約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語

わははは!なんじゃこりゃぁ~!
変だとは思っていた。葡萄作りを指南する天使ぃ?と。どうして天使がぁ?と。
そうかそうか、天使(ギャスパー・ウリエル)は美味しい葡萄酒が飲みたくて、しがない農夫でありながら醸造家になるなどと宣言した葡萄酒バカのソブラン・ジョドー(ジェレミー・レニエ)を見込んだわけか。
そして、酸いも甘いも噛み分けた最晩年のソブランがものした葡萄酒を味わえたということは、愛するソブランを丸ごと(一生分)味わえたというわけで、めでたしめでたし、よかったね。
ただし、ソブランと天使が戯れるシーンには目が点になった。こんな展開、予期してなかった。天使の手術もどうしてーーーー?飛んでるなぁ!作り手がどういうつもりかわからないけれど、思い出すと可笑しい。
それにしても、この監督さん、女優の趣味がいいと思う。オーロラ(ベラ・ファーミガ)もセレスト(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)もビューティホー!異なる魅力で、ちょっとした眼福だった。(その調子でウリエル君をもっと気合いを入れて撮ってほしかったなー。)
この映画にワインの味わい方を指南されて、「よっしゃ、今後、けっしてガブ飲みすまい」と思ったことだったが、思ったとおりに行動するとは限らないのが人の常、お茶屋の常なのであった。
THE VINTNER’S LUCK 監督:ニキ・カーロ
(シネマ・サンライズ 2011/04/29 高知県立美術館ホール)

明日へ紡ぎつづけて

昔の若者は輝いていたのだなぁ。仲間というのは、人を元気にするのだなぁ。ってことと、戦後の労働運動史の概略をうまいことまとめてあるなぁと思った。
GHQが労働組合の組織化を推進したこともあり、それぞれの職場で勉強して組合を作り、「本当にこんなことから?」というような要求から始まって、8時間労働などを勝ち取り、別の組合であっても職場を越えて労働者(=若者)同士の交流などもあり、大きな広がりを持っていた運動が、巻き返されてアカ狩りされて(別に共産党員でなくても疑いを掛けられて仲間はずれにされるよう仕向けられるなど)労働者が分断されて、どんどん運動が小さくなってきた様子がよく伝わってきた。今現在運動をしている人たちは、生き生きしていると言ってもおじいさん、おばあさんだ(涙)。おしまいの方は、現在だから映像はクリアなのに、あんまり狭い世界の話になってきて、窮屈さを感じるくらい。昔の白黒の映像や写真の不鮮明さが茫洋とした労働運動を感じさせるのと対称的だ。まるで三角の旗のように先が細ってきた運動を体感させられる作りになっているのが映画的だと思った。
それにしても、紡績=絹=「ああ、野麦峠」の女工哀史と思っていた自分に喝。戦後は輸入綿だったのかぁ~。しかし、野麦峠の明治、大正ときて昭和の戦後まで労働条件は、あまり変わらなかったということか?だとしたら、GHQ様々だ。
戦後すぐの選挙は、毛筆で書いて投票していたのも印象に残った。
監督:山本洋子
(四国文映社 2011/04/29 自由民権記念館)

エンジェル・ウォーズ

うひゃあ!これはイイ!
「エンジェルは誰だ!?」と思って観ているとビックリだった。また、スコット・グレンの登場にもビックリだった。
多くの娯楽映画は「後に残らぬ面白さ」で忘れ去られる運命だが、一寸の虫にも五分の魂というか、何か一つでも心に残るところがあると長く愛されるものだと思う。
この映画は私は三つの点で面白いと思った。一つは、妹を助けられなかったベイビードール(エミリー・ブラウニング)と妹を守ろうと必死だったスイートピー(アビー・コーニッシュ)のレスキュー関係。妹思いの二人にも泣けたし、スイートピーの妹ロケット(ジェナ・マローン)とベイビードールの決断にも泣けた。
もう一つは、衣装や美術、アクション面での視覚的な面白さ。セーラー服姿で武器を持ち、コンピューターゲームそのものの動きをくり広げる。甥がよくやっている対戦ゲームを後ろから覗いて面白いと思ったことはなかったが、これくらいのスケールでやられると、むちゃくちゃ面白い。始めの方では娼館もどきの妖しさを感じかけたけれど、全体的にエロティシズムはあまり感じられず。ゲームのビジュアル(CG?)に徹している。
おしまいの一つは、妄想への逃避というか、『未来世紀ブラジル』というか、入れ子細工の構造というか、そういうのが面白かった。
初めWB(ワーナーブラザーズ)の幕が上がって始まるのだから、この映画全体が物語であると宣言されたようなものだ。そして、この物語の終わりには「武器は全てそろった。闘って生き延びろ。」(だったかな?)とナレーションされるので、映画が終わると同時に観客自身の物語(の続き)が始まるという、なんかカッコイイ(?)締めになっている。
だから、物語の中のどこからどこまでが、主人公にとっての現実かは重要ではないと思う。でも、それを考えるのは楽しいので、種を蒔いておこうと思う。
ベイビードールはいつから妄想世界に入って行ったのか。(継父は本当に妹を殺したのか。)
初めから全て妄想だとしたら、ロボトミーを施術した医者が言ったこと「いままでの患者と違う表情だった」をどう解釈するか。
(最後の白いワンピース姿のスイートピーは、ベイビードールの妄想だと思う。)
SUCKER PUNCH 監督:ザック・スナイダー
(2011/04/23 TOHOシネマズ3)

クレアモントホテル

青年が老人から人生を学ぶという話としても、老いたる者の心境を描いた話としても、なんだか弱い感じがして心を動かされるほどのものはなかったけれど、恋する老婦人の話として観るとかなり面白いと思う。
雨の中、転んでショックでなかなか立ち上がれないところ、さっそうと現れた王子様(というには私好みでないのが残念だけど)に助けられ、彼の部屋で一休み。見た目も結構いいし、繊細な心遣いが伝わってくるし、なかなか会いに来てくれない孫のデズモンドなんかよりずっといい(『東京物語』)。同じ年頃のおじいさんから求婚されても、やんわりと断るしかないけれど、彼とのデートなら心うきうき(でも、体力が~)。彼にお似合いの恋人ができて、なかなか会えなくなってフラストレーションがたまった様子に、「おお、ジェラシーか?」と観ている方は盛り上がる。
なんか、ちゃかして申し訳ない(^_^;。
でも、ミセス・パルフリー(ジョーン・プロウライト)とルードヴィック・メイヤー(ルパート・フレンド)を観ていると、年齢に関係なく「気が合う」というのは本当に得がたいよい関係だと思う。
ミセス・パルフリーが病床で、暗唱していた詩を思い出せないと哀しんだとき、ルードが出だしを暗唱して、ミセス・パルフリーがそれに続き、ふたりいっしょに暗唱するシーンが心に残る。ワーズワースとブレイクを知っていたら、もっと心に染みたかもしれない。
MRS PALFREY AT THE CLAREMONT 監督:ダン・アイアランド
(こうちコミュニティシネマ 2011/04/21 高知県立美術館ホール)