バービー人形がモノリスのように登場する冒頭から可笑しくて可笑しくて。すごく面白かった。自由で風刺が効いていて、あくまでも軽やかに言いたいことを言う姿勢。脚本、監督は、グレタ・ガーウィグ。『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』も脚本と監督だ。これは名前を覚えねば(覚えにくいけど)。
マテル社のCEOたちが現実世界からバービーランドに向かって行くシーンさえも可笑しくて可笑しくて。そして、CEOの決断は、ソロバンをはじいて儲かるなら何でもOKってこともさらり(笑)。オープニングのロゴによるとマテル社も制作又は配給に一枚噛んでいることを思い出すと更に笑える。
バービーランドは女社会、現実世界は男社会ってことで、女社会ではケンが自分らしさを発揮しにくく、男社会ではバービーは生きにくくという、性別の役割固定(ジェンダー)問題でこれだけ笑わせられるとは爽快だ。けっきょく、ジェンダー問題だけでない、個人が本当に自分らしく生きられるように、自分のことは自分で決められるように、選択肢があるように、という自由さを是とする作り手の意志を感じる。そのうえで、困難はあるけれどモノともせずに生きようということを「ふわり」と描いているようだ。要するに「くるしいこともあるだろさ、かなしいこともあるだろさ、だけど、ぼくらはくじけない」というひょっこりひょうたん島の歌にそっくりな映画だ。
(2023/08/13 TOHOシネマズ高知3 吹き替え版)