いやー、おもしろかったです。
仁左さま、いろっぽい。玉さま、きれい。孝太郎さん、おみごと。
歌舞伎って映画ですね。孝太郎さんが、主役を演じた「神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)」なんか、デパルマです。
■神霊矢口渡
お舟(孝太郎)は、一目ぼれした新田義峯(薪車)を、追っ手から逃がすため、義峯を捕まえたという知らせの太鼓を打ち鳴らそうとします。でも、その前に、自分の父親に義峯と間違えられて刺されており、そのうえ、義峯を逃がしたと知った父親から殴るの蹴るのされてボロボロの身です。だから、太鼓まで這って行くわけです。これが、ブライアン・デパルマ真っ青のスローモーションなんですねー!
観客としては、恋に一途なお舟に早く太鼓を叩かせてあげたいのですが、正に「三歩進んで二歩下がる」。更に嘘の太鼓を叩くなと邪魔が入って、もー、地団太を踏みたくなります。
これは『ミッドナイト・クロス』で、囮となったナンシー・アレンを助けに走るジョン・トラボルタのスローモーションシーンで地団太を踏んだのと同じ!
孝太郎さん、ホンマによかったです。
お舟は、戸を開けるまでは無愛想だったのに、開けた途端、義峯に一目ぼれして態度が変わる面白さ。嬉し恥ずかしで(けっこう積極的に)迫る姿の可愛らしさ。義峯が連れの女は妹で、お舟と添うてもよいと言ったのを全く疑わず、懸命に太鼓を鳴らそうとするいじらしさ(涙)。感動しました。
それにしても、父親は、誤ってお舟を刺しても介抱するどころか、ちょうちゃくするとは。褒美の金に目がくらんだ父親が、義峯を追うため花道を駆け抜ける姿。凄まじい形相でした。動きもスローモーションで、この動きは正に芸を見せてもらったという感じで、そのうまさに感動しました。
■おかる・勘平(道行/鉄砲渡し/二つ玉/切腹)
「ロミオとジュリエット」のような若さを要求される二人を、「ロミオとジュリエット」ほどには若くない仁左さまと玉さまがどんなに演じるのだろうと興味津々でありました。
そしたら、まあ、おかるの親元へ向かう道行の場面では、仲睦まじく、お似合いのカップルで、当てられるわ〜。二人とも若い、若い。背景の富士山や桜が、初春歌舞伎にふさわしい明るさです〜。
勘平が切腹に至るまでに、年季奉公に連れて行かれるおかるとの別れの場面があるのですが、おかるが名残を惜しんでいるのに勘平は一言も発せられません。周りの話の様子から、夕べ自分が誤って撃ち殺し、懐から五十両を頂戴した相手は、おかるの父親だったことがわかって、ショックでものが言えないのです。
おかるが出て行ったあと、義父の遺体が運び込まれてからは、床に突っ伏したままです。いや〜、この背中が色っぽい(はぁと)。しかも、一言のセリフを発しないのに、その背中から二十歳前後の若者の雰囲気が伝わってくるのです〜。もちろん、何ということをしたのかという声にならない嘆きも。
義母には「もしや殺したのはお前では」と詰め寄られるし、仇討ちに加わりたさに調達した五十両も「主君の大事のときにいなかった近習の金は受け取れぬ」と突き返されるし、「いいわけなさに勘平が、切腹なしたる身のなりゆき、ご両所方、ご推量、く、く、くだされい」という気持ち、わかった、わかったぞぅぅぅぅ……!
妻は身売り。自分は窃盗。主君の仇討ちのために、そこまでしたいかねと思うなかれ。当時の若者の価値観というか、気持ちがすごくよくわかりました。泣けましたぞぇ。
翌日(1月22日)昼の部に見たお芝居については、また明日。
歌舞伎・演劇トップ > 大阪松竹座 > 2006年1月の公演情報
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