オン・ザ・ロック

ソフィア・コッポラ監督らしいコメディだ。面白さは中くらいな感じだったが、やっぱりセンスを感じる。この調子で等身大の随筆風作品を作り続けてほしい。

父の放蕩と浮気で苦しんでいる母を見ていた娘としては、父を嫌いな時期もあったが、二児の母となり四十路を前に大人の付き合いができるようになっている。(というか、父の言うことをちゃんと聴いてやって娘の方が大人らしい。夫の浮気疑惑を父に相談したのが間違い。)娘が夫婦円満で家内安全なら父親孝行ができるよというお話。どうしても監督自身の話のように感じてしまう(笑)。

ローラ(ラシダ・ジョーンズ)とその父フェリックス(ビル・マーレイ)が何かのパーティーに行ったとき、ローラに話しかけた女性が離れたところにいる人を指して「彼女は柔らかい岩を作っている」みたいなことを言わなかったっけ?on the rocks は座礁の意味があって、ローラが夫ディーン(マーロン・ウェイアンズ)の浮気を疑って結婚生活が暗礁に乗り上げたことを言うらしいんだけど。そんなこと言ってないかもしれないのに、「柔らかい岩」って何か関係があるのだろうかと考えてしまった。(このパーティーから抜け出すときに、親子であとずさりして行ったのが一番受けた(^Q^)。)

父といっしょに偵察しておきながら、浮気でなかったとわかり、おまけに夫と行き違いになったと知ったとき、父を(過去を含めて)大いに責めたローラ。そこまで父親のせいにすることが可笑しくもあり、フェリックスが気の毒でもあり(笑)。

ローラが、父からもらった時計を外して夫からの誕生日プレゼントを腕にはめて、めでたしめでたし。フェリックスの話によるとローラが父のモノから夫のモノになったってことになるけど、その考えがもう笑える感じ。父を捨てて夫を取ったと見えるもの。ラストは捨てたわけじゃないよというおまけ。
(2020/11/20 あたご劇場)

シェイクスピアの庭

最後に「これ、全部本当の話」と赤の大きな文字でバーンとクレジットされたとき、つい「うっそ~ん」とツッコミを入れてしまった。本当なら本当らしく、他のクレジットと同じ色と大きさの文字にすればいいのに、「ホンマやでー!」という気合いがケンちゃん(ケネス・ブラナー監督)らしい。と思っていたら、タイトル「ALL IS TRUE」だった(驚)。

グローブ座炎上を機に引退してストラットフォードアポンエイボンで庭仕事をしながら妻と暮らすはずの余生が紆余曲折ありで面白かった。
いちばん見応えがあったのは、サウサンプトン伯(イアン・マッケラン)とシェークスピア(ケネス・ブラナー)のやり取り(腹芸)。サウサンプトン伯がめっちゃカッコイイ!!!シェークスピアが萌えるのも無理はない。

夫が20年も単身赴任の妻のアン(アン・ハサウェイじゃないの?演じていたのはジュディ・デンチ。)も、跡継ぎを生むのを期待された二人の娘(次女は文学の才能があるのに認めてもらえないし)もつらいと思ったけれど、家族を養い財産を築いたことを自負し、跡継ぎを待望するシェイクスピアも普通の男性すぎてつらい。
引退したとは言っても詩人なら生涯書かずにいられなかったはず。俳優なら演じられずにいられなかったろうし、演出家なら村芝居でもなんでも催したくなったろうと思うが、何も残ってないとしたら庭仕事に嵌まったのかもしれない。
(2020/11/16 シネマサンライズ 高知県立美術館ホール)

劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

天狼よ鬼より怖い刃なり

弟の勧めがあり、アニメを無料動画配信で見た。続きが見たくなって劇場に行った。
笑いあり涙あり、相変わらずモノローグが多過ぎだけど、歌舞伎か大相撲みたいに力が入った!
煉獄さんも炭治郎も善逸も伊之助も無意識が表に出ている人たちで、こういう人たちを善人と言うのだろうなぁ。多分、私の無意識も見えている部分とあまり変わらないと思う。幸せなことだ。
鬼たちの無意識は見えている部分と違うのだろうなぁ。鬼舞辻無惨やお館様はどうなのか。魘夢は成仏したので、もう誰であれ無意識を見せてくれることはないだろうけど。

鬼殺隊は皆日本刀を使うのかと思ったら、日本刀ではない刃物を持っている柱もいるみたい。しかも鞘もなく剥き身だった。う~ん、もう少し刃物の扱いに気をつけてもらえまいか。よい刀は鞘に収まっているという名言もあることだし。
刃物はあくまでも道具であって怖いのは扱い方だ。このアニメはTVのときからマジ怖だが、劇場版ではますます恐ろしかった。ひぇ~ん;;;;(善逸風)。
刃物を使わず血清(?)で鬼を治療しようとする鬼のドクターと弟子がいたので期待。
(2020/11/13 TOHOシネマズ高知9)

おらおらでひとりいぐも

沖田修一監督作品と知って、母を誘うんじゃなかったと思ったが、もう約束していたから行った。やはり「わからんかった。まあ、年がいったら独りということよ。」と言う。
わからなかったと言っても、主人公が若いとき家出して東京で出会った夫に先立たれ、子どもも独立して独りになったことも、三人の男が主人公の心の声と言うことも、地球が生まれて人類にまで生命が受け継がれてきたから生きねばと主人公が思っていることも理解していた。要するに「わからんかったということは、面白うなかったということよ。」なのだそうだ。

桃子さん(田中裕子)は、若いときの桃子さん(蒼井優)と同じで違っている。(今桃子さんのゴキブリ殺しが傑作だった。)夫(東出昌大)に先立たれた寂しさを自由にしてくれたのだと合理化している。ものは考えよう。よく生きれるように考えればイイと思う。若桃子と今桃子とでは、今桃子に分がある。今桃子の方が生きているから。自分の道を行くとき、自分らしくあろうとするとき、生まれ育った土地の言葉は大切だと思う。もし、土佐弁禁止になったら息苦しい。

寝て起きて食べて医者へ行って図書館へ行って、たまに娘と孫が来て・・・・と高齢になると一日の行動パターンが六つぐらいで終わってしまうそうだが、大正琴、太極拳、卓球のうちもっとも活動的な卓球をすることにした桃子さん。見習いたいものだ。
(2020/11/12 TOHOシネマズ高知5)