「エロ事師たち」より 人類学入門

性の賛歌は生の賛歌。人類学入門にエロは必須という、今村監督らしい喜劇だった。
1966年の作品だけど古びてなくて、この感覚は今でも通用する新しさだ。8ミリフィルムの映写に始まり8ミリに閉じて終わる、スクリーン中スクリーンの入れ子細工になっているので、今回は緒方義元:通称スブやん(小沢昭一)というエロ事師について描いたが、他にもエロ事師はおるで~といった感じが伝わってくる。これ一作の中にスブやんだけでなく、たくさんのエロな人々がいたのに、他にもおるで~となると、もう世の中、エロ人だらけだ(笑)。
また、松田春(坂本スミ子)の亡き夫の化身のような巨大な鮒が、あるときはスクリーンを浮遊し、またあるときは占領し、何ともコミカル、かつ、シュールだった。

幸一(近藤正臣)/ケイコ(松田恵子)

監督:今村昌平
(2013/07/05 あたご劇場)

ライジング・ドラゴン

おもしろかった!!!ジャッキー・チェン本人が最後のアクション大作と言っていたこの作品、本当に「やりきった!」という感じだった。
冒頭のアクション、サイコー!体中にローラーを付けまくり、坂道カーブなんのその、走行中の車の下を滑り抜け、忍者のごとくトンネルの壁を伝う。スピード感満点。可笑しくてドキドキしてワクワクした。人間ローラーブレードとは、よくこんなアイディアが閃いたなぁ。
中盤の無人島コメディも可笑しかった。オール・ロケーション撮影が多い昨今、なつかしのスタジオ撮影のにおいがして、可笑しさ倍増だった。
最後の空飛ぶJCには、ここまでやるかと思ったし、活火山の斜面に墜落して猛スピードで転げ落ちていくシーンでは、JC死んだ、マジ?と本気で心配した。よれよれで立ち上がったときの悲愴な眉と真っ赤な目と血を吐きそうな口元が忘れられない・・・・が、(ジャッキーの映画ではおなじみ)ラスト・クレジットで撮影風景を見せてもらってホッとした。すごい演技力だなぁとも思った。

お話は、国宝はその国のもの、もとの国に帰しましょうというもの。また、JCが妻の元に帰る話でもある。それに何よりも悪役がいない!敵対して格闘しても最後にはお互いを讃え合う形で終わっている。ジャッキーの妻と出演者仲間に対する感謝の気持ちを感じた。
封印したわけではないので、今後もちょこちょこ生身のアクションを見せてくれると思うけど、こういう「やりきった」感じのは本当に最後かも。そう思うと、思わず「ジャッキー、ありがとう。」と涙がにじんできたことだった。

JC(ジャッキー・チェン)/サイモン(クォン・サンウ)/ボニー(ジャン・ランシン)/ココ(ヤオ・シントン)/キャサリン(ローラ・ワイスベッカー)/ハゲタカ(アラー・サフィ)/ローレンス(オリヴァー・プラット)

十二生肖
CHINESE ZODIAC
監督:ジャッキー・チェン
(2013/04/17 TOHOシネマズ高知7)

真夏の方程式

おお~、泣かせるねぇ。面白かった。
どちらの殺人も唐突に見えてしまうけど、よく考えて殺すってことは、あまりないだろうから、こんなものなのかな。
ネタバレになってしまうけど『あの日、欲望の大地で』とかを見ても罪は法律に基づいて償う方が真犯人の精神衛生上はよいと思う。『麒麟の翼~劇場版・新参者~』でも真犯人を見逃してロクなことはなかった。『真夏の方程式』でもある人物の人生がねじ曲がってしまうのが可哀想だ。そうすると真実を求め、自分の気持ちに正直に生きている湯川博士(福山雅治)なんかは、罪悪感などあまり感じることなく幸せに生きられるのかも。
俳優はみんなよかたけど、特に杏ちゃんがよかった!(君は夏目雅子か!と思った。いやいや、夏目雅子抜きで本当にとてもよかった!)

[追記]
湯川博士が良いことを言っていた。
川畑成美(杏)は、美しい玻璃ヶ浦を守りたいので海底資源の調査に反対していた。湯川博士は、賛成するにせよ反対するにせよ正しい情報をすべて知ったうえでの選択が大切だと言う。また、ある人物の人生がねじ曲がってしまうことが懸念されるが、湯川博士はその人物にすべてを話せと言う。本当のことを知ったればこそ人生が選べると。「知らぬが仏」ですめばよいが、「一知半解」で判断を誤るな。これは東日本大震災と福島第一原発の事故が影響を及ぼした作品だと思った。

川畑節子(風吹ジュン)/川畑重治(前田吟)/仙波(白龍)/恭平(山﨑光)/塚原(塩見三省)

監督:西谷弘
(2013/06/30 TOHOシネマズ高知7)

塀の中のジュリアス・シーザー

お見事!
人物の顔の表情や身体全体を使った表現が力強く迫ってくる。刑務所内の様々な場所で工夫されて撮影されている。「戯曲『ジュリアス・シーザー』を演じる囚人」を演じる囚人というふうに見えるのが刺激的。16世紀にイングランドで書かれた紀元前のローマを舞台にした戯曲が、今を生きる囚人たちの体験してきたこととかぶるとは、人間の営みの普遍性を感じる。いろんな意味で人間を感じさせてくれる作品だった。また、『グッドモーニング・バビロン!』でイタリアの兄弟職人がハリウッドで巨大セットや装飾品を作りながら、「俺たちはミケランジェロやダ・ヴィンチの子孫だ」と言っていたのを思い出した。

ブルータス(サルヴァトーレ・ストリアーノ)/シーザー(ジョヴァンニ・アルクーリ)/カシアス(コジーモ・レーガ)/ファビオ(ファビオ・カヴァッリ)

CESARE DEVE MORIRE
CAESAR MUST DIE
監督:パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ
(とさりゅう・ピクチャーズ 2013/06/27 高知県立美術館ホール)