踊る人形

遅かりし、ホームズ。依頼人、死す。
ガックリきたホームズの姿を数行分拝める。
それと、英語ではアルファベットの中でもっともよく使われるのがEというのをこの短編で知った。というのは割とどうでもよくて、私がこの短編を好きなのは別に理由がある。

踊る人形は、シカゴのギャングが通信に使っていた暗号なんだけれど、その暗号文が私の元にも届いたのだ。今から36,7年前の話だ。その頃私は中学生~(笑)。ホームズ好きの友だちからホームズ好きのワタクシへ。もちろん、私は嬉々として新潮文庫を片手に暗号を解いた。残念ながら内容を忘れてしまったが、踊る人形とアルファベットの対照表を作って暗号文を作ったこと、ローマ字で暗号文を作るにしても五十音全てが使えるほど踊る人形がそろってないので苦労したこと、友だちから聞いたそんな話は覚えている。

ホームズ好きの常として(?)私もMr.スポック(レナード・ニモイ)が好きで、中指と薬指の間を開け他の指をそろえるバルカン星人のあいさつ(バルカン・サリュート)が出来るように練習したくらいだ。(実は片眉を上げるのも練習した。)先の友だちはDr.マッコイ(デフォレスト・ケリー)が好きだったので、彼女がホームズ好きというのは私の思い込みだったのかもしれない。確かトニー・カーチスも好きだと言っていたように記憶しているが、私の中ではDr.マッコイとトニー・カーチスは似ているので、好みに一貫性があると思っていた。
そんなわけで、「踊る人形」というと、その頃のことが芋づる式に思い出される。

赤い季節

新井浩文と風吹ジュンが親子の役をやるというので観た。新井浩文がカッコイイのでビックリした。ちょっと目がハートになりかけたけど、踏みとどまった。というか、あまりにも演出と脚本がひどいので、ハートになりかかったのを邪魔された感じだ。なんでキリスト教???カメラを動かしたり、カットを刻んで人物をスキップさせたり、その場面に必要???カッコつけたカッコイイ映画を作りたかったのかもしれない。いやしかし、泉谷しげるの先輩が永瀬正敏なんだから、もしかしてコメディー?永瀬正敏は10年前に死んだ先輩ってことにはなってるんだけど(^_^;。キャスティングはともかく、俳優に救われていると思う。ツヨシ(新居延遼明)の無気力そうな身体と、虚無的に目の据わった感じもよかった。

監督:能野哲彦
(2012/11/10 TOHOシネマズ高知1)

北のカナリアたち

泣いた~(ToT)。えい話や~。
炭坑のカナリアみたいな話かと思ったら歌の方だった。
歌を忘れたカナリアを捨てるのは可哀想という話だった。
子どもたちが歌がうまくて!何曲か合唱してくれたんだけど、もっと聴きたかった!

この映画を観た後、吉永小百合の相手役(夫でも恋人でも)に適した男優がいるだろうかと暫く考えた。なかなか思いつかないので、いっそ、夫に死に別れた独り者をやってはどうだろう。お掃除おばちゃんか、レジうちと弁当屋の掛け持ちパートタイマーか。そして、理不尽な上司に仲間と直談判するのだ。とにかく体当たりが似合う。というか体当たりしか似合わない(?)。一目惚れした男性に猛アタックするのもいいかな。その男性は逃げまくるので、サユリストは信じられない思いで映画鑑賞(笑)。さて、その男性、誰がイイでしょう???

はる(吉永小百合)/夫(柴田恭兵)/信人(森山未來)/真奈美(満島ひかり)/直樹(勝地涼)/結花(宮崎あおい)/七重(小池栄子)/勇(松田龍平)/警官(仲村トオル)/はるの父(里見浩太朗)

監督:坂本順治
(2012/11/04 TOHOシネマズ高知6)

ギリシャ語通訳

ギリシャ語通訳メラス氏が、目隠しされた馬車でどこかの屋敷に連れて行かれ、顔中にばんそうこうを貼った男性の通訳をさせられる。男性は明らかに脅されており衰弱しきっていた。メラス氏は帰宅してからもこの男性が心配で、ホームズ(と言ってもシャーロックではなくマイクロフト)に相談する。そう、事件はどうでも、マイクロフト初登場の一編として楽しい。発表順に「緋色の研究」、「四つの署名」、「冒険」12編、「回想」8編と読んできた読者は、「なになに?ホームズの兄ちゃん?」と興味津々なのであった。

ワトソンの誇張した前振りも面白く、ホームズのことを「例外的異常人間」「心のない頭脳」「知能は抜群だが人情は欠陥者」で、女嫌いのうえに友だちをつくるのも嫌がり、子どもの頃や身内の話をしないから、てっきり孤児だと思っていたと言うのである。そりゃー、兄がいると聞いたら驚くわ(笑)。ベアリング=グールドによると知り合って7年も経つのにねぇ(^o^)。

で、マイクロフトも間違いなく変人で、「ロンドンでもっとも人づきあいが悪く、もっともクラブ嫌いの人間が入っている」ディオゲネス・クラブの創立発起人の一人なのだ。ディオゲネス・クラブの安楽椅子に新聞雑誌、おしゃべり無用の静かな空間は魅力的だと思う。お茶のサービスのある図書館か、ネットカフェみたいだ。
ディオゲネスは、樽の中の仙人として知られた哲学者ということを最近知った。子どもの頃読んだ偉人伝で、アレキサンダー大王に「何か願いはないか」とたずねられて、樽の中から「ひなたぼっこの邪魔なので、ちょっとのいてください」と言ったことで好きになったけれど、名前は忘れていた。どうやら変人の代名詞みたいで、マイクロフトも「変人クラブ」を創立するとは変人を自認していたのだなぁ(^m^)。

弟の方も変人は自認しているみたいで「芸術家の血統というものは、とかく変わった人間を生み出しがちなものだからね」と兄と自分のことを言っている。ホームズ本人の弁によると、先祖は代々地方の地主だったらしいが、彼の特別な能力は芸術家の血を引いているからだろうとのことで、祖母はフランスの画家ヴェルネの妹なのだそうな。ちなみに、オラース・ヴェルネをウィキで検索すると、ホームズが血縁だと主張していると書かれている(^_^;。

ホームズによれば、マイクロフトは「ぼく以上に同じ才能を持っている」が推理は趣味で、自宅と職場とクラブの軌道を外れたことがないし、マイクロフトによれば

「ホームズ家のエネルギーは全部シャーロックがひとり占めしてしまったんですよ」(東京図書、シャーロック・ホームズ全集第8巻P208、小池滋訳)

とのことだ。