うひゃあ!これはイイ!
「エンジェルは誰だ!?」と思って観ているとビックリだった。また、スコット・グレンの登場にもビックリだった。
多くの娯楽映画は「後に残らぬ面白さ」で忘れ去られる運命だが、一寸の虫にも五分の魂というか、何か一つでも心に残るところがあると長く愛されるものだと思う。
この映画は私は三つの点で面白いと思った。一つは、妹を助けられなかったベイビードール(エミリー・ブラウニング)と妹を守ろうと必死だったスイートピー(アビー・コーニッシュ)のレスキュー関係。妹思いの二人にも泣けたし、スイートピーの妹ロケット(ジェナ・マローン)とベイビードールの決断にも泣けた。
もう一つは、衣装や美術、アクション面での視覚的な面白さ。セーラー服姿で武器を持ち、コンピューターゲームそのものの動きをくり広げる。甥がよくやっている対戦ゲームを後ろから覗いて面白いと思ったことはなかったが、これくらいのスケールでやられると、むちゃくちゃ面白い。始めの方では娼館もどきの妖しさを感じかけたけれど、全体的にエロティシズムはあまり感じられず。ゲームのビジュアル(CG?)に徹している。
おしまいの一つは、妄想への逃避というか、『未来世紀ブラジル』というか、入れ子細工の構造というか、そういうのが面白かった。
初めWB(ワーナーブラザーズ)の幕が上がって始まるのだから、この映画全体が物語であると宣言されたようなものだ。そして、この物語の終わりには「武器は全てそろった。闘って生き延びろ。」(だったかな?)とナレーションされるので、映画が終わると同時に観客自身の物語(の続き)が始まるという、なんかカッコイイ(?)締めになっている。
だから、物語の中のどこからどこまでが、主人公にとっての現実かは重要ではないと思う。でも、それを考えるのは楽しいので、種を蒔いておこうと思う。
ベイビードールはいつから妄想世界に入って行ったのか。(継父は本当に妹を殺したのか。)
初めから全て妄想だとしたら、ロボトミーを施術した医者が言ったこと「いままでの患者と違う表情だった」をどう解釈するか。
(最後の白いワンピース姿のスイートピーは、ベイビードールの妄想だと思う。)
SUCKER PUNCH 監督:ザック・スナイダー
(2011/04/23 TOHOシネマズ3)
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クレアモントホテル
青年が老人から人生を学ぶという話としても、老いたる者の心境を描いた話としても、なんだか弱い感じがして心を動かされるほどのものはなかったけれど、恋する老婦人の話として観るとかなり面白いと思う。
雨の中、転んでショックでなかなか立ち上がれないところ、さっそうと現れた王子様(というには私好みでないのが残念だけど)に助けられ、彼の部屋で一休み。見た目も結構いいし、繊細な心遣いが伝わってくるし、なかなか会いに来てくれない孫のデズモンドなんかよりずっといい(『東京物語』)。同じ年頃のおじいさんから求婚されても、やんわりと断るしかないけれど、彼とのデートなら心うきうき(でも、体力が~)。彼にお似合いの恋人ができて、なかなか会えなくなってフラストレーションがたまった様子に、「おお、ジェラシーか?」と観ている方は盛り上がる。
なんか、ちゃかして申し訳ない(^_^;。
でも、ミセス・パルフリー(ジョーン・プロウライト)とルードヴィック・メイヤー(ルパート・フレンド)を観ていると、年齢に関係なく「気が合う」というのは本当に得がたいよい関係だと思う。
ミセス・パルフリーが病床で、暗唱していた詩を思い出せないと哀しんだとき、ルードが出だしを暗唱して、ミセス・パルフリーがそれに続き、ふたりいっしょに暗唱するシーンが心に残る。ワーズワースとブレイクを知っていたら、もっと心に染みたかもしれない。
