとしては自分のためというより誰かのためにというのが大方だろうなと改めて思った。(誰かのためにという動機による行動は、結局自分のための行動とも言えるんだけど。)考えてみれば、自分のために命を賭けようとは、あまり思わないものかもしれない。もう十年以上前になるけど、ペルーの日本大使館が当地の革命団に占拠されたとき、職場の先輩が「自分だけなら耐えられても、子どももためを思ったら」というようなことを言っていたのを思い出していた。
また、孫文のボディガードが善で、暗殺団が悪という単純な図式にしていないところは、まるで日本の幕末のようだと思った。革命期というのは、様々な思想が入り乱れ信念に基づき行動をする若者が多く登場するのだろうなぁ。でも、この映画では国をどうこうしようというような革命熱に浮かされた感じは少なくて、個人主義っぽい動機でメンバーに加わっていったのが可愛い。(って上から目線?)
最後の孫文の涙には、「泣いてる場合じゃないだろーー!」とすかさず突っ込んでしまったが、もしかしたら、あれは作り手の涙なのかもしれない。これほどの犠牲を払い清朝を倒しても現在、孫文が目標としていた人民の人民による人民のための政治になってない、孫文が見たらきっと涙するぞ・・・・というと、すごく立派な映画になる(ような気がする)。
それにしても、持ち帰ったチラシを見てビックリなのは、“愛と忠義に身を捧ぐ車夫”(ニコラス・ツェー)って、『新少林寺』で線の細い悪役やった人だよね!今回、とっても魅力的。“悲しき過去を秘めた物乞い”(レオン・ライ)って『天使の涙』のどの人よって感じだけど、鉄扇を持ってすっくと欄干に立つ姿に痺れた~!『愛人 ラマン』で軟弱なお金持ちのお坊ちゃまだったのが、“理想に燃える活動家”(レオン・カーフェイ)になってたとは、まったく気づかず。どっかで見たとは思っても『レッドクリフ』の趙雲が、“非情なる暗殺団の首領”(フー・ジュン)に化けてたの~(驚)。素晴らしいお師匠様イップ・マンが、“葛藤するスパイ警官”というと聞こえはいいけど、賭博で転落した男(ドニー・イェン)が板についてた。う~ん、やっぱり香港映画はオモロイなぁ。
十月圍城 監督:テディ・チャン
BODYGUARDS AND ASSASSINS
(2011/11/24 あたご劇場)