ドローン・オブ・ウォー

『ダカタ』のアンドリュー・ニコル監督とイーサン・ホークのコンビ作。
これは問題作だ。作品の始末が悪い。100%のエンターテインメントとして作られた作品なら、地球の反対側で性的虐待を繰り返していた人物をアメリカ軍のドローンで攻撃し、溜飲を下げる主人公というのも「あり」かもしれない。しかし、閉鎖的空間で昼夜を問わず(昼夜がわからなくなる)無人機で爆撃し、目標以外の民間人を巻き添えにしたうえ、一体一体の成果を確認せねばならず、「あー、また戦闘機をかっ飛ばしたいよー」という望みは絶たれ、つらい任務のことは話せないし話したくないから妻も理解してくれず家庭は崩壊で「苦しいよー」という作品として作られているので、そんなことで溜飲を下げてもらっちゃ、困惑以外の何ものでもないのだ。善意に解釈すれば、「平気で私刑にして溜飲を下げる。アメリカ(人)の正義感なんて高々そんなもんよ(自嘲)。」という作品になるはずが失敗したのかもしれないが。

数年前、平和を希求するものは軍事を知らなくてはならないと気がついたが、その後、気がつく前と後で情報量がまったく変わらないままということにも気がついた。そこで本を読むでもなく映画に走るのがワタクシらしいところ、眉につばを付けながらでも『ドローン・オブ・ウォー』を見たかった。見てよかったのは、楽な殺人と思っていたドローン殺人が精神的に苦であるとわかったこと。どうやら、成果の確認が苦につながっているらしいこと。確認の必要がなければ楽なのか???

一応、どこまで事実か心当たりを検索したらあった。
スパイク通信員の軍事評論映画評『ドローン・オブ・ウォー』によると、この映画は無人機の操縦士は人手不足で米空軍がボーナスを増額したりして引き留めに躍起になっている事実を反映しているとある。また、成果の確認のために心的外傷を負う操縦士もいるようだ。(2015年当時の情報)

そして、誤爆関連で口直しの映画(^o^)
『イーグル・アイ』
(2019/04/07 DVD)

ロンドン、人生はじめます

大人の恋は手っ取り早くていいなぁ!ショートカットの連続だ(笑)。
特に感心したのは・・・・。→エミリー(ダイアン・キートン)がドナルド(ブレンダン・グリーソン)を自分の住まいに招待した後帰宅すると、彼女の誕生日のサプライズにご近所さんのみならず、彼女に対して下心ありの会計士(彼女の方も彼に対して別の下心があったのだけれど)も集まっていた。そこへ招待されたドナルドが意気揚々とやってきて、並んだエミリーと会計士を見て憤然と去って行く。この誤解を解くのに説明が簡潔、説明されると誤解もすぐ解ける。相性もあるのかもしれないが、長年世間と人を見てきた大人ならではのあうんの呼吸だと思った。

一番おどろいたのは、エミリーが「この家では暮らせない、もっとちゃんとしたところで暮らしましょう」と言うところ。ドナルドのあばら屋を素敵だと思っていたのは本心だし、裁判で所有権を獲得するのを応援していたし、ドナルドがこの家に愛着を持っているのはわかっているはずなのに。
しかし、考えてみるとエミリーの言うことは正しかった。彼女は自分がどんな人間か解っている。あばら屋で実際に暮らすまでもなく、暮らすとどういう結果が待ち受けているかわかっているのだ。

結末は実に清々しい。パートナーといっしょに暮らすのが最善としたら、エミリーとドナルドのように互いの家を行き来して暮らすというのは次善なのかもしれない。だけど、エミリーとドナルドにとっては、あの結末が最善だと思う。いろいろ経験を積んだうえに獲得したのが、新しい価値観=自分に最も適した暮らしというのは幸せなことだ。
(2019/04/20 あたご劇場)

鈴木家の嘘

モヤモヤ、ぐるぐるとした作品で晴れない。
長男(加瀬亮)の自死に残された両親(原日出子、岸部一徳)と妹(木竜麻生)が悶々とするのだから無理もない。叔母(岸本加世子)、叔父(大森南朋)なども出てきてコメディタッチにしているのだけれど、役者の好演でもっている感じだ。
長男よ、病気の自覚がなかったみたいだが、明らかに心の健康を損なっていたね。家族でも心医者でも宗教でも、他の解らない何かにでも独り言でも呪文でもいいから「助けてくれ」と唱え続けてほしかった。
父よ、お疲れさん。
妹よ、最後の最後であっても相手が亡くなっていても謝れてよかったよ。
母よ、包丁の使い道は、それしかないよねー。
(2019/04/18 あたご劇場)

バジュランギおじさんと、小さな迷子

ラストが圧巻。長いしスローモーションが多いし、何かまどろっこしさを感じていたのだったが、インド側からもパキスタン側からもたくさんの人が集まって来たことに感動。そして、「おじちゃーん!」というお約束の一声に女の子を抱き上げるバジュランギおじさんのストップモーションにやっぱり感動。
スケール、大きいねぇ。肉食べてビックリ、敵チームを応援していてビックリ。ビックリしても家に送ろうとするのが人情ってもんだ。人情に国境はない。わかりやすいねぇ。女装もあったねぇ。拷問も。言いたいことが明確で善なる方へ向かう娯楽映画は気持ちがよい。現実も万事、こう行きたいものだ。
(2019/04/18 メフィストフェレス2階 ゴトゴトシネマ)