しあわせの絵の具 愛を描く人モード・ルイス

美しいものを観た。主人公が死んだのに元気をもらえた。
とてもよいご夫婦だった。割れ鍋に綴じ蓋的なところが可笑しくも微笑ましく、おしまいには二人の関係にうれし涙だった。
モード(サリー・ホーキンス)が初めてエベレット(イーサン・ホーク)に会ったとき、彼がやさしい人だと私にもすぐにわかった。「飲み物をくださらない?」というのに、ちゃんと応えてくれたんだもん。

時代を感じたのは、結婚する前のモードの不自由さ。彼女は自分のことを自分で決めさせてもらえない。兄か伯母(叔母?)の言うことに従うしかない。自由なのは絵を描くときだけ。足が不自由そうだけど、ここまで制限されるとは他にも何かあるの???ガラスの心とか・・・・。プロローグでは息をするのも大変そうだったけど・・・・。としばらく構えていたけれど、足が不自由なだけだった。(後で先天性のリウマチで肺疾患にもかかったとわかる。)

イーサン・ホークは、こんな声だっけ?別人みたい。これまでにない役どころだった。
(2018/07/17 ウイークエンド・キネマM)

万引き家族

映像も愛情も美しかった。主演の男の子(祥太:城桧吏)の瞳も美しく魅せられた。全員が血のつながりがなかったことがわかり、家族って血じゃないと改めて思った。ただし、この家族のもろさも描かれていて、「絆」というより「つながり」だと思った。そして、「つながり」でいいじゃないかと思った。温もりのあるつながり、それで十分しあわせだ。

是枝監督はテレビでドキュメンタリー番組を制作していたそうで、ジャーナリスティックな面があるのでしょう。この映画でも近年の日本で起こった事件や事故が織り込まれている。ワーキングプアや労災隠し、年金受給のための亡きがら隠し、幼児虐待、自動車内に子どもだけを残して死なせてしまう、無戸籍で学校へ行けないなど。そういう社会問題を抜きにしてパルムドールはなかったろう。とてもよく出来た作品だと思うが、私は是枝監督作品とはつくづく肌が合わない。監督と素材との距離は常に一定で、素材に溺れることがない。泥臭いのはあまり好きではないが、もう少し泥が混じってもいいんじゃないの?面白くて良い作品が多いのに熱量が私には物足りないのだ。

それでも二つの点で是枝監督も私と同じ考えなのかと思った。一つは、万引きを見逃してきた雑貨屋のおやじさん(柄本明)。困窮を察しての見逃しは、助け合いの一つだ。そういう寛容さがまったくない世の中は、貧困をなくす制度を作るのもむずかしくなると思う。「妹にはさせるな」の一言で、見逃してきたことと万引きを是としているわけではないことを表す。(しぶしぶ見逃してきたことは、それまでのおじさんの表情が表している。)このような古き良き雑貨屋がなくなっていくのと、人々の寛容さが乏しくなっていくのは相関関係があるのだろうか。
もう一つは、祥太が乗っていた自動車のナンバーを模造実母(安藤サクラ)が控えていたこと。家族形成において血のつながりは、それほど大切ではないと思うが、子どもにとって生みの親の実在を知ることはアイデンティティーに関わる重要事項だと思う。会う会わないとか、どんな人物かは、どこの誰ということと比べたらどうでもよいので、子どものためを思うならそれがわかるようにしておいてほしい。

ラストシーンでゆり(佐々木みゆ)は何を見たのか。「万引き家族」の誰かがゆりに会いに来たわけではないと思うが、「家族」の誰か(おそらく祥太)が来たと思ったんだと思う。
(2018/06/10 TOHOシネマズ高知7)

ゲティ家の身代金

映像のリドリー・スコット健在。冒頭、孫ゲティ(チャーリー・プラマー)がこちらに近づいてくるその後ろを、エメラルドグリーンの路面電車が通り過ぎるのだが、「いいねイイネ!」と思った。孫ゲティが逃げ回るクライマックスといい、冒頭といい、匂うような夜のシーンだった。

誘拐された息子を救出しようとする母(ミッシェル・ウィリアムズ)の奮闘は当然として、祖父ゲティ(クリストファー・プラマー)のケチぶりはなかなかのもの。まあ、こういう人もいるだろうなと、あまり驚きもしなかった。
驚いたのは孫ゲティの身柄と身代金の交渉権(?)を引き継いだ組織。誘拐も皆でやれば怖くないというか。坊ちゃんには何の恨みもございませんが、町の仕事なので・・・・みたいな(^_^;。
お金はあっても誰ともつながらない富豪と、お金でつながる町のみんな。普通の母子はふっとんでしまった。
(2018/05/26 TOHOシネマズ高知5)

ざっくり感想

ピーター・ラビット


めっっちゃ、笑った!笑いって間だね。
ピーターのいとこのベンジャミンが慎重派で好きなキャラクターだったが、いっしょに観た友だちによると、原作ではベンジャミンの方が無茶をして、ピーターは臆病で慎重なんだとか。道理で原作の絵のイメージと違っていた。>本作のピーター
(2018/05/20 TOHOシネマズ高知8)

犬ヶ島


面白い!ウェス・アンダーソンらしい(^_^)。自分の好きなものをこういう風に作品に出来るなんて、素晴らしい才能だ。
そろりそろりと映画は進むのに、あまりにも隅から隅まで作り込んでいるので、色々見逃したような気がするのであった。
(2018/06/02 TOHOシネマズ高知8)

妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3


今回は、夫の理不尽な言葉に傷ついた妻が家出するお話。このシリーズは、一言で言うと古くさい。しかし、かび臭くはなく、ピカピカしている。ことあるごとに家族会議を開いたりの悲喜こもごも(毎回全員にうな重の出前というのも含めて)、今や一周回って理想の家族となっているのではないか。一貫して家族を描いてきた山田洋次監督だが、現代日本の家族は様々な形があり、この一家では描ききれない。
(2018/06/03 TOHOシネマズ高知5)

ドリーム


これぞ、アメリカ映画。
トイレ問題をとおして強く感じたこと。
声をあげなければ、変わらない。他人の足を踏んでいても、踏んでいる方は気づかない。
トップは肝心。リーダーが変われば組織は変わる。
(市民映画会 2018/06/23 かるぽーと)

人生はシネマティック!


不覚。もう半年以上も、平均睡眠時間が5時間半のため(かどうか)、面白い映画でも寝てしまう(涙)。ビル・ナイ様でも寝てしまう(涙×涙)。素敵なメガネ男子が出てたのに。
女性やら老人やら、色々な要素があったように思うが、一番感じたのはエンタメの本質。「戦意高揚のプロパガンダ映画は悪」という偏見があったが、生きるのに疲れたとき、慰めや励ましが必要ではないか、戦争中は特に疲れるわけだからプロパガンダであろうとエンタメは必要。戦争をする・しないは、理性で考えるしかない。
(市民映画会 2018/06/23 かるぽーと)