「今作の世界は様々な世界が統一されたもの」というのは、読み返して自分でもわかりにくかった(^_^;。「世界で一番好きなおきく」というときの世界は「全世界」のことと言いたかった模様。
黒木華の口跡がめちゃくちゃ気持ちよくて、おきくが声を失ったことが残念至極だったけれど、おきく自身が損なわれることはなく、これまた気持ちよく可愛く、ナイスなキャラクターだった。
(2023/05/10 TOHOシネマズ高知3)
生きる LIVING
唯一知っているスクリーンサイズのスタンダードとオープニングの色調が時代を感じさせてくれる。丁寧に作られた作品だ。オリジナルに対するリスペクトも感じさせられる。黒澤明監督の『生きる』が若干上から目線な(?)圧があったのに対して優しい作品で、しかもビル・ナイ様が主演なのでとても好みだ。ビル・ナイ様が演じる課長さん(?)は、早くに妻を亡くし息子との意思疎通も控えめで内に悲しみを秘めているような感じだけれど、どこか可愛らしさとユーモアもある抑制の効いた(私の持っているイメージの)イギリス人らしいイギリス人でグッドなのだ(課長さんはスコットランド出身だそうだけど)。「ゴンドラの唄」は出てこないけれど、スコットランドの民謡「ナナカマドの木」が、公園で遊ぶ子どもたちのラストシーンにピッタリで名翻案だと思った。
もうこの年になると(あるいは色んな生き方があると多少知るようになると)、別に生き生きと生きられなくてもいいと思う。自分自身では、あまり欲がないから幸せだという気がする。ゾンビでも最期にがんばってちいさな満足感を得た課長さん、幸せだったよね。
(2023/04/15 TOHOシネマズ高知3)
フェイブルマンズ
(2023/03/04 TOHOシネマズ高知5)
エンパイア・オブ・ライト
ヒラリー(オリヴィア・コールマン)が、1回目に強制入院させられときはどんなだったのかわからないが、2回目の強制入院はあまりにも理不尽だと思った。『炎のランナー』のプレミアで突然舞台に上がって、従業員仲間をハラハラさせ観客をシラケと困惑に陥れただけでお迎えとは。ヒラリーは女性であるが故にどんどん自由を狭められ痛めつけられたという点で、山岸凉子さんの漫画「天人唐草」を彷彿させる人だ。極小の箱に押し込められたヒラリーのヒラリーらしさが弾けるときを、夜空に広がる花火や鳩が飛ぶ大きな窓ガラスからのながめなどで美しく描いたり、多数派とは少しずれている個性をドレスのファスナーが上げ切れてない悲しさで描いたり。プレミアは一番キメキメで行きたいところだったのに。
果たして、エンパイア・オブ・ライト(光の帝国=映画館)はヒラリーを救えるか。映画ファンとしては、サム・メンデス監督とともに「救える」と言いたいところ。従業員仲間は皆、いい人だし。従業員だと意外と観る暇はないかもしれないけれど(?)。
スティーブン(マイケル・ウォード)は、黒人であるが故に不自由な思いもあるが前途洋々。この頃、黒人だけでなく移民が排斥されていたことを『マイ・ビューティフル・ランドレット』などとともに思い出した。
残念ながらピーター・セラーズの『チャンス』は未見。
ベストワン候補。
(2023/02/28 TOHOシネマズ高知9)