太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男

日本人の多くは、真面目に働いているし、職務を全うしようと頑張っていると思う。それは軍人も兵隊も同じなんだと、この映画を観て気がついた。玉砕も辞さずという心構えで、一人でも多くの敵を殺すという任務に忠実な大場大尉(竹野内豊)以下の兵隊たちを、かつての兵隊さんたちが観たら泣けてくるのではなかろうか。しかも、大場大尉は、サイパンに移住していた民間人を助けるという、本来の任務ではないけれど人道的には真っ当な選択をしているのだから、「関東軍は開拓植民を見捨てて逃げた」とか「沖縄戦で民間人に手榴弾を渡して自決を促した」とか言われるのを、自分が批判されたように感じていた元軍人さんがいたとしたら、心が解きほぐされる思いがするのではないだろうか。
だけど、任務に忠実というのは何のためだろう。すくなくとも、日本(家族や郷土)のためではないと思う。ルイス大尉(ショーン・マッゴーワン)が将棋の駒で説明していたのを観ると、作り手は天皇のためと言いたげである。そういうふうに教育されていたのだから、それはそうなんだろうとは思う。ただ、私には過労死するまで働く企業戦士と重なるところがある。なぜ、死ぬまで働くのか。そういうふうに働かされる状況というのがまずあって、それが一番の問題だとは思うけれど、与えられた仕事を全うしたいという真面目さも災いしているような気がするのだ。玉砕も自決も、日本人が真面目すぎたからっていうのもあるんじゃないだろうか。
それにしても大場大尉には痺れた。玉音放送後、ルイス大尉と面会するために林の中から表れた大場大尉のカッコよさ。足、長~。顔はやつれても、スタイル、抜群~。(そういえば、投降のため行進していく兵隊さんたち、皆、足が長かった。)って、ウソウソ。痺れたところはソコじゃなくて、投降後、ルイス大尉に問われて答えた中身。「私には計画も作戦もありませんでした。ただ夢中でした。」「私がこの島でしたことで、誉められるようなことは一つもありません。」ぬぬぬ、本心やなー!失ったものが大きすぎるということか(?)。
その他、よかったところ。
戦闘シーンの音響は凄まじく、肉弾戦には臨場感があった。
大場大尉が民間人を収容所へ送り出すときの言葉(涙)。「日本へ帰ったら私たちのことを思い出してください。思い出していただくことによって、私たちも日本に帰れます。」
青野(井上真央)の敵国人に対する憎しみが氷解するところ。自分と同業(命を救う職業)者に出会い、敵も自分たちと同じ人間なのだわかる。場面数わずかでセリフなし。省略が利いていた。
今朝松一等兵を唐沢寿明が快(怪)演。
(2011/04/04 TOHOシネマズ高知8)

「太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男」への2件のフィードバック

  1. 日本人の出てくるリアルな戦争物の映画は元々苦手なんですが、このごろそれがさらにひどくなてきました。
    観ると(なぜか)腹が立つか、どっと疲れるかのどちらかになるので、だんだん観に行かなくなりつつあります。
    「キレイすぎる」ように見えてしまうんでしょうね、きっと。実際に経験してないのに、どうしてそんな風に思うのかわかりませんが。
    でも、この映画はお茶屋さんの感想読んで、久々に観たつもりになれました。
    「玉砕も自決も、日本人が真面目すぎたからっていうのもあるんじゃないだろうか。」というのに、私も賛成するところがあります。

  2. 敵を見下せないと殺せないわけですが、そういう心の構造はアメリカ軍の大佐に引き受けさせて、日本兵はただただ必死で敵を倒そうとしているように描かれていました。その点、日本兵はキレイに描かれていたのかも。また、エンタメ要素もあるので、リアルな戦争物といえるかどうかはわかりませんが、兵隊の心情としてはリアルだと思いましたよ。これまで、日中戦争において加害者として描かれた日本兵や、それぞれが様々な心情を持った特攻隊員たちなど、いろんな日本兵を観てきて、ちょっとずつ真実もあったと思うのですが、「勝つために敵を殺す」ということに絞って言えばこの映画で初めてリアルだと思いました。私が鈍いのかもしれませんが、玉砕の意味に初めて納得がいったんです。玉音放送があっても敵の罠だと思って投降しないっていうのは、小野田寛郎さんを思い出すし。この映画の兵隊さんが小野田さんにつながっていくのだな~と思えました。なかなかよかったですよ(^_^)。

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