作家の性『風立ちぬ』

町山智浩が映画『風立ちぬ』を語る←youtubeです。25分くらい。始めの方は、それほどでもないけれど、ものを作る人はどんなに危険な状況でも妄想をやめないという「妄想族」のあたりから面白いと思いました。

町山智浩さんの『風立ちぬ』の解説が深かったので書き起こしました。←上記のラジオ番組を2ページにわたって書き起こしてくれています。そのうえ、話題にのぼったユンカース博士、ゾルゲ、オッペンハイマー(原爆を作ったけれど使用には反対した人)などの写真を貼り付けていたり、町山さんが「二郎と菜緒子が療養より二人でいることを選んだ心の内は、軽井沢で合唱する「ただ一度だけ」の歌詞が語り尽くしている。」と言えば、youtubeの「ただ一度の(ドイツ映画 会議は踊る、より)」へリンクしたりと至れり尽くせりです。

『風立ちぬ』の中で「10年間、全力で頑張れ(力を尽くせるのは10年だけだ)」というようなセリフがあって、それを聞いたとき宮崎駿監督は10年以上頑張っているのにおかしいなと思ったのです。それと、名作を連発する映画監督の黄金期というものがあるとして、黄金期って10年くらいなのかしらとも思ったのです。ちょっと引っかかるセリフだったわけですが、宮崎監督の「今度は本気、引退宣言。」を聞いて腑に落ちました。

うえの町山智浩さんの解説を聞いて、『風立ちぬ』は何を見ても聞いても、寝ても覚めても創作のことを考えてしまう作家の性(罪深さのようなものも含めて)を描いた作品でもあったと教えられたわけですが、宮崎監督はそういう性のようなものがイヤになったわけではなくて、年齢的に集中力が持続しなくなったから長編アニメから引退するとのことです。ということは、ジャッキー・チェンと同じだと考えればいいわけですね。ジャッキーもアクションを完全に封印したわけではないものね。

『風立ちぬ』から脱線して、こぼした町山さんのお話、今のほとんどの日本映画は外国では通用しないというのに、あ痛多々でした。こんな風にちゃんと批評しながらも面白い映画評論家って近年あまりお目に掛からなかったので、もっと淀川さんくらい表に出てほしいなーと思ったことでした。

一昨日が処暑らしいけど

2013残暑お見舞い

ところによって降りすぎたり、降らなさすぎたりで、うまくいかないものですね。こちらは日照りが続いておりましたが、昨日今日とようやくのお湿りで、エアコンのない私の部屋でも扇風機で何とかしのげて、一月ぶりにホームページの更新ができました。
映画は精力的に(?)見ておりまして、6月から感想がたまる一方。かるかん率100%を達成できるでしょうか!?

DVDも見たので感想~。
『空飛ぶゆうれい船』、オープニングが素晴らしい!後半少し失速するけど、それまでは「わくわくドキドキ、次はどうなる!?」という冒険もの。7月の上映を見逃して本当に残念でした。
『ディスタービア』、やっぱりシャイア・ラブーフ君が好き好き~。可愛いな~。追っかけますよ~(笑)。
実るほど頭を垂れる稲穂かな。いくら勉強ができても実ってないから周りの大人がバカに見えて仕方ない。『17歳の肖像』、若さってこういうものですよねぇ。失敗を悟ってからの主人公(キャリー・マリガン)は本当に賢かったなぁ。キャラクターでは、主人公が婚約したと知って相棒と絶交する泥棒さん(ドミニク・クーパー)が好き。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、これは是非スクリーンで観たいスケール感と映像美。お話も「狂」を描いて面白かった!金儲けも汗水たらして働いているうちは良かったけれど、「足を知る」ことがなければいずれは血を見るということでしょうか。主人公(ダニエル・デイ・ルイス)と資本主義社会が妙に重なります。
『エスター』、めっちゃこわくて、パソコンの画面(ウィンドウ)を小さくしてみました(笑)。子どもがあんな風に・・・というのは、後味悪い~。オカルトと思って観ていたら、あららビックリの正体。異形の者の哀しさにあと一歩でした。
『マイ・ブラザー』、ナタリー・ポートマン、ジェイク・ギレンホール、トビー・マグワイアで『ある愛の風景』のリメイクとくれば観たいよね~。トビー・マグワイア(のギョロ目)が怖かった~。

終戦のエンペラー

う~ん、確かに初めて知ったこともたくさんあったけれど、歴史の新解釈があるわけでもなく、なぜ、天皇が東京裁判を免れたのかはおおよそ聞いていたし、何だか物足りなかった。この作品は日本人よりも、日本人に感心のある外国人の方が面白く観られるのではないだろうか。というのも日本独特の文化であろう「空気を読む」とか「慮る」などが上手く描かれていたと思うからだ。そういう国では、以心伝心など良いこともあるが、責任があいまいになるなど悪いこともある。「空気を読む」とか「忖度する」には物的証拠が残らないから、裁判などで責任者への追求が難しくなるのではないか。今の問題として響いてくるところはあった。

[追記]
空気を読んで色んなことを自粛、自主規制するのも良くないなぁ。空気を読むより先を読めと思う今日この頃。

フェラーズ准将(マシュー・フォックス)/マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)/アヤ(初音映莉子)/高橋(羽田昌義)

EMPEROR
監督:ピーター・ウェーバー
(2013/07/31 TOHOシネマズ高知3)

合衆国最後の日

1977年の作品だが1981年のアメリカ、モンタナ州のミサイル基地、軍司令部、ホワイトハウスの三ヶ所が主な舞台。画面を分割して同時進行していることを一気に見せたり、カットの間がゆったりしていて全体的に懐かしい昔の映画~っていう感じ。
刑務所から脱走した元軍人デル(バート・ランカスター)らがミサイル基地を乗っ取り、核爆弾の発射との交換条件に秘密文書の公開と現金及び人質として大統領(チャールズ・ダーニング)を要求。娯楽映画としては先は読めるので面白さ半減・・・・と思いきや、どうしてどうして、なかなかに骨があり、現在進行中の(アメリカ当局が世界中の一般市民の通信まで収集・分析していた内幕を元NSA職員のスノーデンさんが暴露した)事件を彷彿させられたばかりか、権力の構造という点で今にも通じる話で面白かった。

ソ連に対して徹底抗戦する構えで、大勢の兵士を犠牲にしてもよしとして戦争を始め長引かせた前政権の意志決定がデルによって断罪されている。デルはアメリカ国民のために、その議事録を公開せよと言っており、誠実な(庶民派?)大統領に期待を寄せている。前政権のしたことだから現大統領はその事実を公表したい。しかし、他の首脳陣は公開すると国民の信用をなくすから、公開できないと言う。要するに政権維持のため公開できないと言うことだろう。この映画が作られた当時は、アメリカは反共だったわけだが、今は反テロだ。反共も反テロもその黒幕は越後屋だろうと私は思っているので、越後屋の息の掛かった首脳陣という風にしていたら更に面白かった。それでも、最高権力者の大統領でさえ意のままにならない現実があることを悲劇的に描いたことによって、組織の中の個人(多勢に無勢)の弱さや、黒幕的な存在を感じさせられる作りになっていた。

マッケンジー将軍(リチャード・ウィドマーク)/脱獄囚仲間パウエル(ポール・ウィンフィールド)

TWILIGHT’S LAST GLEAMING
NUCLEAR COUNTDOWN
DAS ULTIMATUM[西ドイツ]
監督:ロバート・アルドリッチ
(2013/08/03 あたご劇場)