久々に観るイタリア映画がよい作品で嬉しい。原題は「幸せになる権利」らしいけれど、邦題がこの作品にピッタリだ。観ていると原題はダイレクトに観客に伝わるように作られているから、邦題の方がゆかしくて良いくらいだ。
見晴らしのよい丘の上にある古書店の店主リベロ(レモ・ジローネ)とブルキナファソからの移民の少年エシエン(ディディー・ローレンツ・チュンブ)との交流をはじめ、訪れる人たちとの遣り取りが微笑ましく、本というものがどういうものか(作り手が本をどうとらえているか)わかる。リベロがエシエンに最初に貸した本はミッキーマウスの漫画本なんだけど、その後が「ピノキオ」「イソップ物語」「星の王子さま」「白鯨」「シュバイツァー伝記」だったかな、もっとあったような気がするけど;;;、何より本は楽しく面白く教訓でもあり詩でもあり心の糧となるものと言いたげだ。そして、最後に一番大事な本とのことで、「しあわせになるんだよ」という言葉とともにエシエン少年にプレゼントされたのが「世界人権宣言」。や~、感動した~(ToT)。昨今、世界中で移民排斥やら人種差別やら日本においてもヘイト本、ヘイトデモなどがあり(実はそれだけではない、ありとあらゆる問題につながっている)人権というものがないがしろにされている世の中に、人々にため息をついていた者は、もれなく感動しただろうと思う。あるいは子どもに勇気づけられ希望を感じ、その幸せを願っている者は間違いなく感動しただろう。
また、本屋の心意気とも言うべき、リベロの考えも気持ちよかった。本を捨てるなんてと怒り(怒られた気がした;;;)、発禁本を世に広めるのは本屋の使命と言うのだ。
お客さんで印象に残っているのは、かつての著作本がどこにもないという元先生。自分の著作が生きているうちに世の中から無くなってしまったら悲しい。一所懸命書いたものならなおさら。著作者の気持ちと、時間が良書を選っていく厳しさ、だからこそ残ってきたものの確かさというものを感じた。
また、ゴミ箱から漁られてリベロのもとにやってきた日記。生きていたらリベロ爺さんより年上と思われる女性の20歳代の日記と思われるが、それを読むリベロの共感の表情がよい。日記文学があるのは古今東西日本だけとドナルド・キーンさん♥はその著書で言っていたので、あの世へ行ったらこの場面を見ての感想を訊いてみたい。
日本の古本屋・・・・品切れの書道の本を探していて見つけたサイト。映画のパンフレットとか、いろいろ検索してみると金額を含めて面白い。
(2023/09/30 あたご劇場)