嫌な映画だ。拷問に始まり虚しい涙で終わる。
人殺しを目的に、ターゲットの居場所を突きとめるため買収その他で情報を得ようとするが、身内に犠牲者が出たりなんだり、「なんだ、CIAの苦労話か」と気がつけば誠につまらない。苦労話なんて色々脚色があってこそ面白く聴けるものだ。ただし、目的を果たしたとき、そこにターゲット以外の人間が多数いたことなど想像もしてなかったので驚いた。ますますもって嫌な作戦である。
なぜ、お金を払って嫌な思いをしなければならないのか!?
そこで、少しはイイ思いもしようと頭を切り換える。
まず、やはりビグロー監督の演出力は大したものだと思う。ちょっと眠ったけど、それはご飯の後だったからであって、演出の冴えをおとしめるものではない。10年近い苦労話を3時間にまとめたのも偉いではないか。2時間にまとめたら、もっと偉かったというか、ありがたかったが。
それに主人公は、18才でリクルートされてCIAの分析官となり、この仕事に携わってメキメキと腕を上げ、支局長をビビらせ長官に一目置かれる存在になったのだ。成長物語としての面白さがある。実に嫌な成長ぶりではあるけれど。
また、彼女の物語として観ると、任務に加味された復讐の度合いはどれくらいだったかなど見所はあると思う。感情を抑制したり露わにしたり、血も涙もあるには違いなく、最後には涙をこぼす。仕事を完遂した安堵の涙にも見えるけれど、彼女に対する「ヒコーキ、貸し切りだから大物なんだね」「行き先はどこ?」というセリフからして、作り手は安堵の涙としては描いていないと思った。
マヤ(ジェシカ・チャステイン)/ジェシカ(ジェニファー・イーリー)/長官(ジェームズ・ガンドルフィーニ)/支局長(カイル・チャンドラー)
ZERO DARK THIRTY
監督:キャスリン・ビグロー
(2013/02/16 TOHOシネマズ高知2)