東ベルリンから来た女

う~ん、なんか私にはイマイチだった。よくわからない。居眠りしたからかも(^_^;。期待していたのでとても残念。
登場人物は多くを語らないが、筋立てはシンプルでわかりやすい。バルバラ(ニーナ・ホス)は、西側に恋人がいるから亡命しようとしていたけれど、1回失敗しているからベルリンから鄙びた町へ左遷され、シュタージの監視下にあって息がつまるような生活を強いられている。そうするとなおさら、東側にいることが耐えられないだろう。それでも医師として仕事は全うしたいと思っている。上司(?)のアンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)は、彼女の様子をシュタージに報告しているだろうな、彼女もそのことはわかっているだろうな~。アンドレの送る秋波(?)にちょっと揺らいだかもしれないけど、彼は彼女のタイプじゃないしね~。
作業所を何度も逃亡したステラ(ヤスナ・フリッツィ・バウアー)になぜ、あれほど肩入れするか。バルバラも作業所出身かと思ってみた。そうでなくても、ステラを逃がしたことには違和感を感じなかった。ステラを救うにはそれしかないし、バルバラは医師だ。ステラを逃がしたカドで逮捕されるだろうけど、バルバラならステラを逃がすことに迷いはなかっただろう。

ほとんと感慨もなく見終わったのはアンドレがいたからかもしれない。医療ミスをした過去があり昇進は望めず望まず、監視社会の一員として嫌なこともあるし、自由に絵画も観に行けないが、医師の仕事を全うし、患者から感謝されることもあり、庭付きの家に住み、自ら調理する。侘びしいけれど、それはそれでいいんじゃないと。私にはバルバラの恋人よりアンドレの方が魅力的だったので、こっちにしとけば~と思っていたのだった。

BARBARA
監督:クリスティアン・ペツォールト
(シネマ・サンライズ 2013/06/25 高知県立美術館ホール)

モスクワ・フィルハーモニー交響楽団

マリインスキーやボリショイのバレエ公演で、ロシアの楽団は音が大きいとは思っていたけれど、これほどとは(笑)。
オードブル的「ルスランとリュドミラ」序曲は、まだほんの序の口だった。音の大きさより速いねーと(笑)。速く弾く曲なんだろうけど。実は思ったより音が小さくて席がよくなかったのかしらと思ったくらいだった。

清塚信也
ピアノ協奏曲は、『さよなら、ドビュッシー』で好演していた清塚信也が臙脂色のスーツで登場。「やぁやぁ、どうもどうも」という乗りでヤンキーとも吉本新喜劇とも取れるような感じだ。(←要するに横山やすし!)椅子が低かったらしく、長いこと調節している間にも客席に向かって「どもども、ちょっと(スンマセン)」みたいな気遣いをしていて、明らかにこれまで見てきたクラシックの人種と違う(笑)。クラシックと言ったって音楽でしょう、楽しくやりましょうというクラシックに囚われない姿勢を感じた。それは演奏にも現れていて、聴きながら「面白いとしか言いようがない」と思っていた。ジャズっぽいと感じたところがあったし、オーケストラと合ってないというか「オケの人やりにくいんじゃ・・・」と感じたところも2カ所くらいあったが、それで破綻しているわけではない。オケと一体となるところも掛け合うところもちゃんとあり聴き応えがあるのだ。終わったらブラボーの声がいくつもあがった。
アンコールが、これまたビックリで、ジャズが始まったかと思ったらさにあらず。何十曲ものクラシックの名曲のサビの部分を次から次へと違和感なくつないで行き(中にはミッキー・マウスのマーチもあった)、ところどころでお客さんから笑い声がもれ(何せ聞いたことあるばかりの曲)、今さっき聴いたばかりのピアノ協奏曲のフレーズに掛かったときには私も思わず声をあげて笑ってしまった。この日、もらったチラシに「清塚信也ピアノリサイタル【K’z Piano Show 2013】笑得るクラシック」があったが、確かにこの人のコンサートは笑えるに違いない。
休憩時間にSさんを見つけて話しかけたらユニークだと連発していた。アンコールの曲について、ああいう曲があるのかとたずねると彼が自分でアレンジしたのだろう、ジャズが好きなのではとのことだった。協奏曲の本編でもジャズっぽいところがあったというと、独奏の部分は演者の好きに弾いてよいとのことだった。Sさんは前から県民文化ホールのピアノは、新規の際に弾き込んでないから音が悪いと言っていたのだが、この日も「季節が(湿気の多い)今でしょう、あれだけ弾いても音が(鳴らない)。可哀想ですね。」とピアノが可哀想と繰り返していた。

本気を出したラッパ系
プログラム最後の交響曲。なんか、まるごと聞いたことある~。いったいどこで聞いたのだろう。それはともかく、ラッパ系、笛系が凄かった。茹でダコのように真っ赤になっているのが二階席からでもわかる。クラシックって思い出したように主題を繰り返す。1回目では唯々凄いと思ったが、2回目は何だか可笑しくなって笑いかけた。でも、3回目以降は、これだからオーケストラは苦手なのだよ(室内楽が好き)と、ラッパ系の人の血管より自分の頭痛が心配になってきた。しかし、交響曲とはよくしたもので、第2楽章(ゆったり~)、第3楽章(ピチカート、ピチカート(^o^))と雷の後の慈雨(また雨か(笑))みたいな救いがあって助かった。
それにしても管楽器が、これほど前面に出るとオケとしてのバランスはどうなんだろう?そう思っていたら、アンコールはチェロやバイオリンの独奏があったりで弦楽器が気持ちよく、ここでバランスを取ったか(笑)という感じだった。
全体として、バレエにしてもオーケストラにしても私はロシアの垢抜けなさというか、土着的(三枚目的)なところが好きだと改めて思った。


