革命前夜

『殺し』に登場した十代の仲良し二人組のうち一人は、警察に追われて川に飛び込み、逃げている途中で溺れ死ぬ。『革命前夜』でも主人公ファブリツィオの親友が溺れ死に、彼はその嘆きと親友への思いを詩にして叔母に聴かせたりする。ベルトルッチの友だちも川で亡くなったのかもしれない。ファブリツィオはコミュニストだったが、その思想に疑問を感じ始め、自身の階級であるブルジョアの女性と婚約する。というわけで、ベルトルッチの自伝ぽいと思って観終わったらチラシに「パルムの僧院」を下敷きにした半自伝的作品とあった。叔母との恋愛は「パルムの僧院」からなのか。「観念をセリフにされると眠くなる」という法則に従ってうつらうつらしていたところ、ファブリツィオと叔母さんとの恋愛沙汰に完全に目が覚めた。なんか妖しい雰囲気だと思っていたら・・・・。二人が別々に眠っているのをカットバックしたシーンがエロティックだった。さすがベルトルッチである。

PRIMA DELLA RIVOLUZIONE
BEFORE THE REVOLUTION
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
(ベルトルッチとイタリア名作選 高知県立美術館 2013/11/23)

殺し

長年観たかったベルトルッチのデビュー作。テーベ川のほとりで発見された女性の死体。殺したのは誰か。事件当夜に現場付近にいた人々を警察が訊問し、それぞれの証言によって一連の事実が浮かび上がっていく。一見『羅生門』形式ではあるけれど、各人の証言が矛盾することも思惑が交差することもないので、いずれが真実かというような奥の深い面白さはない。また、誰がなぜ殺したのかもあまり問題とされていないので深みには欠けるような気がする。この映画の面白さは、容疑者たち(置き引き専門のチンピラ、金貸し女のヒモ、十代の仲良し二人組、兵士、サンダル男)が、いかにもイタリアンというか、庶民やねぇというか、その心のちょっとした動きのスケッチが上手いところだ。それに作品の構造が時間芸術といわれる映画にふさわしく上手くできている。容疑者たちのそれぞれの証言で唯一共通のにわか雨が降るところにくると、ある女性が身支度を始めて・・・・、出かけて・・・、というふうに必ずその女性が現れて話が進んで行き、実は彼女が殺されると最後にわかる。『運命じゃない人』みたいに凝った作品に比べると単純かもしれないが、その分しっかりとした構築力を感じさせられた。そして、何よりも、強風に紙くずが舞う印象的なファーストシーンから、夜の広場の詩的な静けさ、川沿いの横移動、サンダルの音が響くダンスシーンにいたるまで、映画的な魅力に溢れていたことがベルトルッチ・ファンとしては嬉しいところだった。

LA COMMARE SECCA
THE GRIME REAPER
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
(ベルトルッチとイタリア名作選 高知県立美術館 2013/11/23)

マラヴィータ

きゃははは(^Q^)。これは面白い!好き好き!マフィア映画へのオマージュもあるし、音楽もいい。一人一人が自立していて、嫌なヤツはこてんぱんに・・・・(笑)。何より家族の映画になっている。ファミリーものにめっぽう弱いこちらとしては、コメディで泣いてしまうという一幕も(笑)。『アダムス・ファミリー』以来のビックリ感動家族だ。
妻は神父さんから爪弾き、長女は失恋、長男は学校で問題児扱い。夫については何をかいわんや。今後も引っ越し続きでしょう(?)。でも、家族が車で移動するときって一体感があるよね。お引っ越しは車でどうぞ(^o^)。

フレッド(ロバート・デ・ニーロ)/マギー(ミシェル・ファイファー)/ベル(ディアナ・アグロン)/ウォレン(ジョン・ディレオ)/FBIスタンフォード(トミー・リー・ジョーンズ)

The Family
監督:リュック・ベッソン
(2013/11/20 TOHOシネマズ高知4)

ばしゃ馬さんとビッグマウス

よかった!これは好きだ~!10人中8、9人は楽しめると思う。笑って泣ける小さないい話だ。また、映画好きには、かなり受けるんじゃないだろうか。
脚本家になる夢を持ち、コンクールに落ち続けた34歳の馬淵みち代(麻生久美子)と、大口を叩くばかりで1本も書いたことのない天童義美(安田章大)。考えてみれば私は追いかけた夢なんてなかったので挫折もなかった。なれたらいいな~と思うのは仙人で、なれるとは思ってないので、今後もそういう方面の挫折はなさそうに思う。そんな夢とは無縁の私でもみち代の「どうやって諦めたらいいの???」には泣けた。義美くんも応援したくなった。みち代のモト彼氏で俳優を諦め、今は介護施設職員の松尾くん(岡田義徳)も凄くいい人で、元彼、元彼女の微妙な関係が面白かった。みち代に先んじてプロデビューできそうなときのマツモトキヨコ(山田真歩)も、二人の間の優越感やら嫉妬やらの微妙な空気が可笑しかった。他にも真面目そうな映画監督、26歳の監督、中華料理店のワンさん、金券ショップの同僚などアクセントとなる人物がいるので本作が愛しくなる。夢に向かって頑張るも良し、諦めて新たな一歩を踏み出すも良し。人生の小さな応援歌として楽しめる作品だ。

監督:吉田恵輔
(2013/11/20 TOHOシネマズ高知2)