やはりタランティーノ監督作品は俳優の魅力が5割り増しだ。俳優は生き生き艶々。デニス・クリストファーだけ見せ場がなかったような気がするけど、それでも艶を感じるのは贔屓目か(笑)。
ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)とキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)のコンビはもちろんよかったけれど、目を見張ったのはカルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)とスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)のコンビだ。スティーブンは名誉白人的な地位にあるのみならず、カルビンと二人きりになったときの態度は主従逆転にも見えるではないか。実際カルビンも彼を頼りにしているのだ。
スティーブンは、この映画のキーパーソンだと思う。キャンディ家で重用されているのだから逃げる必要がない。黒人なのに黒人を見下し、自分の支配下に置いている。そこまで白人に取り入ること、そうすることが彼の生きのびる道だった。自分が黒人であることを否定する道を行く。これが本当の奴隷根性と言うものだろう。本当は杖などなくても歩けるのに、長い間、他人も自らも偽ってきた。その報いがジャンゴの銃弾だったのだろう。
杖は彼の心を縛る鎖だったと言えるかもしれないし、カルビンを息子のように思っていただろうから、カルビンが銃弾に倒れたときの嘆きは本物だと思う。だから私はスティーブンを見ていると可哀想な気がするのだが、マカロニウェスタンは容赦ないのだ。黒人の味方の白人がビッグ・ダディ(ドン・ジョンソン)ら(のちにKKK団となる一味)に襲撃を受けたように、白人の味方の黒人も殺されるのが掟なのだ。
このKKK団の萌芽エピソードが笑える。あの目のところだけ穴を開けた白いとんがり頭巾の穴がずれていて見えないと不平が出てくるシーンだ。俺の女房の手縫いなのに文句を言うなとか(笑)。『レザボアドッグズ』で登場人物がマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」についてうんちく(?)を傾けるシーンを思い出した。こういうセリフを書けるのがタラちゃんらしいところだ。
ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)/モギー弁護士(デニス・クリストファー)/ララ(ローラ・カユーテ)
DJANGO UNCHAINED
監督:クエンティン・タランティーノ
(2013/04/13 TOHOシネマズ高知2)
お茶屋さん、こんにちは。
一昨日付の拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの直リンクに拝借したので、
報告とお礼に参上しました。
スティーブンが、この映画のキーパーソンだとのご指摘は、正鵠を射抜いていますね。
彼の尊大と哀れっぽさは、強く印象に残っています。
サミュエル・ジャクソンの名演でした。
非常に普遍性のあるキャラ造形になっていたことに大いに感心しました。
どうもありがとうございました。
ヤマちゃん、直リンクとコメント、ありがとうございます。
簡単に言うと、スティーブンが繋がれていて、ジャンゴは繋がれてなかったという話だったんですね。
サミュエルさんは本当に化ける役者だけど、この作品では化けきっていました。
まこと名演でした(拍手)。
うまいじゃないですか!(拍手)
それで言えば、繋がれし者スティーブンと、繋がれざる者にして繋がりし者ジャンゴ
というふうに言ってみたくなりました。
ジャンゴとキングシュルツやブルームヒルダとの間にあった繋がりは、
決して繋がれてできたものではないということですよねー。
そうなると誰とも繋がれなかったスティーブンが、ますます可哀想ですね。
ミスター・キャンディとはやはり対等ではなかったと思うしねぇ。