MRS PALFREY AT THE CLAREMONT 監督:ダン・アイアランド
(こうちコミュニティシネマ 2011/04/21 高知県立美術館ホール)
太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男
日本人の多くは、真面目に働いているし、職務を全うしようと頑張っていると思う。それは軍人も兵隊も同じなんだと、この映画を観て気がついた。玉砕も辞さずという心構えで、一人でも多くの敵を殺すという任務に忠実な大場大尉(竹野内豊)以下の兵隊たちを、かつての兵隊さんたちが観たら泣けてくるのではなかろうか。しかも、大場大尉は、サイパンに移住していた民間人を助けるという、本来の任務ではないけれど人道的には真っ当な選択をしているのだから、「関東軍は開拓植民を見捨てて逃げた」とか「沖縄戦で民間人に手榴弾を渡して自決を促した」とか言われるのを、自分が批判されたように感じていた元軍人さんがいたとしたら、心が解きほぐされる思いがするのではないだろうか。
だけど、任務に忠実というのは何のためだろう。すくなくとも、日本(家族や郷土)のためではないと思う。ルイス大尉(ショーン・マッゴーワン)が将棋の駒で説明していたのを観ると、作り手は天皇のためと言いたげである。そういうふうに教育されていたのだから、それはそうなんだろうとは思う。ただ、私には過労死するまで働く企業戦士と重なるところがある。なぜ、死ぬまで働くのか。そういうふうに働かされる状況というのがまずあって、それが一番の問題だとは思うけれど、与えられた仕事を全うしたいという真面目さも災いしているような気がするのだ。玉砕も自決も、日本人が真面目すぎたからっていうのもあるんじゃないだろうか。
それにしても大場大尉には痺れた。玉音放送後、ルイス大尉と面会するために林の中から表れた大場大尉のカッコよさ。足、長~。顔はやつれても、スタイル、抜群~。(そういえば、投降のため行進していく兵隊さんたち、皆、足が長かった。)って、ウソウソ。痺れたところはソコじゃなくて、投降後、ルイス大尉に問われて答えた中身。「私には計画も作戦もありませんでした。ただ夢中でした。」「私がこの島でしたことで、誉められるようなことは一つもありません。」ぬぬぬ、本心やなー!失ったものが大きすぎるということか(?)。
その他、よかったところ。
戦闘シーンの音響は凄まじく、肉弾戦には臨場感があった。
大場大尉が民間人を収容所へ送り出すときの言葉(涙)。「日本へ帰ったら私たちのことを思い出してください。思い出していただくことによって、私たちも日本に帰れます。」
青野(井上真央)の敵国人に対する憎しみが氷解するところ。自分と同業(命を救う職業)者に出会い、敵も自分たちと同じ人間なのだわかる。場面数わずかでセリフなし。省略が利いていた。
今朝松一等兵を唐沢寿明が快(怪)演。
(2011/04/04 TOHOシネマズ高知8)
ガリバー旅行記
予告編を見たときから映画向きの好企画だと思った。巨人と小人の対比は、視覚的に面白い。そのうえ、主人公のガリバーを愛嬌のあるジャック・ブラック(未来のアーネスト・ボーグナイン?)が演じるので一定の面白さは約束されているのだ。
『スター・ウォーズ』やら『タイタニック』やら、映画好きには楽しい小ネタが散らばっていたし、リリパット王国のつつましやかな姫様が、ガリバーの影響でウーマンリブっぽく開放的になっても、言葉遣いはどこまでも姫様っていうのがツボだった(笑)。
原作は、巨人や小人の国をとおして現実社会を皮肉っていたような気がするけど、この映画は「エンタメ王国アメリカばんざい」、「小心者よ勇気を出して正直に」、「歌って踊って戦争なしよ」と毒気なし。毒抜きの楽しいひととき、これもまた良し。オープニングのおもちゃみたいな町並み、よかったな~。
(2011/04/15 TOHOシネマズ高知9)