国宝の螺鈿とか蒔絵みたいな。衣装や調度品から役者の顔まで、バロックか何だかわらからないけれど、そういう絵画から抜け出たような。スクリーンのどこを切り取っても画面の密度が高いのに驚かされる。風景は乾いていて陽射しも強く、遠く霞んだ感じも美しい。一方、長旅で土埃にまみれたまま、教会での歓迎式典に鎮座する公爵家一行の姿や、映画の三分の一を占める舞踏会での便器部屋なども記憶にとどめておきたい。古い映画だから(1963年制)音質はよろしくなけれど、これは目のご馳走。これこそ大画面で観るべき作品だと思う。
サリーナ公爵(バート・ランカスター)は、貴族社会の終焉を感じ、時代の変遷に応じた対策を講じる意識はあるが、彼こそ貴族の伝統そのもの。威厳といい風格といい、甥のタンクレディ(アラン・ドロン)が逆立ちをしても追いつかない。だけど、生き残るのは万事にそつなく機を見て変容できるタンクレディであって、動じない公爵ではないのだ。
マズルカを踊るのをやめた公爵と、軽く切れのいい身のこなしのタンクレディ。沈殿したような(ヘソも見せてくれない(笑))公爵夫人(リナ・モレリ)と、野性味あふれたアンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)。
まばゆいばかりのカップルを眺める公爵が何を思うか容易に想像がつくけれど、資産家でもなし、死にかけてもいない私には貴族の終焉と老境を重ね合わせたこの映画にそれほどの感慨はなかった。あ、いや、ジュリアーノ・ジェンマが歌っていたのにビックリだった!本当に歌ってるのかなぁ?
[追記]
1982年の感想では「貴族が最後の火花を散らせている、その代表バート・ランカスター。新しい時代に順応していく若者代表アラン・ドロン」と書いている。「おもしろい、おもしろくないと言う前に、わからなかった」で始まり「わからなかった。残念。」で終わる4、5行の感想だ。絢爛豪華の舞踏会や、壁に掛かった絵画にも関心がなかったのか?
同じ頃観た『若者のすべて』では、アルマン・ルーランの肖像があったことを記憶しているので、ゴッホだけしか知らなかったのだろう。それにしてもアルマン・ルーランは、アラン・ドロンに似てるよね。
>音質はよろしくなけれど、これは目のご馳走。これこそ大画面で観るべき作品だと思う。
テレビでしか観たことないので、やっぱり行くことにしまーす。(って、ジュリアーノ・ジェンマが出てたのも覚えてなくて(笑)。)
あ、でもジェンマはいい声ですよ~。
その昔、ミュージカルの「キャメロット」で騎士ランスロット役やってるの見ました。
いかにもイタリアの人っていう、つやのある綺麗な声。リチャード・ハリスのアーサー王にバネッサ・レッドグレーブのギネビアで、3人とも本人の歌だってパンフレットか何かに書いてあったはず(若い頃の記憶って妙に克明(笑))。子供心にはジェンマが断然上手だと思いました。
きゃ~~~~間違えちゃった!
キャメロットはジェンマじゃなくてフランコ・ネロです(汗)。
こんなにコクメイに間違えてどーする、自分。ごめんなさーい。
というわけで、ジェンマは本当に歌ってるんでしょうか?(不明)。
>というわけで、ジェンマは本当に歌ってるんでしょうか?(不明)。
わはは。ドンマイ。>ムーマさん
いい配役ですね!>『キャメロット』
フランコ・ネロも歌えるんですね。
やはり、天は二物も三物も与えるなぁ(笑)。
「行くことにしまーす」と言いつつ、行けずに終わったムーマです。
でも、観に行っても私は「眼のご馳走」は全然わからなかったかも。(というわけで「アルマン・ルーランの肖像」だけでも・・・と探して見てきました。ほんと、アラン・ドロンに似てますね~(感心)。)
>でも、観に行っても私は「眼のご馳走」は全然わからなかったかも。
いえいえ、わかったと思いますよー。
問題は覚えているかどうかで(^_^;。
美味しいと思っても、どんな味かは覚えてないじゃないですか?美味しかったという記憶は残るけれども。
>ほんと、アラン・ドロンに似てますね~(感心)。
でしょ、でしょ?(^_^)
映画の中の絵画やポスターって目につきますよね。