指揮:ユーリ・シーモノフ
ピアノ:清塚信也

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23
 --ピアノ・アンコール--
名曲サビ・メドレー
 ----休   憩----
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調Op.36
 ----アンコール----
チャイコフスキー:弦楽カルテット曲 アンダンテ
チャイコフスキー:「白鳥の湖」より ロシア舞曲
チャイコフスキー:「眠れる森の美女」より ワルツ

(2013/06/25 県民文化ホール・オレンジ)

月の下まで

高知県黒潮町を舞台に、漁師の明神勝雄(那波隆史)が、知的障害のある息子雄介(松澤匠)を抱えた心の葛藤を描いた佳作。この葛藤にリアリティがあった。もっともリアルだったのは溺れかけた雄輔を見る勝雄の表情。何を思っているのかハッキリわかったし、こういう感情は現実にあるので怖かった。

主演の二人を初めて知ったが、日本には良い俳優がたくさんいるのだなぁ。那波さん、カッコイイ・・・・。地味だけど。松澤さん、演技とは思えなかった。他の俳優も地味さ加減を含めて地元の人に見えた。

奥村監督の初監督作品で当地に縁もあるので、よくわかってない私の恥をさらすことになるかもしれないけど;;;、「?」と思ったところを記しておこう。監督の目に触れて今後の参考になればいいな。
ファーストカット、水平線が斜めで船に乗っている感じがよかった。漁師さんの唄をバックに島に近づいていくところ、出演者の名前が始め左、その後右に表示されるのはバランスもよくて、映画の出だしとしてつかみはオッケーと思った。ただし、鳥居前でのお参りがどう話につながっているのか今一不明。勝雄が船を新造したと言っていたので、そのお祝いだったのかな?
大漁で打ち上げたあと、港で夕焼け(朝焼け?)のきれいなシーンがあって、帰宅したら母がご飯を食べているシーン。夕焼け港→打ち上げ→帰宅の順番だったかな?その順番ならイイかもしれないけど、打ち上げが夜かと思ったので、その後夕焼けで帰宅したら深夜?そんな感じで時間の流れがよくわからなくなった。←集中力を欠いていたのかも;;;。
ご近所さんに暴力を振るって入れられた留置場で夢を見て、泣きながら目をさまし、漁師仲間(←この人もよかった)の迎えで家まで送ってもらい、雄介を目にするという流れがとてもよかった。この流れで感動できた。
恵理(富田理生)を両親が見送るシーン。父親は勝雄に殴られてボコボコのはずなのに・・・と思ってしまった。よく考えたら、お祭りから半年くらい経っているのかな?時間の経過がよくわからなかった。
それと笑えるシーンが二つ三つあれば、一つの作品としてほぼ完璧と思った。『スイート・シックスティーン』だったと思うけど、ケン・ローチ監督が16才の少年の生活をリアルに描こうと思ったら笑えるシーンが必要、現実に笑っているからと言っていたように思う。その他の作品でも必ずユーモアがあって笑える。観客の気持ちもほぐれるし、よりリアルになるし、笑いは一石二鳥だ。「勝雄(まさお)=かつお」というのには、ちょっと受けたよ。

監督:奥村盛人
配給:シネフォリア/配給協力:ユーロスペース
(2013/06/22 TOHOシネマズ高知5)

屋根裏部屋のマリアたち

フランスらしいな~(^o^)。

ゆで卵 3分半で 恋に落ち
屋根裏と 結ぶ階段 虹色に
あこがれの ああエスパーニャ エスパーニャ

スペイン内戦後のフランコ政権下、フランスに出稼ぎに来ていたのか~とか。
資産家ジャン=ルイ(ファブリス・ルキーニ)のキャラクター、いいよね~とか。でも、資産家同士の間では宇宙人視されているかも風な(^m^)。
妻シュザンヌ(サンドリーヌ・キベルラン)も我が世の春を楽しむ夫が正しいのかもと聡明なところがあり~の。
マリア(ナタリア・ベルベケ)もゆくゆくは肝っ玉母ちゃんになるでしょーとか(無責任)。
いまなぜ、1960年代の資産家と出稼ぎお手伝いさんたちの話かというと、現在、グローバル経済の利ざやで稼ぐ人あれば汗水たらして働いても貧しいままの人ありというのは、日本ほどじゃないにしてもフランスでもあると思われ(よくわからないけど)、それを60年代のジャン=ルイやマリアたちに重ね合わせ、助け合いと恋で解決じゃないですか~と(笑)、そんな風に気楽に見え~の(笑)。
銘々が自立し、銘々を大事にし、銘々の幸せを実現しようとする個人主義の国なれど、個人主義は利己主義とは異なり、けっこう人と助け合い、もつれ合う。もつれ合いの国フランス。もつれ合いには体力気力がいるけれど、この映画はジャン=ルイのキャラクターもあり、ひょうひょうと楽しめてとてもよかった。

LES FEMMES DU 6EME ETAGE
監督:フィリップ・ル・ゲ
(市民映画会 2013/06/22 かるぽーと)